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http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903078904/1.php
自衛隊のソマリア沖派兵は「文民統制軽視」と国会内で反対集会
ひらのゆきこ2009/03/08
3月5日、東京で「ソマリア沖への自衛隊派遣に反対する3・5院内集会」が開かれた。防衛庁・防衛省を取材してきた半田滋・東京新聞編集委員は、国会の議論もなしに自衛隊が送られ、また、範囲や期間も決まっていない危険性を指摘。リーダー不在の国会の中で文民統制がきかず、なし崩しに自衛隊派遣が決まっていくことに強い懸念を示した。
3月5日、参議院議員会館で「ソマリア沖への自衛隊派兵に反対する3・5院内集会」が開催されました。東京新聞編集委員の半田滋さんのお話のほか、国会議員や市民団体の方々が発言しました。「2009・5・3憲法集会実行委員会」が主催し、160名が参加しました。
麻生政権は「海賊」対策を理由に、自衛隊をアフリカ東海岸ソマリア沖に派遣する準備をしています。本来、海上保安庁の任務とされる「海賊」対策に、なぜ自衛隊を派遣するのか。国会での十分な議論もなく、国民への説明もなく、なし崩し的に自衛隊が海外に派遣されることに対し、疑問と懸念の声が上がっています。
「ソマリア沖への自衛隊派遣の一番の問題は文民統制がきかないこと」と語る半田滋さん
1992年から防衛庁・防衛省の取材を担当し、先般「『戦地』派遣 変わる自衛隊」(岩波新書)を著わした半田滋さんは、文民統制を軽視したソマリア沖派遣の問題点を、次のように語りました。
半田滋さんのお話
半田さんは、今回のソマリア沖への自衛隊派遣の一番の問題は、文民統制の問題であると述べ、「国会の審議を通して国民の意思を反映しなければならない」との考えを示しました。
3月14日、自衛隊の護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」が、広島の呉からソマリアに向かって出て行きます。自衛隊が海上警備行動で海外に派遣されるのは、1991年の湾岸戦争のときのペルシャ湾派遣以来18年ぶりです。イラクやアフガンに自衛隊が派遣されたときは別の法律を作って出て行きましたが、今回は国会での議論もなく派遣されようとしています。
今回の海上警備行動の問題点について、半田さんは次のように指摘しました。まず、内閣の中で決定が出ていないことです。91年のペルシャ湾派遣のときは、責任の所在が明らかでないことや、1954年にできた自衛隊法による海外派遣は文民統制が危ういとして、与党から異論が出ました。その結果、PKO協力法(国連平和維持活動)ができ、翌年、自衛隊はカンボジアに派遣されました。
自衛隊の海外派遣については、2000〜2001年のテロ対策特別措置法と2003年のイラク特別措置法がありますが、2つとも国会の論議を経ています。PKO協力法は内閣が実施計画を作りました。テロ対策特別措置法やイラク特別措置法も内閣が基本計画を作りました。法律によって違いはあるものの、法律を作ったり活動報告をすることで国会の関与があり、国民の関与が入るので、文民統制が機能しているといえます。
今回の自衛隊の海上警備行動は、総理大臣が承認し、防衛大臣が発動するだけです。範囲についても「海上」としか書かれていません。日本周辺ではなく、世界中に出て行ける脱法的抜け道となっており、いつまでやるという区切りがなく、いつ帰るのかについては何も書いていません。半田さんは、「糸の切れた凧のような状態」だと述べ、アフリカ沖で延々と活動することになると懸念を示しました。
半田さんは、一番の問題は文民統制がきいてないことであり、国民の意志が反映されていないことだと強調しました。海上保安庁ではなぜだめなのか。ソマリア沖はどこにあるのか。なぜやるのか。そのことについての議論がなく、一部の政治家によって決められていることが問題だと、厳しく批判しました。
ソマリアはアフリカの北東部に位置し、1992年から内戦状態が続いており、国連は3年連続して破たん国家に指定しています。内戦と無政府状態からソマリア沖には海賊が頻繁に発生しています。日本の活動地域はソマリア北部のアデン湾。日本列島を縦に横断したような、距離にして1300キロから1500キロを、護衛艦が日本の関連の船舶を守る。
