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2009/04/01
裁判員制度実施に向けた環境整備等に関する意見書 法務大臣に申し入れ
党裁判員制度実施に向けた環境整備等の検証プロジェクトチーム(PT)事務局長の細川律夫衆議院議員(『次の内閣』ネクスト法務大臣)はじめ、加藤公一衆議院議員、松岡徹、松野信夫両参議院議員は1日、法務省を訪れ、森法務大臣に「裁判員制度実施に向けた環境整備等に関する意見書」(下記ダウンロード参照)を手渡した。
PTでは、5月に裁判員制度がスタートすることを踏まえ、(1)国民への周知・広報は十分か、(2)民間事業所等における裁判員休暇制度の整備は進んでいるか、(3)育児・介護等を要する家族を有する者のための一時預かりサービス等の受入れ態勢の準備は進んでいるか、(4)日当の額は適当か、(5)死刑判決の評議方法を見直す必要はないか、(6)裁判員の秘密漏示や出頭拒否への処罰・過料の適用・運用はどうあるべきか、(7)裁判員裁判において被告人の防御権、公正な裁判は保障されるか――など、裁判員となる国民の負担軽減のための環境整備状況を検証するとともに裁判員法及び関連法令の一部見直しの必要性の有無について、関係各方面からヒアリングし検討を重ねてきた。
意見書では一連のヒアリングを通じての「結語」として、「裁判員制度の円滑なスタートにあたり懸念すべき点は残されているものの、それらの多くは制度への国民の理解と法曹3者の適切な運営と努力によって解決すべきであると考える」としたうえで、早急な法改正や制度改正、今後の運用情況を見ての法改正を含む見直しが必要と判断する点として、以下の8項目を指摘した。
■早急に法改正が必要と考える項目
(1)取り調べの全過程の録音・録画と検察官手持ち全証拠のリスト開示義務づけ。
■早急に裁判員制度にかかる法制度改正が必要と考える項目
(2)裁判員日当の適切な額への引き上げ(現在1万円となっている「日当」の適切な額への引上げ。法文で「日当」とされているために他との横並びの関係で額の引上げが難しい現状を踏まえて「日当」を「手当」等に改める)
(3)一時保育サービスや介護サービスを利用した場合の自己負担費用相当額の支給
■運用の状況を見たうえで法改正を含めた見直しが必要と考える項目
(4)裁判員の秘密漏示や出頭拒否への制裁の弾力的運用
(5)保釈による防御権の保障(「人質司法」からの脱却)
(6)新たな争点や証拠の提出制限の見直し
(7)その他部分判決の見直しなど被告人の防御権と公正な裁判の保障についての阻害要因の除去
(8)裁判員が参加しやすい環境作り(裁判所内への託児施設設置など)
提出後に細川議員は記者団に対し、意見書提出に対して森法相からは民主党の取り組みへの謝意が示されるとともに、スムーズな運用が大事だとの認識が示され、「きちんと対応していく」との意向が示されたことを明らかにした。
★関連――
2009年4月1日
裁判員制度実施に向けた環境整備等に関する意見書
民主党 裁判員制度実施に向けた
環境整備等の検証プロジェクトチーム
1.はじめに
当プロジェクトチーム(以下PTと略記)では、本年5月に裁判員制度がスタート
することを踏まえ、@国民への周知・広報は十分か、A民間事業所等における裁判員
休暇制度の整備は進んでいるか、B育児・介護等を要する家族を有する者のための一
時預かりサービス等の受入れ態勢の準備は進んでいるか、C日当の額は適当か、D死
刑判決の評議方法を見直す必要はないか、E裁判員の秘密漏示や出頭拒否への処罰・
過料の適用・運用はどうあるべきか、F裁判員裁判において被告人の防御権、公正な
裁判は保障されるか――など、裁判員となる国民の負担軽減のための環境整備状況を
検証するとともに裁判員法及び関連法令の一部見直しの必要性の有無について、関係
各方面からヒアリングし検討した。
ヒアリング先は、最高裁判所、法務省、社団法人日本経済団体連合会、トヨタ自動
車株式会社、全国商工会連合会、日本労働組合総連合、厚生労働省、千代田区、日本
弁護士連合会の各機関・団体と足立昌勝関東学院大学法学部教授、武内更一弁護士、
