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2009-04-28 09:44:59
“イラクからソマリアへ”とする政府の危険な動きに抗する/池住義憲 [世界]
“イラクからソマリアへ”とする政府の危険な動きに抗する
〜〜違憲判決から1年経った今、想うこと〜〜
2009年4月26日
池住義憲
(注)本稿は名古屋学生青年センター機関誌用に
書きまとめたものです。以前送信「メール通信」と
重複する部分が少しあります。
■喜んではいられない
2004年2月に裁判(自衛隊イラク派兵差止訴訟)を起こしてから、5年が経ちました。以来4年2ヵ月におよぶ法廷内外での裁判運動を展開。その結果、昨年(2008年)4月17日、名古屋高裁から「違憲判決」を勝ち取ることができました(2008年5月2日判決確定)。全国各地の仲間と共に取り組んだ成果です。そして本年(2009年)2月、運動の中心を担った名古屋の「訴訟の会」は正式に解散し、運動にひとつの区切りをつけました。
5年間の運動を今あらためて振り返ってみると、「出発点を創った」「基盤を築いた」という想いです。政府が行ったイラクへの自衛隊派兵という行為を違憲・違法と断罪したこと、および平和的生存権を全ての人権の基底をなす具体的権利として明確に認定した判決は、日本社会にとって、とてつもなく大きい。歴史の流れを変え、新しい歴史を作っていくものとして内外から高く評価されています。
しかし、喜んではいられない。違憲判決を勝ち取ったからといって、問題は解決していない。政府は、違憲判決後も8ヵ月間にわたって自衛隊をイラク、クウェートに派兵し続けました(空自の撤兵は2008年12月末)。本年3月には自衛隊法の“拡大解釈”(実際は法律違反!)と称して2隻の護衛艦をソマリア沖アデン湾へ派遣。そして今、海賊対策法案と称して自衛隊を今後海外へ恒久的に派兵することができる一般法(恒久法)制定にむけて突き進んでいます。「テロとの闘い」から今度は「海賊対策」へと言葉を変えて…。さらに巧妙なやり方で違憲行為に既成事実化を積み重ねようとしています。
■ソマリア沖海賊問題と日本政府の対応
問題への対処は、その問題への正しい理解が必須です。ソマリア沖の海賊問題は、「陸」の問題です。「海」で起こっている海賊という行為は、「陸」の問題から生じた犯罪です。ソマリアは1991年から内戦状態が続き、現在も正式な中央政府が存在しない無政府状態となっています。ソマリア沖の海賊問題への対処は、「陸」での問題への取り組みなしには解決しません。軍事力で一時的に抑える「軍事対処療法」では、問題解決にならないどころか、状況の悪化を招きます。国連の潘基文事務総長やソマリア前提政府のアハメド大統領らが「海賊対策は国内再建から」と述べている通りです。
しかし日本の政府は、本年3月中旬、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令して2隻の護衛艦(いずれも艦船内に死体安置所が設置されている)をソマリア沖アデン湾へ出航させました。平行して、今後、海賊対策と称して自衛隊をいつでも何処へでも派遣することを可能にする「海賊対処法案」を、国会会期を延長してでも成立させる方向です。
“結論先にありき”で法を逸脱し、一方的に法を拡大解釈してはいけない。詭弁を弄して誤魔化してはいけない。このままでは、法治主義国家が崩壊してしまう。ここ数年の政府の動きはそれ程深刻です。このままでは、大変なことになってしまう…。
■ソマリアに今求められているもの
ソマリアに今求められているのは、軍事的対応ではありません。内戦状態下での経済状態の悪化、国民生活の疲弊、中央政府の機能不全というソマリアが直面している異常な状態への対応として必要なのは、簡単に言えば次の二つです。
第一は、人道支援協力、経済支援協力、技術支援協力。第二は、沿岸諸国の沿岸警備体制を確立することによって解決を図ること。海賊行為等は基本的に犯罪行為であり本来警察権により対処されるべき問題です。日本は、かつてマラッカ海峡の海賊問題について近隣諸国の沿岸警備能力の向上と諸国間の協力体制の構築を主導して海賊事犯を顕著に減少させた実績があります。この蓄積を生かす方向で貢献することが最も現実的で効率的な寄与のあり方です。
■海賊対策新法案の問題点