たとえば、A地点からB地点まで日本の船舶を護衛するとき、先導する護衛艦と後方を守る護衛艦がついて行きます。戻るときも護衛します。片道2日間、1往復につき4日間。対象船舶は、「日本籍船」「日本人が乗船する外国籍船」「日本の物資を積んでいる船」のいずれかに該当する船舶です。
ソマリア沖・アデン湾における各国の活動は、主としてアメリカ主体の多国籍軍と、EU(イギリス、スペイン、ドイツなどが参加)の2つがあるそうです。日本はどちらにも入らず、独自の活動をするそうですが、アメリカやEUなどと情報提供や連絡を取り合います。ほかに個別に参加している国は、ロシア、中国、マレーシア、インドなどです。海上自衛隊は、P−3C(固定翼哨戒機)を3基持って行きたいと思っている、と半田さんは語りました。
今回の海上警備行動にいたるプロセスについて、半田さんは次のように説明しました。去年の臨時国会で民主党の長島昭久衆議院議員が、ソマリア沖への自衛隊派遣について麻生首相に質問したのが発端で、麻生首相は建設的な意見であると答弁しましたが、去年の10月に解散総選挙との報道があり、防衛省は真面目に検討していなかったそうです。
ところが、去年の12月、中国がソマリアに行ったことで外務省の目の色が変わり、すぐに法律はできないので海上警備行動でいこうということになったそうです。国連安保決議で海賊退治をやることで一致し、安保理決議1816号、1838号、1851号が出て、海賊対策が本来業務となり、イラクとアフガンで手いっぱいのアメリカに代わって日本がやることになりました。
日本には護衛艦が50隻あります。P−3Cはアメリカの次に日本が保有しています。100機あり、使えるのは80機。日本のP−3Cは能力が高く、アメリカの代わりに日本がやるということで、海上自衛隊はやる気満々。護衛艦だけでなく、P−3Cも出そうということになりました。
半田さんは、「海賊ってなんだ?」と問いかけながら、国と国に準じる組織に対して武器を使うのが武力行使ですが、憲法9条に違反するので、武器使用について自衛隊は抑制的だと語りました。海外に出す自衛隊に対しても抑制的ですが、「海賊」は民間で、軍隊ではない。相手が民間なら武器を使ってもよい、憲法に違反しない、と言うのが日本政府の解釈なので、「海賊」に対して武器を使ってもいいことになります。
ソマリア沖の「海賊」は本当に民間なのか、と半田さんは述べ、機関銃や大砲で武装する軍隊並みの装備をしている漁民を民間とすることに疑問を呈しました。ソマリアは91年の内戦でイスラム原理勢力と部族の勢力争いを繰り返しています。1月にエチオピア軍が撤退し、イスラム原理主義がソマリアを支配しています。
99年〜01年にユスフ大統領暫定政府ができたとき、ソマリアに海軍を創設するためにイギリス企業による教育訓練があったそうです。ソマリア政府と「海賊」は無関係なのか。国に準ずる組織ではないのか。「海賊」の実態が検証されないまま、民間だと言って審議されることもない。よくわからず、情報もない。民間だからいいのではないかといった、きわめてあいまいな状況のなかで自衛隊が派遣されることは危険性だと、半田さんは警鐘を鳴らしました。
「社民党はソマリア沖への自衛隊は反対です」と訴える福島瑞穂さん(以上、筆者撮影)
また、今回の活動を「海賊新法」で対処することに疑問を呈しました。海賊対策は海上保安庁がやることになっているので、一義的には海上保安庁がやると言っていますが、行くのは自衛隊の護衛艦。「論理的に矛盾している」と半田さんは述べ、「護衛艦ではなく、巡視船で行った方がスッキリする。単なるアリバイ作り」だと批判しました。
ちなみに、護衛艦には海上保保安官が乗り込むことになっています。自衛隊員約400名(1艦約200名)乗船に対し、海上保安官8名(1艦4名)が同乗し、司法警察業務を遂行します。
半田さんは、かりに法案を通したとしても、海上自衛隊の護衛艦は憲法9条の制約を受けることや、いまの国会情勢のなかで「海賊新法」が通るのか疑問だとし、「なし崩し的にやるべきではない」と厳しく批判しました。
武器使用の基準が「海賊新法」は限りなく低くなっており、たとえば、自衛官は自分の身に危険がせまったとき正当防衛で武器を使用するが、今回はおまわりさんなので、鉄砲を持っており、日本の船を守るために簡単に銃を使うことができることが問題だと、半田さんは指摘しました。
