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http://www.news.janjan.jp/government/0905/0905082952/1.php
不可能な幻想 田母神氏らの「日本核武装」論−待っているのは経済制裁や大量の餓死者
瀬田隆一郎
2009/05/09
一部で「日本も核兵器を持つべきだ」とする論が盛り上がっている。今現在のその急先鋒はおそらく前航空自衛隊幕僚長の田母神氏だろうか。
・前空幕長・田母神氏が核武装促す 佐世保、長崎で講演会
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20090505/04.shtml
前航空幕僚長の田母神俊雄氏(60)が4日、佐世保市三浦町のアルカスSASEBOで「国防の基盤は愛国心だ!」の題で講演し、核兵器廃絶について「できるわけがない。日本も核武装した方がいい」との認識を示した。
(引用終わり)
また、著名なコラムニストすらも、日本の核武装を「妄想」し始めている。
・日本、核武装へのステップ(前編)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090417/147375/
最近の北朝鮮の暴走にあてられたのか、これに同調する声が少なからずあるというのも興味深い。しかし、これはあくまでも荒唐無稽な話であり、いくら賛同者が増えようとも真面目に検討する政治家は現れないだろう。田母神氏はそれを自覚しつつ、各種メディアで注目を浴びるために聞こえの良い言葉、過激な言葉を並べているに過ぎない。
仮に日本政府が日本国民の圧倒的多数の支持をもって非核3原則を破棄し、核兵器製造に着手したとしよう。この時点でかなり無理のある前提だが、そうでもしないと話が進められないので敢えて無視する。
まず、秘密裏の開発は出来ない。日本国内の核技術に関する施設は国際原子力機関(IAEA)の規定に基づいて各種の査察を定期的、もしくは抜き打ちで受けている。これは核拡散防止条約を批准したすべての国に適用されるので(核保有国は除く)、日本だけ査察を回避する事は不可能だ。
仮にこれを強権的に拒否したらどうなるか。実は最近、そういう事例があった。フセイン政権時のイラクである。IAEAの査察を妨害した当時のイラク政府は、結果的にアメリカに「大量破壊兵器保有の疑いあり」という大義名分を与えてしまった。その後どうなったかは各位がご存じの通りだ。
ではおおっぴらに開発を宣言するとなると、これまた困難が待ち受けている。まず、核兵器保有にあたって憲法改正が不可欠なのは言うまでもない。専守防衛が基本となっている日本の国防体制において、敵地で使用する事が前提の核兵器は存在自体が矛盾するからだ。国際社会における我が国の評価が地に落ちるのも確実だろう。
そして、必然的に核拡散防止条約(NPT)を脱退する、もしくは追放される事になる。そうなると、まず原子力発電用の核燃料の輸入が止められてしまう。核兵器不拡散に合意しているからこそ分配されているものであり、核武装を始めようという国への供給は止められるわけだ。
すると、どうなるか。日本の電力供給の4分の1近くを占める原子力発電が順次ストップしていく事になる。
足りない分は火力発電の割合を増やせば良いかというと、そうもいかない。国際社会の苛烈な批判を浴びて、経済制裁という形で原油や食料の輸入も厳しく制限されるだろうから、戦時中の生活水準に逆戻りする事を覚悟しなければならない。現在の我が国の食糧自給率を考えると、大量の餓死者が出るかも知れない。これは、現在の北朝鮮の状態に大きく近づくと思えば、分かりやすい。
そんな中で、巨額の税金と時間を費やして核開発を行うわけである。道路や箱物すら生み出さない国家事業である。国民に還元される効果は皆無に等しいだろう。果たしてそんな事を望む国民がいるだろうか。
また、仮にも経済大国である日本が核開発を開始したとなれば、「日本がやっているのなら」と追随する国が続出する懸念も出てくる。つまり核拡散防止体制の崩壊である。そうやって他の国で作られた核兵器が日本に向けられないという保証は無い。それらがずさんな管理でテロリストなどに流出しないとも限らない。たとえば崩壊前後のソ連など、鍵すらろくに掛けられていない倉庫に核弾頭が放置される事もあったという。
思いつくだけでも、これだけの困難を一つ残らず乗り越えなければ、我が国の核武装は達成不可能なのだ。そして成功しても失敗しても、待っているのは経済制裁や国内経済の自壊による生活水準の激烈な低下と大量の餓死者、そして核によるテロの恐怖が蔓延する世界である。田母神氏にもその賛同者たちにも、そんな未来を覚悟しているようには全く見えない。
これは条件反射的に田母神氏らに反発している人々にも言える事だろう。前述のような未来が実現しうる可能性を考えれば、まずありえない事は明白である。逆に騒ぎ立てれば立てるほど、田母神氏らの主張に説得力を持たせる事にもなりかねない。
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