★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK58 > 888.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
すでに始まっている大連立政権 - コーティングと「雇用国会」の消滅
雇用国会_1レジまぐ版に、『辺見庸のマチエール論ときっこの日記 - ネットの中での再生と回復』の記事を上げた。昨日(2/4)は、松下電器が1万5千人を削減するというニュースが報道された。ソニーの1万6千人、NECの2万人に続いて、大手電機メーカーによる大型の人員削減のラッシュが続いている。正月、年が開けた頃は、河村官房長官や与謝野経産相から、企業は内部留保を使って雇用を維持すべきという政府発言があったが、わずか1か月前のことが遠い昔のように思われる。派遣村の運動が起きて、ようやく閣僚の口から内部留保論が出るところまで行ったにもかかわらず、あっさりと押し戻され、大量解雇の波状攻撃を止められなくなってしまった。政府の発表では3月末までに12万5千人が職を失い、業界団体の推計では 40万人が失業すると言われている。日刊ゲンダイの数字は100万人の予想を出している。日が経つほどに数が大きくなる。それなのに、政治は何もしていない。年末の派遣村の数十倍の規模の失業者と路上生活者が街に溢れようとしているのに、辺見庸的なコーティングされた日常が続いている。
雇用国会_2報道では、2008年度10-12月期の決算報告において、松下電器は264億円の営業黒字を出している。リーマン破綻後の急激な市場縮小と不況に襲われた中で、パナソニックは見事に営業利益を出していて、赤字に陥ることのない十分な売上を上げていたことになる。状況は自動車メーカーなどとは全く違う。新聞では、2009年度の連結決算の純損益が3800億円の赤字になったと書いているが、この数字は消費減による売上減のために赤字になるのではなく、松下電器自らが発表しているように、工場閉鎖や拠点統合や人員整理の「構造改革」による営業外費用の計上によるものである。つまり、言い方を変えれば、本来は赤字にならないものを、わざとリストラ計画の費用を膨大に計上して、無理やり大幅赤字の損益決算にしたのであり、言わば、人員削減のブームに便乗して、黒字経営のうちに将来余剰となると見込んだ工場や人員を削減する戦略である。売上が落ち込んで、赤字になって、やむにやまれず人員削減に手を着けるのではない。今なら赤字決算でも経営責任を問われず、大量解雇も横並びだから、だからプリエンプティブにやるのである。
雇用国会_3赤信号の横断歩道を皆で渡るように、状況に便乗して、早い話が火事場泥棒的に大量首切りを断行しているのだ。職を失う40万人とか100万人の人々は、雇用保険の支給期間が終わった後、一体どうやって収入を得るのだろうか。この大不況は、とても半年や1年で終わる規模のものではない。12万5千人とか40万人とか簡単に新聞やニュースは言うが、その労働者には家族がいる。中学校や高校に通っている子供がいる。親は会社を解雇されても、子供は学校をやめるわけにはいかない。国会とマスコミの状況は、見ていて本当に不思議で、未曾有の大量解雇が発生しているのに、わざとその問題から避けるように、まるで身をくねらせるように、他の問題を話題にして時間を潰し、紙面と画面と審議を潰している。新聞の1面に、1万5千削減とか2万人削減とか活字が躍りながら、国会では、漢字が読めるとか読めないとか、背広がどうだとか、詐欺と言ったとかどうとか、そんな話が飛び交い、それをテレビがニュースにして報じている。ワイドショーもそれで騒ぎ、ネットのブログもそれで騒いでいる。目の前に迫っているはずの40万人の大量失業など、まるでどこか遠い国のことのようだ。
雇用国会_4日比谷の派遣村がマスコミの表面から消えてから、政治の話題はまた給付金問題に戻った。給付金がネタとして減価償却して、今度は消費税と天下りと議員定数の話になった。民主党はネタに事欠いたのか、予算委で道路特定財源の話を蒸し返している。百年に一度の経済危機への対策とか、非正規労働者を大量解雇からどう救うかとか、派遣村状況が全国で大規模に再現したらどうするとか、そういう危機認識は与野党とも全くない。この国は不思議な国だ。私は言いたいが、敢えてここではブログ左翼という言い方をするが、彼らの毎日毎日の小沢万歳の民主党応援コールのルーティンというのは、まさに、辺見庸の言うコーティングそのものではないのか。上塗りへの癒着と迎合ではないのか。石井一が麻生首相の漢字をバカにしたら、大喝采して溜飲を下げる。田中真紀子がスタイリッシュだの背広がどうだのと皮肉を言えば、よく言ったと大喜びで拍手をする。前原誠司がやるやる詐欺だと言えば、大したもんだと誉めてやる。これは、コーティングへの加担と追随ではないのか。石井一や田中真紀子や前原誠司の国会の議論というのは、あれは野党ではなく与党の議員が政府や首相に言う類のものである。猿芝居だ。
