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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090306/188365/
児玉博の「見えざる構図」
2009年3月11日(水)
恐れおののく官僚たち
* 児玉 博
恐怖の大魔王が天から降りてくる――。恐れおののく民たちは息を殺し、身を潜める。
恐怖の大魔王は小沢一郎。民主党党首。そして、その小沢の前に恐怖するのは霞が関の高級官僚。
政権交代が現実的なものになってき始めた政界と官界との関係を端的に言い表わせば冒頭の構図になるのではないだろうか。
小沢政権誕生――。それはある悪夢を思い出させるに十分過ぎるほどだ。1993年8月、国民の期待を一心に担った日本新党代表、細川護煕を首班とした連立政権が誕生した。
非自民党政権の誕生は新たな政治の胎動を期待させた。旧来の政治家とは全く異なる言動の細川の個人人気は圧倒的だった。支持率は80%に迫ろうとしていた。しかし、目を凝らして見れば、新政権の呉越同舟は明らかだった。何より政権中枢を占めるのが自民党を牛耳り続けて来た経世会(竹下派)出身者たち、取り分け小沢一郎だったからだ。
「予算を2回通せば自民党は完全に干上がる。そうすればもう政権には返り咲けない」
自民党の裏の裏まで知り尽くす政治家、小沢の漏らした言葉はかつての同志たちを震え上がらせた。
最も自民党的な政治家、小沢は古巣、自民党を骨抜きにするために強引な手を打ち始める。政治不介入とされてきた官僚人事だ。
霞が関に衝撃が走ったのは細川政権誕生からおよそ4カ月後の12月だった。
通商産業省 (現経済産業省)産業政策局長、内藤正久が担当大臣、熊谷弘から辞任を迫られたのである。
結局、その年の押し迫った12月22日、内藤は役所を去ることになる。
役所の後輩である熊谷の、
「あなた(内藤)がいると省内が暗くなる」
という言いがかりに始まった辞任要求を押し通したのである。
熊谷がただの小沢の代理人であることは誰もが知るところ。内藤は小沢と生き残りをかけて政争をしていた官房長官、梶山静六と関係が極めて近く、自民党商工族の体現者と見られていた。それゆえの小沢に狙い撃ちされたのである。
内藤問題は他省庁の官僚たちを震え上がらせた。
自民党に近い官僚は首を切られる。小沢に踏み絵を踏まされる、と。
事実、通産省退官の挨拶に訪れた大蔵省(現財務省)でこんな一幕があったほどだ。
役所こそ違えど同期入省で、定期的に内々の勉強会を持つなど非常に近い関係にあったのが、当時、主計局長、つまり事務次官待ちポストにいた篠沢恭助だった。
その篠沢に内藤はこう声をかけたという。
「すんでのところでおまえも俺と同じような目に遭うところだったんだぞ」
篠沢を守ったのは当時、事務次官だった斎藤次郎である。
小沢側近の国会議員以上に小沢に近いと言われていた斎藤は、小沢がかねて考えていた消費税に代わる「国民福祉税」構想をまとめ上げた。その代償として大蔵省という組織を守ったのである。
結局はこの「国民福祉税」構想がきっかけとなり細川内閣はあえなく瓦解していく。
それから15年余り。その時の悪夢が再び現実のものになろうとしている。
衆議院総選挙があれば民主党への政権交代は必定と見られているからだ。民主党政権を想定した、つまり小沢の踏み絵を恐れたかのような人事を行う役所も出てきている。
例えば、内藤問題の古巣経産省。昨年7月の同省人事は衝撃的だった。退任する事務次官、北畑隆生が後任に据えたのは本命と言われた経済産業政策局長、鈴木隆史ではなく、資源エネルギー庁(エネ庁)長官の望月晴文だった。
エネ庁から同省事務次官に就任した前例はないばかりか、望月と同期の鈴木が特許庁長官に横滑りして残ることも異例中の異例だった。
北畑は人事について多くを説明することはなかったが、関係者に漏らしていた言葉の断片を丹念に拾い集めるとそれは「政権交代」を想定しての人事ということが明白になってくる。
前経産相、甘利明や現所管大臣、二階俊博など自民党議員に近い望月。政権交代の時に狙い撃ちされるのは望月であり、その時に組織を守るための予備軍としてあえて霞が関の慣例を無視して同期の鈴木を省内に残す。
深刻なのは財務省だ。ことごとく自民党の意を受け、民主党を干してきた財務省にとって、仮にとはいえ小沢政権誕生は悪夢だ。今年7月の人事で事務次官に就任確実と言われている主計局長、丹呉泰健にしても、果たして無事でいられるか。
さらには小沢政権になれば、
「あの人が帰ってくるのでは」
とささやかれているのが細川、羽田孜と続いた連立政権の崩壊とともに石もて追われた斎藤次郎である。
退官後、表舞台から退き一切当時のことについて語ろうとしない斎藤。その斎藤が官房副長官として霞が関官僚の頂点に君臨する。こんな事態さえも考えられる。
そんな矢先に起こったのが政治資金規正法違反による“大魔王”小沢の公設秘書の逮捕劇だった。
東京地検特捜部が投じた一石、金額わずか2100万円の一石は想像以上の波紋をもたらすのではないか。
霞が関の面々はさらに息を殺し、目を凝らし、捜査の行方、小沢の去就を見つめている。
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