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【政治部デスクの斜め書き】かんぽの宿は「虎の尾」だったのか (1/5ページ)
2009.2.22 18:00
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090222/plc0902221800006-n1.htm
結党以来、最大の危機に突入している自民党が最終局面を迎えるのだろうか。さかのぼること30年、やはり自民党は深刻な混迷を経験していた。昭和54年10月の衆院選で、自民党は定数511に対して248議席しか獲得できず、続投を表明した大平正芳首相と福田赳夫氏ら反主流派との対立が激化。首相候補を一本化できずに、選挙後の特別国会も召集できない事態に陥った。自民党史上最大の派閥抗争と呼ばれた「40日抗争」である。
ハマコーこと浜田幸一氏(現在の浜田靖一防衛相の父)が、首相候補を決める両院議員総会を阻止しようと、反主流派が党本部の会場前に机で築いたバリケードを強制撤去した。回想シーンとしてしばしば放映されるのをごらんになった方もあるだろう。
10月に文相抜き(首相が兼務)で第2次大平内閣がようやく発足したが、そのとき大蔵政務次官に就いたのが、大平首相の政敵である福田氏の書生を経て政治の道を歩みだした小泉純一郎氏だった。当選3回、37歳の青年将校時代である。政務次官当時に小泉氏が抱きはじめたという「郵政民営化論」が、やがて現実のものになるとは、小泉氏本人も思っていただろうか。
前回衆院選で自民党の歴史的大勝利を呼び込んだ「郵政解散〜小泉劇場」の激しい揺り戻しが永田町をおおっている。「かんぽの宿」をめぐる騒ぎもその1形態といえよう。そして、すでに危険水域に入っていた麻生内閣をさらにぐらつかせる要因となっている。
昭和54年当時、自民党郵政族(逓信族)が集う党逓信部会は聖域視され、郵政省以外の省庁関係者はもとより、郵政族以外の議員の出入りも制限されていたという。そんな時期に、若き小泉大蔵政務次官が「申し上げたき事あり」と逓信部会に乗り込む事件があった。
人ごみにまぎれて入り口まで随行した大蔵省関係者は、小泉氏が無事に会議室に入るのを見届けると、直ちに本省に電話で一報を入れたという。現場から届いた「朗報」に、本省幹部らは手をたたき、快哉(かいさい)を叫ぶ声が受話器の向こうから聞こえてきた。大蔵VS郵政の対立が激しかった時代で、小泉氏が根っからの「大蔵族」であったことを記す歴史の1ページだ。
その小泉氏が、ピエロと呼ばれながら総裁選出馬を繰り返し、平成13年4月の「3度目の正直」で政権の座に就いた。田中真紀子氏を「変人の母」として味方につけ、一般党員をターゲットに「自民党をぶっ壊す」と叫びながら、抵抗勢力との対決の構図を演出した。結果は予備選段階で地すべり的大勝、国会議員による本選挙でも首相返り咲きをねらった橋本龍太郎氏に圧勝した。
第87代首相の在任期間は5年5カ月にわたり、佐藤栄作、吉田茂に次ぐ戦後3番目の長期政権となった。途中辞任ではなく、任期をまっとうして退任した総裁としては、中曽根康弘大勲位以来。その意味でも、相次いで政権を1年で投げ出した安倍晋三、福田康夫両首相は「短命」を強く印象付けられた。
「構造改革」を旗印に、道路公団民営化などを通じて「官から民へ」の政治の転換を図ることを政策展開の基本に置いたが、ライフワークでもあった郵政民営化の作業を本格化させたのは、16年の参院選で事実上の敗北を喫したあとだった。その年の内閣改造で竹中平蔵氏を郵政民営化担当相に起用し、翌年の国会に民営化関連法を提出。100人規模の反対派議員を党内に抱えながら、成立を図ろうとした。しかし8月8日に参院が関連法を僅差で否決したことから、小泉氏は直ちに解散を決意。2人の閣僚が異議を唱え、最後まで反対した島村宜伸農水相は罷免され、総務相だった麻生首相は最終的に解散に同意した。
