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派遣も正社員も同一職種同一賃金に
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/teigen/te090428.htm?from=os2
日本総合研究所 山田久・主席研究員
失業率戦後最悪となるリスク
2008年の後半に起こったことは、世界的なバブルの終焉(しゅうえん)だ。アメリカで住宅バブルが生まれ、それが中国の輸出を増やし、中国にカネが入って不動産バブルが起こり、中国が成長したことで原油価格が上がり、産油国にもバブルが起こった。ところが、アメリカのバブルがはじけ、世界経済が一気に逆回転した。
日本は自動車や電機などの輸出産業への依存度が高かったため、大きな影響を受けた。需要の消滅に対応しようと在庫調整をものすごいスピードで行った結果、生産の落ち込みは1970年代中盤のオイルショック期を上回る規模となった。
こうした在庫調整の進展や、世界的に危機対策が打たれていることにより、昨年終わりから今年初めの様子に比べると落ち着きが出てきた。しかし、供給に対して需要がどのくらい不足しているかを示すGDP(国内総生産)ギャップは30兆〜40兆円にのぼる。政府・与党の決定した15兆円の追加景気対策は、カンフル注射としては期待できても持続的な成長につながるとは思えない。大きく落ち込んだ経済の水準をやや戻す程度の効果はあるが、それ以外の対策を打たなければ、この先2−3年で200万人程度の失業者が出てくるリスクは依然としてある。
前回のバブル崩壊では1998年から就業者が減り始めて、2003年までの6年間で240万人減っている。失業率はピーク時で5.5%まで上がった。今後2〜3年で200万人程度の雇用調整が起こるとすれば、そのスピードとマグニチュード(エネルギーの大きさ)は当時を凌駕(りょうが)する。失業率はおそらく戦後最悪となり、6%台に乗せてくるだろう。
産業構造転換とそれに合わせた職業訓練を
これだけ急激な雇用調整をこのまま放置すると、重大な社会不安を生じかねない。すでに格差と貧困の問題が深刻になってきている中で、雇用調整は非正規労働者を中心に行われているので、社会的インパクトは前回の金融危機時よりも大きくなる可能性がある。
まずは緊急対策として、職を失った非正規労働者や長期失業者を救済するために職業訓練と生活支援をセットで行うための基金の創設が望まれる。政府・与党はその方向性であり、歓迎されるが、実効性あるものとするには職業訓練の仕組みを現場主導のものに変えることが必要だ。雇用維持のため従業員の給与を削減する企業でも、その削減率を一定以下にし、経営者や役員の報酬を一定以上カットする場合にはその企業に助成金を出すという方策も、検討に値する。従業員給与のカット率を一定以下に小さくするための助成金という考え方で、日本型ワークシェアリング(ウェイジ=賃金=シェアリング)とも言える。
ただし、助成金で単純に雇用維持をしていては問題を先送りするだけだ。経済危機というのは国際的な産業構造が変わってくるタイミングでもある。今回であれば、途上国市場の拡大や低炭素社会実現に向けた世界的な取り組みなどに対応して、産業構造の転換が要請されている。
産業構造が変わり、企業がそれに対応して雇用の受け皿ができたとしても、失業者への職業訓練が有効になされていなければ、生活支援をするだけになってしまう。職業訓練の仕組みを見直して新しい能力や技能を身に着けられるようにし、失業者が職に就けるようにしなければ意味がない。
ここ5年ほどで大きな話題となった正規労働者と非正規労働者の格差問題の背景には、非正規労働者の賃金が同じ仕事をしている正規労働者と比べて安すぎることと、仕事を続けても技能が身に着かないことがある。非正規でも能力が育成されて、それとともに賃金が上がっていく仕組みを考えないとならない。
正社員には将来のキャリア展望がある。派遣社員など非正規労働者にとってもそういうものが一定程度見えるような社会にしなければ、格差問題はなくならない。
そう考えると、正規と非正規の労働者が混在する職場においては、同一職種で同じレベルなら同じ賃金という同一価値労働同一賃金の仕組みを整備していく必要がある。労働市場に新しいルールを作るのはかなり困難な仕事だが、多様な働き方を前提とした社会を作ろうとするなら、やらなくてはならない。(談)
(2009年4月28日 読売新聞)
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