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2009年2月19日 (木)
小泉竹中「郵政民営化」による「日本収奪」の構造
郵政民営化の流れを整理しておく。
2004年4月26日 郵政民営化準備室発足
2004年9月10日 「郵政民営化の基本方針」閣議決定
2004年7月11日 参議院選挙 竹中平蔵氏当選
2004年9月27日 竹中平蔵氏郵政民営化担当相就任
2005年2月 郵政民営化PRチラシ配布
(国民をIQで区分した「B層」ターゲットの広報)
2005年6月7日 城内実議員質疑
郵政民営化準備室と米国の17回会合判明
2005年6月28日 郵政民営化関連法案修正案自民党 総務会多数決決定
2005年7月5日 郵政民営化法案衆議院可決
2005年8月2日 櫻井充議員質疑
米国通商代表ゼーリック氏から竹中平蔵氏宛て信書暴露
2005年8月8日 郵政民営化法案参議院否決衆議院解散
2005年9月11日 総選挙
2005年10月21日 郵政民営化法・関連法案成立
2005年10月31日 竹中平蔵氏 総務相就任
2005年11月11日 西川善文氏準備企画会社
(日本郵政株式会社)CEO就任内定記者会見
2005年12月26日 「郵政民営化委員会」人選発表
2006年1月23日 日本郵政株式会社設立
2006年1月25日 日本郵政公社承継基本計画
2006年7月31日 郵政公社承継実施計画骨格決定
2006年9月19日 郵政公社承継財産評価委員会
2006年9月26日 安倍内閣発足 菅義偉氏総務相就任
2006年9月28日 竹中平蔵氏議員辞職
2007年3月 日本郵政公社「かんぽの宿」等一括売却
2007年4月27日 郵政公社承継実施計画認可申請
2007年8月27日 福田内閣発足増田寛也氏総務相就任
2007年9月10日 日本郵政公社承継実施計画認可
2007年10月1日 日本郵政株式会社正式発足
2008年9月24日 麻生内閣発足鳩山邦夫氏総務相就任
2008年12月26日 日本郵政株式会社「かんぽの宿」 一括譲渡を発表
2009年2月16日 日本郵政株式会社「かんぽの宿」 一括譲渡白紙撤回を発表
郵政民営化法および日本郵政株式会社法などの関連法が成立したのは2005年10月21日である。2005年9月11日の郵政民営化選挙で自民党が大勝し、法律が成立した。
郵政民営化法の策定は2004年4月26日の「郵政民営化準備室」設立から、2005年4月27日の「郵政民営化法案」閣議決定までの1年間に行われた。
この1年間に、郵政民営化準備室が米国関係者と17回も会合を重ねたことが暴露された。国会での質問者は城内実議員で、城内氏は当時の模様を次のように記述されている。
「今、当時のことを思い出すと、前日質問をとりに来た郵政民営化準備室の関係者が、「この質問だけは竹中大臣にしないで欲しい。準備室長に答弁させていただきたい。」と強く迫った。彼らは大変丁寧なものごしでありながら、執拗にくいさがってきた。なぜ与党の議員なのにこういう(一番核心に触れる質問)をするのか、とにかくとりさげてくれと言わんばかりの迫力で、私も役人ながら大臣を守ろうとする使命感たるやあっぱれだなと思ったくらいだった。」
(城内実氏のブログからの引用)
竹中氏にすれば、米国関係者と17回も会合を重ねて法案策定が進められたとの事実は、「もっとも触れられたくない部分」であったのだと考えられる。米国は「対日年次規制改革要望書」で「郵政民営化」を最重要項目として、詳細に要求を突き付けてきた。郵政民営化は米国の要請、指示に従って細目が定められたのである。
大きな問題が三つある。
第一は以下の問題だ。日本郵政公社が担ってきた「郵便」、「貯金」、「簡保」の郵政三事業を「郵便」、「郵便局」、「ちょきん」、「かんぽ」の4分社化によって引き継ぐことは「郵政民営化法」によって定められた。しかし、具体的にどのように業務や資産を継承するのかについては、「基本計画」ならびに「実施計画」で定められると規定されたことである。
