ソーリ、ソーリ。あなたの出番はもう終わり――『辻元清美の永田町航海記72』(週刊金曜日2009.2.20号) 「怒るというよりね、笑っちゃうくらい、ただただ呆れている」と小泉元総理が麻生総理を激しく批判した。 この発言を聞いたとき「コイズミ得意の猫だまし(相撲の技)や。引っかかったらアカン」と私は叫んだ。 一昨年の参議院選挙で自民党は大敗し与野党が逆転した。その後、安倍・福田の両総理が「討ち死に」し、麻生総理も迷走。こんな政治状況を作った元凶はアンタ=小泉さんやで。「改革、改革」と絶叫してゴリ押しした、ご自分の「偉業」の結末はどうか。 「百年安心の年金改革だ」と年金関連法案を強行採決したのはアナタでしたね。ところが消えた年金問題が浮上。厚生大臣二回経験者なのに知らぬ顔。コレで安倍政権ノックアウト。 「医療制度も改革だ」と後期高齢者医療制度も強行採決。その後、年金からの天引きが始まり、高齢者の怒りが爆発。自民党の中曾根元総理まで「見直せ」とお怒りでした。コレで福田政権はフラフラになりましたよね。 「三位一体の改革だ」と地方への交付金を削り倒したのも小泉さんでしたね。夕張の悲惨は言うまでもなく、自治体病院が閉鎖に追い込まれたり、中心部がシャッター街になったり。「痛みに耐え」た先は、地方の崩壊だったとまだ気づかないのですか。 オリックスの宮内義彦会長を総合規制改革会議の議長に抜擢したのも小泉さん。経済財政諮問会議では手を取り合って「労働の規制緩和だ」と音頭をとり、製造業への派遣解禁を進めましたね。若者がモノ扱いされるのが、アナタの改革の正体だったのですよ。 そんな郵政民営化を進めた張本人に日本郵政がかんぽの宿をたたき売り? これが「官から民へ」だったのですね。国民の財産を仲間うちに払い下げようなんて輩は、昔だったら「国賊」なのではないですか? 挙句の果てに息子を後釜に。これで四代目。政界の改革を自ら否定ですか。 「小泉元総理にお灸をすえられた」と河村官房長官。「私への叱咤激励だ」と麻生総理。そんなにコイズミが怖いのか。「アンタのせいで日本は無茶苦茶になって、尻拭いをオレたちがやってるんだ。ヤバくなったら逃げ出すくせに。世襲も引退宣言も撤回してからその発言をしろ」くらいなぜ言えない。テレビは「久々に小泉節」と持ち上げる。郵政報道の反省はない。 民主党の幹部からは小泉発言で自民党内が揺れれば面白いなんて空気も。他力本願では? 小泉改革の中身を正面から問い直し、新しい政策を堂々とぶつけて闘わなければ。 「市場原理主義」「小さな政府」「規制緩和」を大胆に見直そうというのが世界の流れ。もしもブッシュ前大統領が「改革が足らないから経済が悪化した」とオバマ新大統領に注文をつけたら噴飯物のはず。 ソーリ、ソーリ。あなたがやっているのはそれと同じこと。怒るより笑っちゃいたい相手は小泉さん、あなた自身ですよ。
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