椎橋隆幸中央大学法学部教授の有識者3名である。ご協力に深く感謝申し上げる。
2.各論
(1)国民への周知・広報は十分か
昨年末に全国の裁判員候補者に通知が届いたことや、その報道の影響もあり、裁判
員制度の認知度は以前よりも高まっている。昨年12月にある全国紙が実施した世論
調査では、裁判員への参加意欲を問う質問には「参加したい」は22%と低いものの、
「裁判員候補者として呼び出しを受けたら行くと思うか、行かないと思うか」との問
には「行く」が57%と、裁判員の出頭義務が一定程度受け入れられている様子が見
て取れる。
しかし、政府や最高裁は、裁判員裁判対象事件の7割が3日以内、9割が5日以内
で終わることが見込めるとし、「3日から5日で終わる」などと簡単であることばか
り強調している。残り1割の事件については10日、20日と長期化するかもしれな
いことを国民に十分知らせない広報のあり方についてPTでは疑問の声が出された。
この点について、最高裁などからはあまり歯切れのよい説明は得られなかった。悲
観的な面ばかり強調する必要はないとはいえ、このように審理が長引くことが予想さ
れる事件について、どうするつもりなのか、国民に明確に説明すべきと考える。
日本経団連や全国商工会連合会をはじめとする経済団体、連合をはじめとする労働
団体なども、司法制度改革を推進する立場を共有し、それぞれの構成員に対して周知
の努力を続けていることには敬意を表したい。今後特に中小企業や小規模事業者等へ
―2―
のきめ細かな周知・相談などの取り組みを期待する。
(2)裁判員裁判において被告人の防御権、公正な裁判は保障されるか
裁判員裁判では公判前整理手続で争点などが事前に絞り込まれるため、被告人の防
御権が侵害されるおそれがあるとする指摘が有識者から出された。
最高裁は、「従来の刑事裁判の証拠の分量は裁判員裁判にはふさわしくない。必要
不可欠なものは何か、裁判官、検察官、弁護人の3者でよく相談を積み重ねていく中
で、必要な審理を尽くせるようにする」「どうしてももう1日証拠調べをしたいとい
う場合には日程調整をするしかない」とする。
一方、日弁連からは、「これまでは争点があいまいなまま延々と裁判が続けられ、
証拠開示についても検察官の任意とされてきた刑事裁判のあり方に対して、裁判員裁
判では防御すべき範囲が明確になり、より弁護活動が重要になった」「裁判員裁判で
は法廷における証言・証拠調べが重視され、捜査段階での供述調書などが証拠として
採用され追認される形になってきたこれまでの『調書裁判』を打ち破る大きな契機に
なる」と、裁判員裁判を肯定的に評価しうるとの見解が示された。
「3日から5日の審理で終わる」とされる9割の事件は、基本的に事実関係などに
争いのない事件であり、残り1割の事件は、事実関係に争いのある事件や、犯罪事実
が複雑多岐にわたる事件である。PTとしては、こうした争いのある事件等について
は、たとえ審理に10日、20日を要しようとも、被告人の防御権、公正な裁判が保
障されなければならないと考える。その上で、特に以下の諸点が関係者によって強く
留意されるべきである。
@公判前整理手続の決定的重要性
従来は供述調書などの証拠の中から矛盾が生じて新たな争点となり、法廷で取り上
げられてきた。裁判員裁判では、裁判員の負担軽減の観点から3日から5日という短
期間で集中的に審理を終える必要があるため、裁判員の入らない公判前整理手続で予
め争点を整理することが前提となる。しかし、事前に整理された争点以外については
原則としてあらためて法廷で取り上げることができないため、被告人の防御権の侵害
となる可能性がある。これは裁判員裁判に限った問題ではなく、公判前整理手続が行
われる刑事裁判すべてに共通する課題であり、今後とも大いに議論すべきである。
裁判員裁判での被告人の防御権や公正な裁判の保障は、まずはこの公判前整理手続
での弁護人の適切な弁護活動にかかっている。後述する検察官手持ち証拠リスト開示
を前提として、膨大な時間がかかろうとも公判前整理手続を十分に行い、また必要に
応じ期日間整理手続も活用し、効果的に争点を設定するよう努めるべきである。
A審理日数についての柔軟な対応
