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裁判員・参加せずとも罰則なし:大久保太郎(元東京高裁部総括判事)(3)(Voice)
http://www.asyura2.com/09/senkyo63/msg/733.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 5 月 22 日 09:14:50: twUjz/PjYItws
 

(回答先: 裁判員・参加せずとも罰則なし:大久保太郎(元東京高裁部総括判事)(2)(Voice) 投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 5 月 22 日 09:13:26)

http://news.goo.ne.jp/article/php/life/php-20090516-12.html

裁判員・参加せずとも罰則なし:大久保太郎(元東京高裁部総括判事)(3)
2009年5月19日(火)13:00

のみならず、裁判員法が憲法との関係を慎重厳密に検討することなく拙速に立法された結果、裁判員制度にはこのほか、公平な裁判所の保障(憲法37条1項)違反、裁判官の独立の規定(同76条3項)違反、国民の基本的人権の保障違反等の少なからぬ憲法違反が指摘され、前記西野喜一氏により「違憲のデパート」と酷評されている有り様である(同氏著、講談社現代新書『裁判員制度の正体』90頁)。

ところで、裁判官は等しく憲法を尊重し、擁護する義務を負うから(憲法99条)、以上のような状況下で裁判員法が施行されると、同法が適用される事件を担当する裁判官はすべて、被告人、弁護人からの申し立ての有無にかかわらず、同法がはたして合憲であるかどうかを審査し、判断する必要に迫られる。

しかしこの場合、裁判員法を合憲と解しようとする努力は、裁判員制度ができたあとからその合憲性を何とか理屈づけようとするものにほかならず、その理屈づけは黒を白と言いくるめるようなもので、当然に牽強付会、曲学阿世のものたらざるをえないが、このような無理を冒して「合憲」を理屈づけた法律を適用して裁判をし、有罪の場合被告人に死刑もありうる科刑をすることなど、裁判官の良心に照らすまでもなく、とうてい許されることではないであろう。

日本国憲法は「司法」に高い地位を与え、立派な規定を設けている。裁判員制度を合憲と理屈づけることは、この司法に与えられた立派な規定を歪曲し、司法の地位を低くすることにほかならない。憲法に根拠がなく、憲法改正に匹敵するような国民的合意を得たものでもない(むしろ大半の国民が反対している)、一時的熱病のような裁判員制度によって憲法を歪めることなど、絶対にあってはならないであろう。

拙速杜撰立法の当然の帰結

国民は当然に裁判参加の資格があるように思わされているが、実情は右のとおりである。裁判員が裁判に参加しうる資格(根拠)が憲法との関係で何も説明されておらず、むしろ説明できない疑いが非常に強いのである。

このような状況下で国民に裁判参加を義務づけ、裁判上の権力行使に参与させることなど、憲法上許されるものではない。国民がうっかり宣伝に乗って裁判に参加することは、倫理的には背徳行為であり、自己自身および被告人に対する二重の冒涜である。参加すべきではないのだ。

すなわち、このような意味でも、国民には裁判参加の義務などなく、呼び出しに応じないで裁判所に出頭しなくても、過料の制裁を受けることはないといわなければならない。この点は、憲法13条違反との関係ですでに述べたとおりである。

裁判員制度にはこのほかに、事案が複雑で判断の難しい事件や大規模な事件で、審理が長期に及ばざるをえないものについて、審理が円滑に行なわれ、適正な判決が得られるとの見通しが存在しないという重要問題がある。

東京大学教授・井上正仁氏は、司法制度改革審議会委員で、裁判員制度の提案者の1人であるが、その当の井上氏が制度発足直前の今日、「起訴事実が多数などで審理に何カ月もかかるような事件は、裁判員制度の対象からはずせ。そうでもしておかないと大変な問題になる」旨の発言をしているくらいだ(『ジュリスト』平成21年1月1日・15日合併号205頁)。

憲法問題といい、この問題といい、「国民参加制度は司法改革の目玉だ」といった、つくられた時流に流され、慎重厳密な検討を欠いた拙速杜撰立法の当然の帰結である。法務省も最高裁も、いったん立法に賛成した以上、いまさら右のような根本問題があるとはいえないのか、何もないような振りをして制度を推進しているのだ。マスコミも表面的なことは伝えても、掘り下げて真実を報道することはないから、国民は何も知らない。こんな状況のなかで裁判員制度は実施されようとしているのだ。

正直であり、誠実であることが何よりも大切な「司法」がこんなことでよいのか! 筆者は声を大にして叫ばずにはいられない。


 

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