政府・与党が成立を目論む海賊対策新法案は、あまりに重大で深刻な問題を含んでいます。世界中の公海に自衛隊派遣を可能にしてしまうこと(自衛隊の海外派兵の恒久化)、“任務の遂行”のためであれば武器使用を認めること(従来は正当防衛と緊急避難に限られていた)、P3C哨戒機や護衛艦が米軍に情報提供すれば米軍の軍事作戦全体を支援することになること(集団的自衛権の行使)、防衛相は首相の承認を得て自衛隊を派遣することができ国会へは事後報告でいいこと(シビリアンコントロールの崩壊)など…。
海賊対策新法案で派兵される自衛隊の活動は、イラクに派兵された航空自衛隊の活動内容よりも、さらに直接的で深刻な憲法違反行為となると私は思います。イラク派兵違憲判決を受けた行政府のやることではありません。武力の行使と集団的自衛権の行使を禁止した9条も持つ国のできることではありません。
■イラク戦争と自衛隊派兵の検証が欠かせない
このような政府・与党の暴走を起こさせている一因として、私は、政府のイラク戦争支持と自衛隊派兵行為の検証・総括が全くなされていないことを挙げています。
イラクに大量破壊兵器が存在しなかったことは、ブッシュ米大統領(当時)自身も認めています。ミゲル・デスコト・ブロックマン国連総会議長も「イラク戦争は侵略戦争だった」(2008年6月)と発言するなど、イラク戦争に大義がなかったことはもはや世界の常識になっています。
オランダではバルケネンデ首相が2月2日、イラク戦争を支持した自らの決定について独立の委員会で調査するよう指示。オランダ政府法律専門家らが、イラク戦争について「国際法違反の可能性がある」と考えていることを受けてのものです。政府として調査する動きを加速させています。
英国ブラウン政権は、3月末よりイラク南部バスラに駐留している約4,000人の英国部隊の撤収を開始するに際し、大量破壊兵器をめぐる情報操作やイラク参戦問題を幅広く調査する委員会の設置を表明。撤収完了となる7月末以降に調査を開始する予定です。
こうしたオランダ・英国両政府の動きに比して、日本政府はどうか。昨年12月末、にイラクから自衛隊は撤退しましたが、未だに政府はイラク戦争と自衛隊派兵について検証も総括もしていない…。
■麻生首相に要請書を提出
私たち訴訟の会はイラク訴訟全国弁護団と一緒に、去る4月22日、麻生太郎首相に対して、「イラク戦争と自衛隊の派兵の検証」を求める要請書を提出しました。イラク戦争を支持した(小泉純一郎首相)当時の政府判断の「検証」と、イラクへの自衛隊派兵を「総括」することを政府に求めたのです。政府側は内閣官房総務課山田哲範調査役が対応し、「総理にきちんと報告し、所轄官庁(防衛省か外務省)に割り振る」と約束しました。
要請の内容は、「違憲判決」を踏まえ、十分な情報開示に基づき、米英らによるイラク攻撃を支持した当時の政府判断の検証および自衛隊のイラク派遣を総括することです。特に2006年7月以降(サマワからの陸自撤兵後)の航空自衛隊の空輸活動について、すでに確定した名古屋高裁の違憲判決を踏まえ、検証・総括作業を速やかに行なうことを要請しました。そして、その結果を市民の前にすべて明らかにすることを求めています。
2007年5月の衆院イラク復興支援特別委員会ならびに衆院本会議では、「イラク戦争を支持した当時の政府判断について検証を行う」こと、また、イラクに派遣された自衛隊の活動内容について「シビリアンコントロールに資するよう必要な情報開示を行う」ことなどの附帯決議を採択・可決しています。衆院で与党(自民・公明)と民主党の賛成で可決した事実は歴然と残っており、その責任は重い。
また昨年10月、私たち訴訟の会が内閣府に質問書を提出した際、内閣官房は「航空自衛隊の活動が終了した場合には、陸上自衛隊の場合と同様、各国の意向や将来の要員の安全確保や部隊の運用への影響を考慮した上で、適切な範囲で活動内容についての情報開示が行なわれるよう努めたいと考えている」と文書で回答してきています。
政府は昨年の文書回答と2007年の附帯決議に基づき、イラク戦争についてきちんとした検証作業を行い、情報を開示するよう、私たちは要請したのです。
■おわりに
「違憲判決」は、政府・与党の暴走を止める闘いの“武器”と成り得るものです。平和を取り戻し、平和を創る基盤であり道具と成り得るものです。しかし、それを使うか使わないかは、すべて私たち一人ひとりに委ねられています。
司法府は司法府の役割を果しました。今度は、私たちの出番です。
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