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『日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日』ベンジャミン・フルフォード著(2002.12.10刊)より
メディアの癒着
■ダーティー・トリックス
前章で、日本の不況の原因を「政・官・業・ヤクザの鉄の四角形」にあるとしたが、もうひとつ、このことを知っていて報道しない日本のメディアの罪も大きい。日本のメディアは、いったい誰の味方なのだろうか?
例えば、ダーティー・トリックス dirty tricks という言葉がある。直訳すれば、「汚い罠」だ。この言葉がさかんに使われたのは、ニクソン大統領が失脚する原因となったウォーターゲート事件 the Watergate Scandal のときで、毎日のように新聞の見出し headline に躍った。
当時ニクソン大統領はウォーターゲート・ビルの6階にある民主党本部の部屋の盗聴 bugging を命じ、政敵のスキャンダルを探ろうとした。
権力者が野党や政敵をたたくときに使う薄汚い手法で、アメリカ人はこの手のやり方をアンフェア unfair と考え、その”横暴”を容赦しない。
しかし、日本はどうだろう?「ダーティー・トリックス」が大手を振って、永田町を闇歩している。
2002年春の秘書給与問題というのが、まさにこれであった。辻元清美前衆院議員の秘書給与ピンハネ take a cut をリークしたのが誰なのかを、私は知らない。
しかし、これは明らかにダーティー・トリックスによる暴露だった。ということは、これがアメリカなら、トリックを仕掛けた方が非難されることになる。
しかし、日本のメディアはスキャンダルが出てきたとたんに、これみよがしに騒ぎ立て、政権与党の利敵行為に終始したのだ。うるさ型の辻元を黙らせ、葬り去るのに格好のネタだったのだろうが、アメリカのメディアならこれほどの反応はしなかっただろう。
そして次に、この罠にはめられたのが、田中真紀子前外相だった。田中事務所の秘書が越後交通からの出向社員だということは以前から有名な話だったが、外相を更迭され、小泉政権批判をエスカレートさせたとたんにやられてしまった。
いずれも、自民党の抵抗勢力を喜ばすだけのスキャンダルだった。これも、ダーティー・トリックスの臭いがプンプンした。
日本のメディアはもともと、「アイツは悪い」と決めつけると、袋だたきで潰してしまう悪弊があったが、その対象は最高権力者の”政敵”なのである。
そのところをわきまえないと、間接的に権力者に”協力”してしまうことになる。
これに対して、欧米の記者が追うのは、もっぱら大統領、首相のスキャンダルである。与党のカネの流れである。日本の場合、与党の方にダーティーな話が山ほどあるが、それはほとんどの場合、表に出てこない。メディアが彼らに癒着しているからだ。
…(略)…
『平成幕末のダイアグノシス』藤原肇著(1993.05.25刊)より
…(略)…
読売に移る前は同盟通信の内閣担当記者だった彼は、枢密顧問官だった南仏や安部大将に信用され、昭和史の裏面に精通する点では第一人者だ。
最近も彼の著書の『戦争国家の終焉』(明窓出版刊)の中で、平和憲法の戦争放棄条項のいきさつや、東条内閣崩壊にまつわる秘話を公開しているが、証拠主義に毒されて筆の冴えない最近の論調に対して、「歴史の真実というものは、証拠や、証言や、証人や、記録や、日記などの資料によって、分かるものではない」と書いて冴えた目で正論を吐いている。「記録はあるのか、証拠はあるのか、証人はいるのか、などといって詮索するのはチンピラ法律官僚のすることであって、大人のやることではない」と論じる坂口記者の論法に従えば、証拠主義に毒されているから最近の記事は冴えないのだし、頭脳で勝負するホワイトカラー犯罪を前にして、新聞も検察も非力を露呈せざるを得なくなり、証拠を隠滅することで巨悪は高鼾を楽しむことになる。
こんな気骨のある発言をする冴えた眼力を持つ論客も、かつての読売には論説委員の中に存在したこともあるが、第二次読売争議の後で坂口論説委員は記者を辞め、吉田内閣の外郭団体に移って著書で健筆を奮っている。
…(略)…
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