仮に公判前整理手続を尽くしたとしても、裁判は「生き物」であり、つねに流動的
な要素が潜んでいる。証拠調べの中で新たな疑問や矛盾が見いだされる場合には、新
たに証拠調べをすべきであり、当初予定していた日程を超えることがあっても審理を
尽くすことを裁判官、検察官、弁護人の3者に強く求める。また、裁判員となる方々
にもこのことへのご理解を求めたい。
B複雑多岐にわたる事件の取り扱い
同じ被告人に対して複数の事件が起訴される場合に対応するため、部分判決制度が
―3―
導入された。この制度は、事件をいくつかに区分し、区分した事件ごとに担当する裁
判員が有罪か無罪かだけを先に判断し、最後の事件を担当する裁判員が裁判官ととも
に全体の事件について量刑まで行うものである。これは裁判員の負担を軽減するため
に導入されたものであるが、最後の事件の裁判員はそれ以前の事件の審理には参加し
ていないことから、適切な量刑判断がなされるかどうか疑問があり、こうした制度を
みだりに多用することには問題がある。
被告人の防御権を保障し、裁判員への過度の負担を避けるために、長期間かかる見
込みの複雑多岐にわたる事件の裁判については、裁判所が裁判員裁判には不適当であ
ると判断し、裁判員裁判の対象から除外する方途も将来的には検討する余地を残して
おくべきである。
C保釈による防御権の保障
裁判員裁判では数日間にわたって連日集中的に審理が行われることが一般的にな
ると見られることから、日々の審理の後の被告人と弁護人との打ち合わせの時間が十
分に確保できず、防御権の妨げとなるのではないかとする指摘もある。
裁判員裁判対象事件は権利保釈が当然には認められない事案ではあるが、連日開廷
される事件について裁判所は特に保釈を柔軟に認め、または十分な接見の時間を確保
できるように努めるべきである。このことにより、いわゆる「人質司法」からの脱却
を図らなければならない。裁判員裁判を前にして、裁判所は従前よりは保釈を認める
傾向を示してはいるが、民主党は保釈の幅を広げる方向での刑事訴訟法第89条の改
正案を衆議院に提出し継続審議中であり、改正を求めていく。
D検察官面前調書の証拠能力の限定
被告人が公判廷で取り調べ段階の自白をひるがえした場合に、これまでは刑事訴訟
法第321条第1項2号の規定により検察官面前調書、いわゆる2号書面の証拠能力
が認められることがしばしばあったが、公判中心主義を徹底する観点から、2号書面
の証拠能力を厳しく限定し、安易な証拠採用を厳に慎むべきである。
E裁判員への適切な説示等
裁判員は法律の専門家ではないことから、無罪推定をはじめとする刑事裁判の基本
原則について、公判に先立ち裁判官が裁判員に十分説示する必要がある。
また、裁判員制度のスタートに先立ち、刑事裁判への被害者参加制度がスタートし
た。両制度の対象事件は重なっており、被害者が感情的に「論告・求刑」などの主張
を行った場合に、これが裁判員に証拠と混同され、重罰化の方向に影響を及ぼすなど、
法廷が混乱することを懸念する声もある。こうした問題を避けるため、主張と証拠の
違いなどについても裁判官が裁判員に十分説示する必要がある。
裁判員制度のスタートを念頭に、証拠物の写真を法廷の大型ディスプレーなどで表
示し被害者遺族や傍聴人にまで見せる「法廷のビジュアル化」も進んでいるが、必要
な範囲を超えた過度の演出により裁判員が混乱しないよう十分留意すべきである。
(3)取り調べの全過程の可視化、検察官手持ち全証拠リストの開示の必要性
従来、刑事裁判が長期化するの主な原因となってきたのは、自白調書の任意性や信
用性をめぐる争いであった。裁判員制度のスタートを控え、警察や検察では取り調べ
過程の一部の録音・録画を試行している。しかし、この一部録音・録画は、被疑者が
―4―
自白した後の供述調書の読み聞かせと署名・指印の様子だけに限ったものであり、そ
こに至る取り調べが適正なものだったかどうかを裏付ける証拠とはならない。全面的
な録音・録画によって、はじめて自白調書の任意性や信用性を裏付ける証拠となり得
ることから、取り調べの全過程を可視化するよう、早急に法改正すべきである。
証拠開示については、公判前整理手続の導入により類型証拠、主張関連証拠などの