雇用国会_5正月の頃、この通常国会は「雇用国会」になると言われた。1か月経ち、「国会は正月明けから止まる」と言った星浩の予想と全く反して、2次補正は政府与党のペースで楽々と通り、消費税論議も何の政局にもならず、渡辺喜美は過去の人となり、国会では雇用や派遣の問題は全く顧みられることはない。雇用国会などと、誰が言ったか知らないが、全くの嘘ではないか。報道ステーションも雇用や派遣は報道対象から外した。現在は、流通業界の再編制と安売りビジネス繁盛の瑣末なネタをやっている。現在の政治状況を一言で言えば、大連立政権が事実上始まっているのである。昨年の国会を思い出すがいい。そして昨年と今年の国会の違いを考えてみるがいい。去年の国会は「ねじれ国会」と言われたではないか。ガソリン税の暫定税率廃止をめぐって、見かけだけでも自民党と民主党が「ガチンコ勝負」を国民の前に演じて見せていたではないか。欺瞞的ではあるにせよ、衆院と参院で多数の意思が違う事実を国民に知らしめていた。今年はどうだ。ねじれ国会などという言葉は消えてなくなっている。ねじれていない。ギャップがない。両院で対立して真剣勝負になる政治場面がない。
雇用国会_6漢字がどうだの、背広がどうだの、詐欺がどうだのであり、せいぜい給付金と道路財源と天下り問題である。自衛隊のソマリア派遣問題すら論議されない。大連立政権が静かに始まっているのであり、自民党と民主党が接近しているのであり、大連立前の準備運動を始めているのだ。この国会における大連立政権の側の目的は一つだ。雇用問題を本格審議しないこと。派遣法改正を論議しないこと。派遣切りや内部留保の問題を予算委の話題にしないこと。企業の派遣切りのフリーハンドの邪魔をしないこと。その目的を遂行して、新年度予算を通し、選挙の前に選挙後の安定的な政治体制の青写真を作ること。大連立は始まっている。それは、野党の民主党が自民党に接近して、雇用問題を国会論戦からオミットしている状況だけが証左になるのではない。自民党の方も民主党に接近している。昨年の秋、総裁選を終えて麻生首相が就任した直後は、民主党に対して敵意を剥き出しにし、対決色と攻撃姿勢を鮮明に出し、選挙での決戦と激突の情勢が演出されていた。だが、ここへ来て、その様相が変わっている。対決姿勢を控え、逆に基本政策が同じだという点を前面に出す方向に変わっている。
雇用国会_7特に注目すべきは、尾辻秀久の1/30の参院代表質問で、構造改革路線を全否定し、経済財政諮問会議と規制改革会議の二つを廃止すべきだと政府に迫っている。麻生首相の方も、政策の中身は何も変わっていないが、施政方針演説では「小さな政府」に対して距離を置く態度を見せ、小泉改革から離れる印象を有権者に見せている。選挙のマニフェストでは、この点がさらに鮮明に浮び上がるだろう。どちらに投票しても同じだという見せ方をして、自民党の選挙での議席減を最小化する作戦に転換したことが窺われる。誰が首相になって選挙を戦っても、おそらくその作戦は同じで、民主党とは政策の大きな違いはないと演出する争点と公約の工夫をするだろう。争点の設定においては、選挙後の政界再編を睨んで、選挙後に分解再結合する方程式を念等に置いて、解散に踏み切るに違いない。自民党とマスコミの狙いは、現在、「民主党を中心とする政権」に流れている世論を、「民主党と自民党の大連立政権」の支持の多数へと戻すことである。民主党単独政権支持ではなく、大連立政権支持の世論状況を作ること。そして、選挙後の政界再編で民主党から左派を追い出し、自民と民主と公明と国新で連立政権を作ること。
百年に一度の経済危機に対応するためとか、年金と社会保障制度を抜本的に立て直すための政権とか、消費税と道州制を導入するための挙国一致政権とか何とか言って、大連立する大義名分はいくらでも立つし、読売新聞と産経新聞と日本テレビとフジテレビが後押しする。無論、大連立はすなわち政界再編であり、いい目を見なかった連中が必ず外に飛び出して、第二の民主党的な政権交代主義の新政党ができるのは目に見えているが、選挙そのものが大連立=政界再編含みの政治の動きになり、自民と民主の対立が曖昧になる選挙になるだろう。
http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-22.html
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK58掲示板
フォローアップ: