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東京地犬特騒部が捜査終結宣言を出さないのは、このことがあるからだろう。
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小沢の泣き所「不動産蓄財疑惑」
http://news.goo.ne.jp/article/facta/politics/20090509-02-00-facta.html
あの陸山会が所有する10億円もの物件は小沢の個人名義のまま。そこに特捜部のメスが入ったら……。
◇
「不動産は政治団体のものだ。あれだけの資産を個人で持てるわけがない。銀行から借り入れたり、政治団体の政治資金で購入した」
1986年8月、当時の玉置和郎総務庁長官は閣僚の資産公開の記者会見でそう話した。玉置は永田町に自分名義の高級マンションを3室も所有していたが、なぜか資産公開から外されていた。その理由を問われた玉置の説明がこれだった。玉置の秘書も記者団にこう語っていた。
「登記上の名義は確かに玉置個人だが、政治団体名では登記できないので玉置個人の名義で登記した」
だが、このとき問題になったマンションの登記簿を見ると、「政治団体のもの」だったはずの3室は、玉置の死亡した日付で玉置夫人にそっくり相続されていた。
それから23年。西松建設からの違法献金問題で窮地に立った民主党の小沢一郎代表は、3月27日の代表続投宣言の直前、側近議員を前に「資産は個人のものじゃなくて政治団体のものだということをもう一回、ちゃんと説明したほうがいいな」とつぶやき、「政治団体は不動産の登記名義人になれないんだ。契約上は政治団体のものでも私の個人名義で登記するしかないんだよ」と顔をしかめてみせた。
咽喉に刺さった高裁判決
小沢の政治団体「陸山会」などへの違法献金容疑で小沢の秘書を逮捕・起訴した東京地検特捜部は、西松建設などのゼネコンからの資金が陸山会の不動産購入に使われたと見て資金の流れの解明を進めている。
西松建設から陸山会に渡った資金は十数年間で3億円。陸山会など小沢の政治団体と関連団体の資産は30億円を超える。そのうち10億円超は赤坂を中心とするマンション10戸(うち2戸は一昨年と昨年に売却・譲渡)などの不動産で、いずれも小沢の個人名義だ。小沢のつぶやきの背景には自らの不動産疑惑に捜査のメスが入ることへの危機感がある。
これらの不動産について、これまでも小沢は自分のものではなく陸山会の所有だと主張してきたが、小沢の主張は、すでに裁判所の判決で完膚なきまでに打ち砕かれている。その判決が下されたのは昨年6月4日の東京高裁(柳田幸三裁判長)。講談社発行の週刊誌の記事で名誉を毀損されたとして、小沢と民主党が、記事を執筆したジャーナリストの長谷川学と当時の編集長らを訴えた損害賠償請求訴訟の控訴審判決だ。
問題になったのは週刊現代06年6月3日号の「小沢一郎の“隠し資産”を暴く」という特集記事。同誌は陸山会所有とされるマンションなどを調べ上げたうえで、すべての不動産が小沢名義であり、これほど多くの不動産を所有しているのは陸山会だけであること、これらの不動産が将来、第三者に相続される可能性があること、などを指摘し、当該不動産は「事実上、小沢の“隠し資産”ではないのか」と追及した。
これに対して小沢側はマンションなどは陸山会のものであり、報道で名誉を毀損されたとして提訴したが、一審の東京地裁に続き東京高裁も「名誉毀損に当たらない」と判断。小沢側の敗訴が確定した。
小沢にとって決定的だったのは高裁判決が「本件各マンションが陸山会のものであると断定することはできない」として、「陸山会のもの」とする小沢の主張を切り捨てたことだ。しかも判決は、陸山会について「権利能力のない社団としての実体を有するかどうか不明」と言い切り、組織としての陸山会の不透明さにまで言及したのだ。今回、東京地検特捜部が陸山会の資金の解明に乗り出したのは、この小沢敗訴の高裁判決を踏まえたものであることが容易に想像できる。
それにしても、不動産が陸山会の所有と断定できないということは、すなわち不動産が小沢のものである可能性を裁判所が認定したとも言えよう。
それも当然だ。何しろ不動産はすべて小沢名義だし、不動産の購入資金には小沢が陸山会に貸し付けた個人資金や、不動産を担保に小沢が銀行から借りた金が充当されているのだ。小沢側の説明によると、不動産の購入資金は、後で陸山会が政治資金で小沢に返済しているとされるが、法的には不動産の名義人である小沢の個人所有も同然なのだ。ちなみにカネに色はつけられないので、西松建設からもらった違法献金が不動産や小沢への返済資金に化けたとも言える。
「法の抜け道」を熟知
これに対し小沢が陸山会所有の根拠として持ち出しているのが「確認書」だ。これは陸山会代表である小沢(甲)が、個人である小沢(乙)と交わしたという噴飯ものの代物。あるマンションの確認書にはこう記されている。「本物件は甲が甲の資金をもって購入するものであり、乙個人は本件不動産につき、何の権利も有さず(中略)売買代金その他の購入に要する費用、並びに、管理費光熱費等、本物件の維持に関する費用は、甲がこれを負担する」
不動産取引に精通している税理士は「確認書には法的効力がなく、小沢の単なる意思の表明でしかない。そもそも政治活動のために都内だけで8カ所ものマンションを購入する必要がどこにあるのか」と話し、小沢の目論見をこう推測する。
「小沢個人が不動産を売買したら売買益に所得税がかかるが、政治団体の所有にしておけば所得税がかからない。小沢は寄付など人様のお金でマンションを購入し、税金や維持費も寄付金で賄っている。自分の懐を痛めずノーリスクの不動産投資をしているようなものだ。しかも、そうやって得た不動産は、小沢曰く政治団体のものらしいから、将来、陸山会を引き継ぐ者、つまり小沢の子息ら後継者に無税で引き継がれることになる。これでは実質的に小沢の個人資産も同然で、法律の抜け道を熟知した、うまいやり方ですよ」
小沢の師匠である田中角栄元首相は不動産転がしで政治資金を作ったが、小沢自身も不動産取引に精通しているとされる。小沢は85年に世田谷区下馬に494平方メートルの土地と建物を購入したが、一度もそこに住むことなくわずか7カ月後に転売し、3千万円の差益を得ていた。後に小沢はこの問題について「居住用に買ったが、自宅としてやや手狭なものしか新築できないことが分かったため売却した」と釈明したが、本来、自宅を買うときは広さなどを事前に十分検討してから購入するもので、いかにも不自然な取引だった。小沢はこの土地を知人の仲介で購入した後、不動産会社社長に売り、社長はさらに転売。結局、この土地は短期間のうちに1億円もの転売益を生んだという。
さて、07年12月の政治資金規正法改正で政治資金管理団体が新たに不動産を持つことが禁止され、小沢は「プライム赤坂」というマンションを、過去に200万円の献金を受けた都内の不動産会社に1300万円で売却したという。ところが不動産会社はこの物件を1180万円で売り出したとして「差額が事実上の献金ではないか」と国会で追及を受けた。小沢の不動産蓄財疑惑は解明の緒についたばかりだ。(敬称略)
(月刊『FACTA』2009年4月号)
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