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「検察は自分達のウラ金作りという犯罪を隠すために、ウソの答弁をしたり指定暴力団や政治家の力を借りたりしているのです。いずれ、それが限界に達するときが来るでしょう。検察当局が過去のウラ金作りを認め、国民にきちんと謝罪すれば、最終的には評価が高まったと思います。それを首脳陣は判断ミスで徹底的に隠した。真実を追及しなければならない検察としては一番やってはいけないことをしてしまったのです」
元大阪高等検察庁公安部長の三井環氏はため息混じりで話し出した。検事歴30年という検察幹部が現職のまま逮捕され、325日間も勾留されていたのだ。それも検察の組織ぐるみの「ウラ金作り」を実名で告発する動きを見せたゆえの“口封じ”だった。ようやく保釈されて3ヵ月、「思いもよらない“まさかの逮捕”」に疲れは隠せないが、「検察の非道」とは闘い抜く覚悟も十分だった。
三井氏の口から飛び出す驚くべき証言の数々はぜひ動画でご確認いただきたい。
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■ 架空領収書で作ったウラ金で遊興
三井氏は大阪高検公安部長在職中の2002年4月に詐欺容疑などで逮捕・起訴され、現在も公判中だ。しかし、「検察のウラ金作りの内部告発を準備していたために口封じに逮捕された」と訴え続けて、この5月には、全て実名入りで検察腐敗を赤裸々に描いた『告発!検察「裏ガネ作り」』(光文社)という手記を出版している。
このウラ金は「調査活動費」(調活費)というもので、検察庁や公安調査庁などが情報収集などのために使う経費とされている。法務省側は情報提供者への謝礼などに充てていると説明するが、具体的な使途などは一切公表していない。しかし、1999年1月「調活費はウラ金となって検察庁幹部の遊興費に使われている」と検察内部からとみられる告発文が出回って以降、1998年度に5億円以上あった検察庁の調活費は年々減額され、2002年度は約8500万円となっている。
「1999年に法務省から口頭通達があり、それ以後調活費をウラ金にまわして使うことをやめました。しかし、それまでは調活費を検事正以上の幹部検事が私的に高級クラブや飲み食い、ゴルフやマージャンに使っていたのです。私は昭和63年(1988年)、高知地検次席検事時代に検察の組織的なウラ金作りの仕組みを知りました。架空の情報提供者の領収書を作り、謝礼を支払ったことにしてウラ金を作り、それを遊興費に使うというものです。中小の地検で年間400万円、東京地検だと3000万円でした。これを検事正が全て自由に使えるのです」
逮捕時には新聞・テレビが三井氏を“悪徳検事”として大々的に報道したことは記憶に新しい。刑事被告人となった“悪徳検事”の証言を日本国民は信用するのだろうかという懸念も出てくる。
「検察のウラ金事情は大手マスコミはみんな知っていますが、報道しません。理由は大手マスコミは記者クラブに所属しているから、そこから外されるのが恐いんです。また、ある社の記者は『検察のウラ金を報道したら社が脱税でやられる』と本気で恐れていました。当然、私の逮捕もウラ金告発を封印するためのものだと知っていたのです。現場の記者たちはみんな書きたがっていたし、何人も取材にきました。しかしデスクや社会部長などがストップをかけたんでしょう。結局は“悪徳検事”三井環として報道されました。検察はでたらめな情報をマスコミにリークして“悪徳検事”というイメージをつけ、発言の信憑性を落とす工作をしたのです」
実際、大手新聞の記者に報道しない理由を尋ねてみると、「テレビ、新聞が書かないのは、検察情報が入ってこなくなるからです」とはっきり証言した。
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■ いまだに続く隠蔽工作
もともと三井氏が内部告発を考えた動機は私憤だったようだ。上司の独自捜査ミスの隠匿、挙げ句の果ての栄転人事などへの不満だったのだが、組織ぐるみの隠蔽、政治家への工作を知るにつれ、義憤に変わっていったようだ。
「公務員には守秘義務がありますが、同時に犯罪があるならそれを告発する義務もあります。この場合は告発義務のほうが勝りますので、まさか、逮捕されるとは思っていませんでした。逮捕直前にはもうスケジュールも決まっていて、テレビのインタビューをはじめ、新聞でも報道し、最後には菅直人氏に国会で質問してもらう。そこで私が参考人として招致され、全てをしゃべった後に、検察官のバッジを外すというところまでシナリオはできあがっていたのです」
ところが、実名でテレビ収録する当日、2002年4月22日の朝に逮捕されてしまった。容疑は、購入したマンションに、住んでいないのに住民票を移して47万円程の登録免許税の軽減措置を受けたという微罪だ。その後、暴力団関係者の接待を受けたという収賄容疑で再逮捕された。
ある大手新聞社の社会部デスクは前代未聞の逮捕だと断言する。
「彼の罪なんて本当に微罪だよ。起訴状のひとつに女をあてがわれたというのがありますが、それも裏はとれていませんよ。この程度のことで10ヵ月以上拘置される罪状ではありません。あんな風に検察から恣意的にやられたらどうにもなりません。事情を知っている誰もが『仕組まれた逮捕』と思っています」
清掃用品レンタル会社「ダスキン」(大阪府吹田市)による特別背任事件、さらに土屋義彦・埼玉県知事の長女が社長だったコンサルタント会社に約1000万円を流したとされる事件も検察からのリークで、注目を三井事件からそらさせようとしているという。
「6月3日に外国特派員協会で三井氏がスピーチをすることになりました。田中角栄元首相のときも特派員協会が火に油を注いだということがあって、いくら大人しい日本のマスコミでも騒ぐかもしれないと考えた人がいるのでしょう。そこで、その日に向けてダスキンの案件がリークされました。大阪ではダスキンのこの問題を申告漏れ事犯として扱ったものなんです。申告漏れを起こして処分をしたわけです。その申告漏れを特別背任だとしたわけです。だからダスキンにしてみれば、同じ案件で2回もあげられているんです。こういう事件は普通やりません」(国税庁関係者)
検察はウラ金作りを隠すために無理に無理を重ねている。このままでは歴代検事たちが積み上げてきた巨悪に立ち向かっているという検察のイメージは一気に崩壊する。それでも正義を貫くためには三井氏は闘い続けると言う。保釈されて以降、「検察からは誰一人として接触がない」孤立無援の状態ながら、「生まれ変わっても、また検事になりたい」と言った三井氏の言葉は最後まで耳に残った。
さらに三井氏はこう付言した。
「警察の不正は検察が糺(ただ)すことができる。しかし、検察の犯罪を糺す機関は存在しない。マスコミを介した国民世論だけがそれを可能にするのです……」
http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2003_07_02/index.html
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