両氏は学習院大の先輩後輩にあたるが、島村氏は天皇陛下のご学友、麻生首相は皇室と縁戚関係を持つ。麻生内閣が迷走する中で島村氏が総裁特別補佐に起用された背景には、そういう人間関係もあるようだ。
刺客作戦を展開した「郵政選挙」は、自公連立政権に衆院3分の2勢力を与える歴史的勝利となり、17年10月、民営化関連法は選挙後に衆参両院で可決、成立した。小泉大蔵政務次官のあの逓信部会突入から、四半世紀余りが経過していた。
今年3月にその時期を迎える郵政民営化の「3年後見直し」は、法律に規定されている事項だ。見直し論議が活発化すること自体は必然の流れだったが、いわゆる「かんぽの宿」問題が様相を大きく変えた。
赤字や天下りの温床だったかんぽの宿の事業は「改革の対象」として格好の材料となり、24年9月までに廃止・売却することが法律で義務付けられているが、日本郵政がオリックス不動産への一括売却を決めたことに、麻生首相の盟友である鳩山邦夫総務相が待ったをかけたのだ。最初は鳩山氏の「勘」で始まった騒動だが、入札をめぐる不透明な経緯が次々と指摘され、西川善文社長が売却を白紙撤回する事態に発展した。
その間、首相が「郵政民営化に賛成ではなかった」などと、自民党内外の大幅見直し論に肩を持つような国会答弁をしたことから、民営化推進派勢力の強い反発を招き、小泉元首相から「笑っちゃうくらいあきれている」という強烈な批判を浴びるに至った。
小泉氏の爆弾発言の直後、郵政民営化の推進派、慎重派双方がおどろく発言が国会外から飛び出した。2月15日の民放番組で、民営化の「負の部分」が正面から議論されたのだ。
同日放送の「時事放談」(TBS、収録)に野中広務元幹事長と鳩山総務相がそろって出演し、郵政民営化が米国から強く構造改革を求められていた中で実施され、民間貴重のマネーゲームにさらされるなかで日本の中の貴重な財産が侵害されてはいないか、という趣旨の議論が展開された。
「外資に売り渡されるのでないか」という懸念は、野党はともかく、与党内で公言することはタブーの1つといえる。番組では、主として野中氏が民営化への疑問点として指摘していたのだが、鳩山氏はそれに相づちを打つだけでなく「数限りないごまかしとマネーゲームの中で、国民の財産がハゲタカに奪われる」とまで発言したのだ。
日本郵政を所管する現職閣僚が、党内の懸念をズバリ表現した意味は大きい。郵政民営化の背景で、民営化を推進した小泉元首相や竹中元担当相、総合規制改革会議議長を務めた宮内義彦オリックス会長らがとった行動には疑問があると言ったに等しいからだ。
郵政民営化の「別の顔」を指摘された小泉元首相は、これにどう反論するのだろうか。ライフワークについて、自分に仕えた麻生氏が「賛成ではなかった」などと口にしだしたことで、黙っていられなくなったのが2月12日。鳩山氏の番組収録での発言はその翌日のことだ。
小泉氏はかんぽの宿の問題には言及せず、郵政民営化とは関係のない、定額給付金の実施に必要な法案の衆院再議決に異論を唱えた。いわば「危険球」で麻生首相を攻撃した点にも、不自然さを感じる向きは少なくない。
鳩山氏の基本的な立場は、麻生内閣を支えるため、小泉発言などによる麻生攻撃に反論しようというものだろう。しかし、郵政民営化の「負」の側面と小泉人脈を結び付けたことが、党内の権力闘争に火をつけた可能性もある。麻生、鳩山両氏は「虎の尾」を踏んだということだろうか。(石井聡)
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