郵政民営化法第161条から164条にその定めが盛り込まれた。つまり、郵政民営化の細目の決定は法律事項ではなく、政省令事項とされたのだ。大枠は法律で定められたが、実体的に意味を持つ細目は総務省および日本郵政株式会社に委ねられたのである。
第二は、郵政三事業の資産承継の具体的内容が「基本計画」、ならびに「実施計画」で定められることになったにもかかわらず、「かんぽの宿」などの旧簡易生命保険法101条の1の施設、および「メルパルク」などの旧郵便貯金法第4条の1の施設の廃止または売却だけが、特別に取り扱われて、日本郵政株式会社法附則第2条に潜り込まされたことである。
民主党の原口一博議員によると、この規定は法案完成の2日前に盛り込まれたとのことだ。「かんぽの宿」の安値払い下げが2005年の法案策定時から画策されていた疑いが浮上している。
第三は、日本郵政公社からの資産承継に際して、評価委員が財産評価を行うことが法律に盛り込まれたことだ。これは、郵政民営化法第165条に規定された。
日本郵政株式会社が「基本計画」を定めたのは2006年1月である。しかし、「基本計画」には具体的な分割の規定がない。具体的な分割を決定したのが「実施計画」であるが、実施計画は2007年4月までに決定されるべきことが省令で定められた。
ところが、この実施計画の骨格は2006年7月31日に、前倒しで決定されたのである。竹中氏は2006年9月に突如、議員辞職の方針を示した。参議院議員の公職を任期半ばで放り出した。小泉政権の終焉と同時に議員辞職した。
竹中氏は、郵政民営化の細目の決定を、自身の任期中に前倒しで決めてしまったのである。また、財産評価委員会の第1回会合が2006年9月に開かれた。この財産評価委員会にオリックス関連企業の役員を務める奥田かつ枝氏が委員として指名され、日本郵政公社財産の評価額決定に重要な役割を果たしたと考えられる。
問題は日本郵政公社の資産と人員の分割にある。実施計画の概要に示された人員配分と日本郵政CRE部門斎藤隆司氏作成資料に記載されている各社保有不動産を列挙すると以下のようになる。
人員(万人) 不動産(億円)
日本郵政 0.36 2250
郵便事業 10.01 14030
郵便局 12.07 10020
ゆうちょ 1.16 1200
かんぽ生命 0.54 900
ここで、郵政民営化の形態を簡単に説明しておく。
郵便、郵便局、ゆうちょ、かんぽ生命、の4社はすべて日本郵政の傘下に入る。日本郵政株式会社は持株会社で郵政4社を子会社として保有する。
郵政民営化法第7条の規定により、日本郵政が保有する「ゆうちょ」と「かんぽ生命」の株式は全株を2007年10月から2017年9月までに売却されることとされている。
つまり、「ゆうちょ」と「かんぽ生命」については、株式売却が完全に終了した段階で「完全民営化」が実現することになる。
「郵便事業」と「郵便局」は「日本郵政」の子会社であり、日本郵政が両社の株式を保有し続ける。しかし、「日本郵政」の株式については、郵政民営化法第7条および日本郵政株式会社法附則第3条の規定により、全体の3分の2を出来るだけ早期に売却することとされている。
上記の人員と不動産の配分を見ると、大きな特徴を見て取ることが出来る。
それは、「ゆうちょ」と「かんぽ生命」に配分される人員と不動産が極端に少ないことだ。もちろん、「ゆうちょ」と「かんぽ生命」には340兆円の資金が付随する。この「ゆうちょ」と「かんぽ生命」の株式は全株が売却されることとされている。この点は、米国が執拗に要求した点でもある。
この「ゆうちょ」と「かんぽ」の株式をそれぞれ全株の2分の1以上買い集めれば、340兆円の資金の支配権を確保することが出来る。日本国民の貴重な340兆円の資金が簡単に外国資本の手に渡る危険があるのだ。
一方、「日本郵政」、「郵便事業」、「郵便局」の3社連合はどうだろうか。最大の特徴は、郵政が保有する巨大不動産の大半がこのなかに接収されたことである。