開示手続きが定められた。また、検察官の手元にない警察官作成のメモなどの開示も
命じる判断を最高裁が行ったことにより、従来よりも格段に開示の範囲が広がったこ
とが認められる。しかし、公判前整理手続が重視される裁判員裁判では、検察官がど
のような証拠を保持しているかが弁護側に分からなければ、公判前整理手続で開示請
求することすら困難である。よって、検察官がすべての手持ち証拠のリストを開示す
る法改正を早急に実現すべきである。
(4)民間事業所等における裁判員休暇制度の整備は進んでいるか
日本経団連の会員企業アンケートでは、大企業を中心に、ほとんどの企業が何らか
の形で裁判員休暇を付与するとし、有給休暇扱いとする企業は86%という結果だっ
た。一方、連合の調査では、2008年春闘で裁判員休暇制度に関する労働協約を締
結した労働組合は要求件数1,071のうち741と約7割だった。トヨタでは、労
使の合意により、パート労働者も含むすべての従業員に日数制限なしで100%給
与・賞与支給の裁判員特別休暇制度を創設したとしており、こうした姿勢をできるだ
け多くの企業、労使が共有することを強く求めたい。
中小企業における裁判員休暇制度の普及は依然立ち遅れていると見られるが、少な
くとも労働基準法第7条に規定されている「公民権行使の保障」が中小企業や小規模
企業に働く者についても妨げられることのないよう、労使のみならず経済団体や政府
からの強力な後押しを求める。
(5)育児・介護等を要する家族を有する者のための一時預かりサービス等の受入れ
態勢の準備は進んでいるか
保育・介護を必要とする家族のいる者が裁判員等となる場合、厚生労働省は既存の
一時保育サービスでの裁判員等の子どもの広域入所受け入れを裁判所所在自治体に、
また介護サービスについての情報提供等を都道府県等に要請、基本的に受け入れ態勢
は確保できたとしている。東京地裁所在の千代田区では、区内の児童館での「いっと
き預かり保育」を裁判員等に1日5人まで提供、4か月から就学前の子どもまで対応
するという。自治体のこうした協力は評価すべきだが、この千代田区の例をとっても、
対応する施設から東京地裁まで地下鉄利用で30分と離れており、タクシーを利用す
ると往復3,400円程度かかること、千代田区民以外が利用する場合は1日8時間
で4千円の利用料を負担しなければならないことが問題である。
PTの議論では、裁判所所在自治体だけでなく、裁判員等の居住する自治体や沿線
の自治体などでも広く一時預かりに対応すべきではないか、あるいは裁判所内にも託
児施設を設けるべきではないかとの意見が出された。また、一時保育サービスや介護
サービス利用のために負担した費用相当額を裁判員の日当と合わせて裁判所が支給
するよう、「旅費、日当及び宿泊料を支給する」と定める裁判員法第11条の規定を
改めるべきである。
―5―
(6)日当の額は適当か
裁判員等の日当は、「裁判員等としての義務の履行に伴い発生する損失の弁償・補
償を一定の限度内で行うもので、勤労の対価である手当ではない」「裁判員等には特
別の知識・能力・経験等を求められないため、非常勤職員の手当・給与について定め
る一般職の職員の給与に関する法律の規定もそのまま適用する必要はない」などの理
由により、裁判員が1日1万円以内、同候補が8千円以内などと最高裁規則で定めて
いる。最高裁は、裁判関係で同様に日当が支払われる証人や検察審査員が1日8千円
であることとのバランスもあるとするが、PTとしては、裁判員の日当をもっと思い
切って引き上げるべきとの意見が大勢を占めた。
(7)裁判員の秘密漏示や出頭拒否への処罰・過料の適用・運用はどうあるべきか
裁判員法は、裁判員等の出頭や宣誓の正当な理由のない拒否に対して裁判所が決定
で10万円以下の過料に処するとし、また評議の秘密漏示に対しては6月以下の懲役
又は50万円以下の罰金に処するとしているが、こうした規定については、国民に必
要以上に不安を与え、「裁判官の評議の進め方への不満も表明できない」などとする
批判がある。
具体的にどのような場合に出頭拒否に過料が科されるかについては、最高裁は明確
