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【国策に翻弄される農業】俺らバカじゃねーの?崩れゆく農家
http://www.asyura2.com/09/senkyo63/msg/153.html
投稿者 官からアメリカ人へ 日時 2009 年 5 月 12 日 11:57:58: Dx5sTVjBq/alo
 

【2030年】第2部 ふるさとはありますか(3)ご飯1杯の値段 農家崩れたっていいさ (1/3ページ)
2009.5.12 08:00


ぽっかりと青空へ開いた空洞は、崩れゆく日本の農業の象徴なのか。昨年6月の岩手・宮城内陸地震の被災地に近い宮城県栗原市の国道沿い。水を張り始めた田んぼの中に、見上げるような大看板の鉄枠だけが立っていた。時の流れでベニヤ板が朽ち果て、そのまま放置されているのだ。

 東北の米どころで今、同じような廃看板が目につく。栗原市内の看板は昭和50年代前半、地元農協青年部栗駒支部の若い農民たちが立てたものだ。当時のリーダー、小野寺博さん(75)は「もともとは米価闘争のスローガンを書くために作った。政府の尻をたたいて米価を上げてもらう。そのために農政批判もしたし米のPRもしたが、今は書き手もいない。農民の側に闘う気力もなくなった」。

 看板に書かれた文句は度々変わったという。平成5(1993)年、冷害による凶作でタイ米を緊急輸入した際は「タイ米よりも日本米」と書いた。「タイ米」と「対米追従」をかけた風刺だった。9年にベニヤ板を新調したが、結果的にそれが最後となった。片側の面には「21世紀も栗駒米でおいしい笑顔」。もう片方には震えるような文字でこう刻まれていた。

 《農家崩れたっていいさ 国家共々》

 この言葉を書いたのが当時、青年部支部で事務局を務めた菅原清一さん(46)だ。その2年前に食糧管理法が廃止され、「農家は見捨てられると思った。国への捨てぜりふのような気持ちで、仲間と話し合って決めた」と明かし、看板に対する思いをこう語った。「あれから12年たつけど、事態はあの通りに進んでるんじゃねえの。農家は崩れてきているし、国家はまだ倒れてないけど、倒れる寸前じゃねえか」

ライスなら250円

 菅原さんは典型的な兼業農家だ。約2ヘクタールの水田を耕作しており、平日は勤めに出て、週末は72歳の父とともに赤いトラクターにまたがる。「一番の問題は米価が安すぎることだ。昔みたいに米だけ作って食っていけるならいいが、今の米価なら機械を買うだけで赤字になる。メンテナンス代もかかる。それでも毎年、何も言わずに米を作ってるオレらは、時々バカじゃねーのとすら思うよ」

 生産者米価は20年前の1俵(60キロ)1万8000円から年々下落し、現在は約1万2000円。この値段でさえ、農家は国から手厚く保護されていると批判を受ける。減反で米価が調整され、外国米の輸入にも高い関税がかけられているからだ。

 ただ、茶碗(ちゃわん)1杯分のご飯の値段を多くの消費者は意識していないのではないか。1俵からとれる米は約1000杯分。つまり12円である。コンビニで「おにぎり」になれば105円、ファミレスで「ライス」になれば250円に跳ね上がるが、その原価はペットボトルのお茶1本、カップラーメン1個の1割にも満たない。

 国では、2年前から4ヘクタール以上の耕地を持つ大規模農家や、20ヘクタール以上の耕地をまとめた集落営農にしか補助金を出さなくなった。その先には経済界からも要請が強い農業の「株式会社化」もある。ただ、そうした動きはあくまで一握りの巨大農場を念頭に置いたものであり、日本の米作農家の8割を占める菅原さんのような兼業農家や小規模農家の立場は置き去りにされている。

 菅原さんは「もはや国には頼れない」と話し、こう訴えた。「申し訳ねえけど消費者にもう少し支えてもらえねえかなと思う。もう少しあれば、無農薬でおいしいお米を供給できる。私たちも農業を続けられる」

鳴子での試み

 「もう少し」。その思いを形にしたのが、3年前に宮城県大崎市の鳴子地区で始まった「鳴子の米プロジェクト」だ。地区の小規模農家の米を消費者がまとめて買い取る仕組みで、1俵の値段は2万4000円。このうち1万8000円が農家へ渡り、残りの6000円が若者の農業支援などに充てられる。昨年の購入者890人のうち6割が都会の消費者で、今年もすでに100件以上の予約があるという。

 市観光建設課の安部祐輝さん(40)は「茶碗1杯は24円。多少割高になるが、農の現状が都会の人にも少しずつ理解されてきた結果だと思う。何より地元の農家が『食べる人のために頑張ろう』と元気になったことが一番うれしい」。

 ただ、こうした例はまだ少ない。過疎化や高齢化で進んだ耕作放棄地は、すでに全国の農地の1割にあたる38万ヘクタール。これは埼玉県の面積に相当する。一方で農地全体に占める水田の割合は54%。特に東北では71%を占めており、日本の農家にとって、いかに米作りが大切なものだったのかがわかる。

 かつてわが国で当たり前に見られた水田の風景は2030年、どう変わっていくのか。菅原さんは地元の耕作放棄地が大量のカヤに覆われ始めたことをあげ、こう訴えた。

 「カヤは根が深く、枯れて絡みついた耕地の復旧にはものすごい労力がかかる。いずれこの一帯は茶色の荒野に変わってしまうかもしれない。消費者にとっては一杯12円の投資だけど、そのお金がこの国の風景も守っていることをわかってほしい」

 《農家崩れたっていいさ…》。その後に続く言葉は今、誰に向けられているのか。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090512/trd0905120800001-n3.htm  

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