「この3社連合体」から「郵便事業」と「郵便局」を差し引くと、「巨大不動産」が残る。「日本郵政」は「不動産事業」を今後の事業の中核に据える方針を示している。
だが、この点は、日本郵政株式会社法とは整合的でない。日本郵政株式会社法第1条(会社の目的)は以下のように定めている。
第一条 日本郵政株式会社(以下「会社」という。)は、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の発行済株式の総数を保有し、これらの株式会社の経営管理を行うこと並びにこれらの株式会社の業務の支援を行うことを目的とする株式会社とする。
不動産事業は日本郵政株式会社の本来業務ではない。この点に関連して問題になるのが、「かんぽの宿」の売却規定である。日本郵政株式会社法は附則第2条に「かんぽの宿」売却規定を設けた。
このことについて、法案策定の決定権者である竹中平蔵氏は自著のなかで次のように述べている。
「メルパルクホールや簡保の宿など、本来の仕事つまりコア業務ではない(したがって競争力もない)ものは、資産を処分して撤退するべきだと判断した。」
(『構造改革の真実』177ページ)
メルパルクや簡保の宿が「本来の仕事つまりコア業務」でないなら、日本郵政の不動産事業も「本来の仕事つまりコア業務」でないことになるはずだ。日本郵政が巨大商業ビル建設計画を発表し、マンション分譲事業に進出することを竹中氏は推進する発言を示している。その一方で、「かんぽの宿」は「本来業務でないから売却することを決めた」と言うのには無理がある。これも、「出来レース」を示唆する状況証拠である。
「かんぽの宿」を不正廉売するための「トリック」を考える必要がある。「事業を行い、赤字を計上すること」がDCF法による低い資産評価を生み出す「トリック」だった。鳥取県岩美町の「かんぽの宿」は老人福祉施設に衣替えをして立派に活用されている。鹿児島県指宿市の「かんぽの宿」は和風旅館「錦江楼」に生まれ変わり資産価値を発揮している。いずれも1万円で売られることはあり得ない。
日本郵政+郵便事業+郵便局は、不動産の評価額だけで2.6兆円を有する。しかし、22.5万人の人員を抱える。この状態で、株式を上場すれば、株価は極めて低い水準を付けることになるだろう。それが狙いなのだ。
安い株価で日本郵政株式を買い集める。日本郵政の支配権を獲得した段階で、強烈な人員削減を実行する。郵便事業会社には、郵便事業に必要最小限の不動産しか配分されていない。3年ごとの見直しで「郵便事業」と「過疎地の郵便局」だけを「国営」に転換するとどうなるか。
三菱地所にならぶ「日本(郵政)地所」が完成し、その株式を支配すれば、巨大利得を確保できる。
国会は基本的に郵政民営化関連法の成立までしか監視していない。しかし、「郵政民営化」の「みそ」は「実施計画」の具体的内容に隠されていたのである。竹中氏は自著のなかで次のように述べている。
「承継計画については、2007年4月までに政府に提出することが法令上義務付けられている。しかし私は、小泉総理の在任中に「承継計画の骨格」を固めておきたいと、早くから考えていた。改革のゆり戻しを、虎視眈々と狙っている勢力がいる。改革的な経営の方向性を明確にし、後戻りのないようにしておくことは重要なことだった。」(『構造改革の真実』240ページ)
「郵政民営化」をいま見直さなければ、貴重な国民資産はハゲタカ一族に完全に収奪される。「郵政民営化見直し」に対する異常とも言える小泉竹中一家の反応の意味を洞察し、ハゲタカ一族による国民資産の収奪を阻止しなければならない。
なお、毎日新聞社に対する名誉毀損訴訟で、東京高等裁判所から不適切で不当極まりない判断が示された。この問題については、機会を改めて記述する。国家権力がいかなる弾圧を加えようとも、私は断固戦い抜く所存である。
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