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http://mainichi.jp/select/seiji/archive/news/2009/05/15/20090515ddm002030058000c.html
アメリカよ・新ニッポン論:第3部・平和の未来/8止 オバマ演説後の反核運動
◇問われるアジア観
海賊も核軍縮も、平和を巡る世界の課題は冷戦期と大きく様変わりしている。発想の転換を求められるのは政府だけではない。
「核兵器はいい兵器。日本の植民地支配から民族を解放してくれたし、朝鮮戦争の時は北朝鮮の侵略を核抑止力が防いでくれた。韓国人の多くは核兵器に肯定的な印象を持っている」
東京都目黒区の東京工業大大岡山キャンパスで3月に開かれた日韓核問題国際シンポジウム。米ジョンズ・ホプキンス大の金東源(キムドンウォン)客員准教授の報告に、日本人研究者や反核運動家の間に戸惑いが広がった。
オバマ米大統領の「核兵器を使った唯一の核兵器国の道義的責任」という発言は、日本で感動を呼んだ。しかし、「原爆は第二次大戦を終わらせた良い兵器」という考え方は、米国世論だけでなく、韓国、中国など日本がかつて植民地化・侵略した国に広範に残る。アジアの核軍縮は歴史認識問題抜きに語れない。
山崎正勝東工大大学院教授(科学史)は「北朝鮮の核は米国への対抗策。国際法上は停戦のままの朝鮮戦争を終結させ、北朝鮮の核兵器、米国の核の傘の必要性を共に減らし、東アジア地域の核兵器廃絶につなげたらいい」と提案する。だが、朝鮮戦争の終結は米朝国交正常化を意味する。拉致問題に対する日本の世論との折り合いは簡単でない。
「オバマ演説で、世界の大多数が核廃絶を求めている絶対的正しさを確信した。エネルギーと希望を与えてくれた」。ニューヨークの国連本部で、5日演説した広島市の秋葉忠利市長は「大統領の演説は我々の主張の延長線上にある」と称賛する。ただ、米国の核軍縮は、核テロを防ぐための核不拡散で国際社会の協力を得る狙いが大きい。秋葉氏は、オバマ大統領が提唱した国際会議の広島市開催を希望しているが、会議のテーマは核軍縮ではなく、核テロを防ぐ「核セキュリティー」のあり方だ。
核廃絶の理想と核軍縮という政治の現実をどうつなぐか。日本政府の外交課題だが、反核運動も問題意識と戦略性が問われる。
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)で国際会議の運営や情報収集を12年間担当した田窪雅文氏(58)の認識は厳しい。「『即時核廃絶を目指してください。それを米国に訴えてください』と言っているだけでは、政府の政策の問題点を明らかにすることはできない」
反核運動が全国組織化されたのは1954年3月、米国の水爆実験で日本の漁船が被ばくしたビキニ事件からだ。原水爆禁止を求める署名運動は同5月、東京都杉並区で始まった。「水爆マグロ」という言葉に象徴される台所感覚の危機感がエネルギーとなり、翌年に広島で開かれた原水爆禁止世界大会までに約3000万人、当時の総人口の3分の1相当が集まった。
50〜60年代の日米核問題に詳しい黒崎輝・立教大兼任講師は「生活防衛でもあり、反米ナショナリズムでもあったからこそ保守政治家も同調できた」と分析する。核廃絶は国民理念となり、政治が無視できない「国是」となった。
しかし、反米大衆行動として始まった運動は、60年の日米安全保障条約改正を巡る保革対立や、中ソ対立のあおりで分裂。核政策は日米安保の枠内で議論されてきた。反核運動の意識も冷戦や日米基軸という時代の制約を反映し、アジアへの視線は希薄になった。
半世紀が過ぎ、冷戦終結後の今度の核廃絶機運もまた、きっかけは米国発だ。大統領演説を受け、米国に中身を問わず核の傘の確認を求め続ける政府。米国の思惑やアジアの中の日本という問題の糸を解きほぐす余力なく、大統領の指導力に期待する反核運動。どちらも、アメリカに平和の未来を託す発想と行動パターンは、実はさほどかけ離れていない。=おわり(第3部は、滝野隆浩、後藤逸郎、須藤孝、門田陽介、隅俊之、ロンドン笠原敏彦が担当しました)
毎日新聞 2009年5月15日 東京朝刊
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