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http://mainichi.jp/select/world/america/archive/news/2009/05/08/20090508ddm002030131000c.html
アメリカよ・新ニッポン論:第3部・平和の未来/4 IAEA事務局長選落選
◇同盟偏重、足かせに
オバマ米大統領は核軍縮演説で、原子力平和利用のための国際的核燃料バンク創設と国際原子力機関(IAEA)の権限強化も訴えた。燃料バンクはルールを守る国にウラン濃縮能力を国際的に保証する「アメ」、IAEA強化は平和利用を逸脱する国への「ムチ」だ。バンク構想も、違反すればエネルギー供給の蛇口を閉める「ムチ」に変わる。
日本は原発の核燃料に用いる天然ウランの3分の2を、米国、豪州、カナダという東西冷戦時代の「旧西側」3カ国に頼っている。「旧東側」の国で、埋蔵量世界第2位のカザフスタンからの輸入はわずか2%。06年、日本の首相として初めて小泉純一郎元首相が同国を訪問した。供給国を分散するエネルギー安全保障上の資源外交だった。
米国のバンク構想に対し、ロシアは国際ウラン濃縮センター創設を提唱。「最終的な方向は似ている。協力は惜しまない」。米ウェスチングハウス社の買収で、今や世界3大原発メーカーの一角を占める東芝の西田厚聰社長は、核軍縮と並行した核燃料での米露競合の流れを歓迎する。
東芝は昨年3月、ロシア国営原子力企業「アトムエネルゴプロム」と濃縮工場建設などの事業協力で合意。日露原子力協定で、ロシアを通じたカザフからのウラン燃料供給が増えれば、ウラン濃縮能力がない国に、燃料とセットで原発を売り込める。「上流(燃料調達)から下流(原発建設)まで」を担う原子力ビジネスを政府間協定が後押しし、エネルギー安全保障の構図は複雑化していく。
核不拡散で役割を増すIAEAの事務局長選に、日本は天野之弥(ゆきや)ウィーン国際機関代表部大使を擁立した。しかし、天野氏は3月末、理事国35カ国の3分の2(24カ国)の支持を得られず、落選した。
日本と原子力協定締結を控えたロシア、首脳間交流が活発化している中国、日本が米印原子力協定を容認したインド、米の同盟国・英国。関係が良好なはずの核保有国が、投票では軒並みそっぽを向いたためと分析されている。
落選から約3週間後の4月20日、野田聖子科学技術担当相は、再出馬した天野氏への票固めに動いた。北京で開催されたIAEA閣僚級会合の開会式の最中、インドのカコドカル原子力委員長を場外の小部屋に連れ出し約20分間、直談判に及んだ。通訳にしびれを切らし、自ら英語で「日本は途上国からの期待に十分応えられなかった。控えめな態度が災いしたが、これからはストレートに発信していく」と支持を迫ったが、カコドカル氏は「何とも言えない」と確約を避けた。
3分の2のハードルを越えるには、途上国の支持が不可欠。対立候補ミンティ氏の出身国・南アフリカやインドは、途上国の代表だ。インドの不支持は、日本が核不拡散を重視する米国の意向に沿って、原子力平和利用を求める途上国の権利拡大を制約する側に回ると疑ったためとされる。
一方、中国は北朝鮮、ロシアはイランを巡り、日本が米国の意向に沿ってIAEAをリードしようとするのではないかと警戒したとみられている。
在米日本大使館で専門調査員の経験もある日本原子力研究開発機構の千崎雅生・核不拡散科学技術センター長は、「日本は誰が見ても米国寄りに見られるというハンディキャップがある」と指摘する。天野氏自身「米国が前面に出すぎると票が減るから遠慮してもらっている」と漏らしていた。
再選挙には、天野、ミンティ両氏のほか、新たに欧州勢3人が参戦した。新候補の一人は、ベルギーの元エネルギー相で仏原子力メーカー・アレバの上席副社長。各国やビジネスの利害がむき出しの戦いとなっている。多極化する国際政治で、日本が核軍縮に主導的役割を果たすには、日米同盟偏重外交がマイナスに働く現実がある。=つづく
毎日新聞 2009年5月8日 東京朝刊
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