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民主の「政権ブルー」と与党の「奇策」(森信 茂樹)
http://www.asyura2.com/09/senkyo59/msg/391.html
投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 2 月 25 日 20:17:18: mY9T/8MdR98ug
 

http://allatanys.jp/B001/UGC020004820090224COK00238.html

 麻生総理や自民党の支持率が低下し、民主党政権の可能性が高まる中で、民主党内では「実際の政権運営を考えて心配になるマリッジ・ブルーのような空気が漂い始めている」という。2月7日付の読売新聞は、「民主に『政権ブルー』」と見出しを付けて1面に報道していたが、実に的確な表現だ。

 民主党は、早く政権構想を具体化し国民に提示する必要があるが、読売(前述)や日経(2月10日付から3回)は、政権交代に向けた党内の議論が停滞気味であることを伝えている。そこで、今回は、新たな意思決定メカニズムの問題と財政政策・財源論を取り上げたい。

100人の政治家を官邸・各省に

 民主党の政権公約では、100人規模の政治家が官邸・各省に入り、局単位で統括するという。現在、与党から数十人の政治家が、大臣、副大臣、政務官として政府部内に入っているが、大臣以外は政策決定のラインに属さず、いわばお客様である。大臣は「一日税務署長」だというたとえがあるが、私の経験に基づく実感では、彼ら(副大臣・政務官)こそ一日署長だ。彼らに対する現役官僚の本音は、「お客様」ではなく、「お荷物」というところだ。そのような状況の中に、どのように100人規模の政治家が入りこみ機能するようになるのか、そのために現行法をどう変える必要があるのか、現在の役所のシステムとどう整合性をとるのか、説得的な具体策を示す必要がある。

公務員の在り方は?

 この問題は公務員の在り方とも直接連動している。上級幹部公務員を政治任用にするのか、政治的中立性をもった専門集団とするのかという選択については、依然あいまいである。

 現行の公務員制度は政治的中立性を掲げているが、現実は全く異なっている。役所人事の現状は、優れた専門知識を有していることよりも、「だんどり、はこび、おさめ、政治家への根回し」に優れていることが出世の条件となっている。(大臣等内閣に入っていない)与党政治家との接触(さらには説得)が最も重要な役人の仕事となり、政治的中立性は絵にかいた餅となっている。「米国」型の政治任用にすればこの点はすっきりするが、モラルを欠いたすさまじい猟官運動をもたらすとともに、政治任用されない公務員の士気低下や政策シンクタンク機能としての低下をもたらす懸念がある。

 私は、公務員は、複雑な経済・社会で適切な行政を行うための専門的知識を提供することにとどめ、そのかわり政治家との接触を禁止し政治的中立性を守る「英国型」の公務員制度を目指すべきだと考えるが、この点についての民主党は見解を明確にすべきではないか。

 このような中で、「『霞が関』民主に接近」(2月13日付読売新聞)の記事は、皮肉にも我が国の官僚組織が、みずからの生き残りを求めて「自律的に」野党まで懐柔しようとする官僚組織の姿を映し出している。

 もうひとつ、民主党の財源問題にも黄信号がともり始めている。原因は、経済危機で税収が想像以上に落ち込んだことと、与党が2次補正・来年度予算で「埋蔵金」を使ってしまうことだ。特別会計・特殊法人の無駄はその通りだが、それをなくして本当に10兆円単位の財源が出てくるのか。そこのところが民主党の政権担当能力への疑念を生じさせ民主党支持にマイナスに働いていることを認識してほしい。

 いずれにしても、一日も早く具体的・説得的な政権構想を国民に示してほしいものだ。

「無利子国債」と「政府紙幣」は規律欠く

 一方、与党からは未曾有の経済危機の中で、奇策ともいうべきアイデアが真剣に議論され始めている。「相続税非課税無利子国債(以下、無利子国債)」と「政府紙幣」の発行がそれだ。

 「無利子国債」は経済対策の新たな財源として検討されているが、大きな落とし穴がある。今我が国が抱えている最大の経済・社会問題は、格差社会を少しでも解消し、貧困や社会的排除の問題が生じないようにするためにはどうすべきかということだ。所得格差は、努力や才能(あるいは運)によって生まれるが、当人の代限りの所得格差は、活力保持のためある程度はやむを得ないものである。しかし、一代の所得格差が「世代を超えて」引き継がれると、「階層社会」が出来上がり、社会の活力は大きく低下する。このような格差の固定化を防ぐ観点からは、相続税の役割は決定的に大きい。

 そもそもわが国の相続税は、死者100人に対して約5人しか課税されない一部資産家のみを対象とした制度となっており、相続税負担率(相続税の課税価格に対する納付税額の割合)も12%(2006年度)と、決して高い水準ではない。中小企業の事業を承継する相続には大幅な納税猶予が認められる。「相続税非課税無利子国債」の発行により、相続税の機能がそがれることのデメリットをじっくり検討すべきではないか。

 「政府紙幣」の発行も、世界的に、幾たびもの戦火、巨額なインフレの経験を経て、絶対にやってはならないとされるマネー・プリンティングそのものである。ただで公共サービスの財源が得られるので(錯覚だが)、政治圧力のもとで原則なき拡大につながり、最終的に国家としての信用をなくしてしまうことは誰の目にも明らかだ。

 このような、「規律を欠いた奇策」に対して、これまでのところ3紙は本格的な社説を書いていないが、骨太の議論を展開してほしい。

 

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