国会で十分議論がされておらず、昭和29年にできた自衛隊法を使い、国会のごたごたで新法が通る見込みがないなか、法律の拡大解釈で出て行った自衛隊が武器を使う確率が高いことに危惧を抱いているのは自分だけでなくもう一人いる、と半田さんは語りました。それは、浜田防衛大臣です。
浜田防衛大臣はずっといやがっていたそうです。防衛大臣の命令で出て行った自衛隊になにかあったとき、責任を問われるからです。閣議決定がなく、国会決議もなく、報告もない。大臣をやめなければならないだけでなく、国会議員をやめなければならない状況に追い込まれる可能性があります。
1月22日に準備の指示を出していますが、それは「当面の応急措置として」というものでした。本来は法律を作るのが先だが、間に合わないのでとりあえずやってくれというのが今回の派遣だと述べ、前のめりになっている海上自衛隊に対し、防衛省が「これでいいのか」と思っていることを明らかにしました。リーダー不在のいまの国会のなかで、文民統制がきかず、いろんなことがどんどん進んでしまうことに半田さんは強い懸念を示しました。
国会議員や市民団体のみなさんの発言
福島瑞穂参議院議員
応急措置的に自衛隊を海外に出し、あとで新法を作るというやり方は自民党の新憲法草案の先取り。今回の派遣が武力行使1号になる可能性がある。社民党はソマリア沖への自衛隊派遣に反対している。そのことをはっきり言っているので、民主党も少し慎重になっている。
川田龍平参議院議員
18年ぶりに自衛隊の法律で出て行くのは問題。ソマリアの海賊は、先進国などがソマリアの海に有害な物質を廃棄して漁ができなくなった漁民の存在がある。そのことを堤未果さんが東京新聞に書いていた。海外のメディアは伝えているが、日本ではしっかり伝わっていない。メディアはもっとちゃんと伝えてほしい。
沿岸諸国のシステムをつくるために海上保安庁が支援し、日本のアイデアで世界の平和を実現していくことが大事。PKOやイラクやアフガンに自衛隊が派遣されるたびにたくさんの人たちが集まって反対を訴えているが、止められない状況がある。どうやって伝えていくのか。この集まりを見ても若い人の参加者が少ない。若い人たちに自分たちの問題であることを訴えて行きたい。
阿部知子衆議院議員
泥棒をつかまえるのに軍隊が出て行くのはおかしい。ソマリアのイスラム勢力に対し、アメリカが空爆をしている。隠れたアメリカの動きをなぜ伝えないのか。日本はODAを有効に活用し、ソマリアが平和な国になるために力を尽くすべきだ。
日森文尋衆議院議員
イエメンの沿岸警備隊の人が来日し、海上自衛隊がきてもまったく効果がないと明言した。海賊対策は、沿岸諸国が連携をとって対応することが大事だ。そのために日本にできることを協力すべきだ。
山内徳信参議院議員
若い人の参加者が少ないと川田さんは言っていたが、若い人に任せておけないのが今の日本の現状だ。老人パワーがなければ今の日本は救えない。大事なことは既成事実を作らないことだ。太平洋戦争のとき東南アジアで既成事実を作った。その轍を踏まないために、なりふり構わずぶつかっていきたい。
ソマリア人の男性
海賊のルーツはソマリアの漁民。なぜ漁民が海賊になったのか。それは、日本や中国や先進国がソマリアの海に化学物質や医療廃棄物などいろんなものを捨てたり、不当に魚を獲っているからだ。自衛隊はいかないほうがいいと思っている。
市民団体の女性
9条が壊されていくのがソマリアの問題。一般の国民にとってはあれよあれよという感じ。国民に説明が求められている。支持率10%以下の麻生政権が、説明責任を果たさず、なし崩しに進めていっていることに怒りを覚える。グァムの移転問題でクリントンと条約を結んだ。政権が変わっても日本にお金を負担してもらうのが狙い。
沖縄の米軍の海兵隊8千人がグァムに移転するというが、新たに基地ができるところもある。沖縄で何人減ったのか、外務省に聞いても一切答えない。全部アメリカ任せ。基地を作りながら、負担軽減と言っている。米軍再編のために多額の予算を組む。国民の税金を使って平和を壊し、雇用や暮らしを破壊している。
市民団体の男性
ソマリア沖への自衛隊派遣について世論は半々。拮抗しているが、国会での議論がないため、国民にその内容が伝わっていない。反対運動の側の課題もある。ソマリア沖への自衛隊派兵は、憲法を破壊していくことを世論に訴えたい。
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