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「海賊対策」という罠.・栗田禎子/『信濃毎日』(薔薇、または陽だまりの猫)
http://www.asyura2.com/09/senkyo61/msg/921.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 4 月 20 日 16:56:58: twUjz/PjYItws
 

(回答先: 自衛隊の海外派遣が際限なく拡大していくのではないか(東京新聞 筆洗) 投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 4 月 20 日 16:16:26)

http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/41b890147a7235fb01d9e666b42a9065

2009-04-19 16:34:11

「海賊対策」という罠.・栗田禎子/『信濃毎日』2009年4月5日「潮流」欄 [憲法]



「海賊対策」の名目で、自衛隊の艦船がソマリア沖に派遣された。重大な問題であるにもかかわらず、マスコミ等での議論の盛り上がりが乏しいのは、「海賊」問題の唐突さ、また、「ソマリア」という地域のなじみのなさのゆえだろうか。

 つい見落としてしまいがちなのは、「海賊」云々という話題は元来は政府が昨年、インド洋への海上自衛隊派遣の延長を図ろうとするなかで持ち出してきたものだということである。「テロ対策」の名のもとの自衛隊派遣を疑問視する国民の声が高まる状況下で、こうした批判をかわすため、「補給支援活動には海賊対策という副次的効果もある」という主張が始まった。他方民主党も、(テロ特措法延長には反対したが)基本的には自衛隊の海外展開拡大を支持する立場であるため、「海賊」対策問題をめぐっては、むしろ積極的な旗振り役を務めた。二つの流れが合流した結果、今回の自衛隊派遣がある。

 なぜ「ソマリア」か、という点に関しては、インド洋を臨み、ペルシア湾岸の
油田地帯にも近い、いわゆる「アフリカの角」に位置する同国が、戦略上の要衝であり、冷戦時代には米ソの角逐の場だったことを思い起こす必要があるだろう。また現在では、アフリカの石油・鉱物資源が注目を集めるなかで、ソマリアはアメリカをはじめとする先進諸国にとって新たな重要性を帯びつつある。

 このように見てくると、今回の派遣は、アメリカの世界戦略に応えて自衛隊の海外展開を拡大していこうという、近年、日本の政財界がさまざまな形で追求してきた試みの一つにほかならず、きわめてきな臭いものであることが分かる。クリントン米国務長官は、ソマリア沖への派遣実現を高く評価した。派遣後の自衛艦は、バーレーンの米第5艦隊と連絡をとりつつ活動していく方針であることも公表されている。冷戦期に日米の支配層がめざした「シーレーン防衛」構想が、形を変えて実現しつつある、と言うこともできよう。

 「海賊対策」という主張は一見もっともらしいが、歴史的に見て列強の海軍力の増強は、まさに「海賊」問題を口実に行われてきた経緯がある。「匪賊」「馬賊」退治という言い方は、かつて日本が中国等での軍事行動を正当化しようとする際にも用いられた。「海上輸送路の確保は石油を輸入に依存する日本の責務」等の議論がされるが、経済的利害を軍事力で守る、という発想自体が、植民地主義的であり、危険であることを自覚する必要がある。

 政府は、現行の自衛隊法上の「海上警備活動」としてソマリア沖派遣を行なうのには無理がある、という批判を先取りし、むしろうまく利用する形で、「海賊対処法」案も国会に提出した。これは「海賊対策」の名のもと、今後は自衛隊が一切の地理的限定なしに海外展開することを可能にする恒久法で、武器使用基準も大幅に緩和する内容となっている。

 「ソマリア海賊」問題は、自衛隊の海外派兵の流れを一気に加速化・拡大し、平和憲法を掘り崩すための「罠」だと言える。一連のプロパガンダを通じて「退治」され、葬り去られようとしているのは海賊ではなく、憲法九条なのである。

栗田禎子・千葉大学教授(中東・北アフリカ近現代史)



 

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