な回答を避けた。PTでは、特に悪質な場合に限るなどの弾力的な運用を求めていく
意見が出されたが、これに対して、弾力的な運用では逆に恣意的な運用の余地を認め
るのではないかとの懸念の声も出た。
評議の秘密漏示について法務省は「公開の法廷でのやりとりや裁判員の職務につい
ての感想などは対象とならない。検察審査員でも同様の罰則を設けているが、これま
で秘密漏洩罪により刑罰を受けた例は見当たらない」と説明。有識者などからは、「秘
密保持は確保されるべきだが、罰則の運用は弾力化すべきである」「義務を課すこと
によって得られる公共の利益があり罰則の定め方は不合理ではないが、制度の存立を
脅かす恐れがあり悪質な場合のみに適用を限定すべき」等、異口同音に弾力的・限定
的な運用を求める意見が出された。
報道機関などから裁判終了後に裁判員が記者会見を行うよう求める動きがあるが、
裁判員の抱いた感想が多くの国民に伝わることにより制度への理解が広がり制度の
改善への糧となることからも、悪質な秘密漏示以外は処罰対象としないという法運用
が定着するよう、関係各機関の慎重な対応を強く求める。
(8)死刑判決の評議方法を見直す必要はないか
裁判員裁判で裁判員が関与する評議の評決は「構成裁判官及び裁判員の双方の意見
を含む合議体の員数の過半数の意見による」と定められているが、死刑判決を下す場
合に裁判員が負う心的なストレス、「疑わしきは被告人の利益に」という原則などを
踏まえ、少なくとも死刑判決を下す場合に限っては裁判官・裁判員の全員一致を要件
とするなど評議方法を見直すべきではないかとの声が出されている。この意見につい
て法務省は「裁判員が参加する裁判だけ評決要件を加重することは、裁判員が加わっ
て行う判断には不安があるからより厳格にしたという意味合いすら持ちかねず、適当
でない」などと斥けた。日弁連もまた「裁判制度全体の問題」だとして、その見直し
を裁判員制度施行の条件とすることには消極的な見解を示した。
―6―
しかし死刑という極刑については、世界的な傾向として死刑廃止に向かっている現
状を鑑みると極めて慎重な取扱いが必要であり、過半数の意見で決定して良いか、裁
判員の精神的負担にどのように対処するかなど、多くの課題が残されている。こうし
た点については、今後の課題として引き続き検討していくべきである。
3.結語
当PTとしては、一連のヒアリングを通じて、裁判員制度の円滑なスタートにあた
り懸念すべき点は残されているものの、それらの多くは制度への国民の理解と法曹3
者の適切な運営と努力によって解決すべきであると考える。
その上で、以下の項目については、早急な法改正や制度改正、今後の運用情況を見
ての法改正を含む見直しが必要と判断する。
【早急に法改正が必要と考える項目】
@取り調べの全過程の録音・録画と検察官手持ち全証拠のリスト開示義務づけ
【早急に裁判員制度にかかる法制度改正が必要と考える項目】
A裁判員日当の適切な額への引き上げ(「日当」を「手当」に)
B一時保育サービスや介護サービスを利用した場合の自己負担費用相当額の支給
【運用の状況を見たうえで法改正を含めた見直しが必要と考える項目】
C裁判員の秘密漏示や出頭拒否への制裁の弾力的運用
D保釈による防御権の保障(「人質司法」からの脱却)
E新たな争点や証拠の提出制限の見直し
Fその他部分判決の見直しなど被告人の防御権と公正な裁判の保障についての阻害
要因の除去
G裁判員が参加しやすい環境作り(裁判所内への託児施設設置など)
こうした項目は、制度の根幹に関わる重要な問題であり、裁判所や関係当局等に十
分な配慮を求めるとともに、今後の制度の運用状況を見て、懸念されたような事態が
現出していると判断される場合には法改正を含む制度の見直しによって速やかに対
応すべきと考える。
裁判員制度の施行を目前に控えて、民主党として以上の点をひとまず中間報告とし
て公表し、裁判員制度に関心や不安を抱く多くの国民の皆さん、新制度のもとでその
職責を果たそうと懸命に努力している法曹関係者の皆さんへの提言に代えることと
したい。
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