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公職任命コミッショナー制度に学ぶ〜政官に従順な「有識者」審議会に泣かされないために〜(醍醐聰のブログ)
http://www.asyura2.com/09/senkyo58/msg/1060.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 2 月 12 日 08:50:59: twUjz/PjYItws
 

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-43d4.html

公職任命コミッショナー制度に学ぶ〜政官に従順な「有識者」審議会に泣かされないために〜

市民の前に立ちはだかる「有識者」審議会


 わが家が千葉県の今の地域に引っ越してきて20年経った。この間、周囲の環境も一変し、2年前から近くで土地区画整理事業組合が主体の大規模な宅地開発事業が始まった。そこに高層マンションの建設、24時間営業を掲げるスーパーが進出予定とわかるや、近隣住民から日影や景観、車の通行量の激増などに対する不安が高まり、自治会をとおして組合、ディベロッパ−、県・市の担当部署との交渉を続けてきた。私ども夫婦も自治会の下に立ち上げられた「開発対策協議会」のメンバーに加わり、行政、組合などとの交渉やそれに備えた地元住民内の協議、資料・判例調査などに多大なエネルギーを費やした。
 こうした経験を通じて痛感したのは、決定的といえる局面で必ずといってよいほど、「有識者」からなる審議会が住民の前に立ちはだかるということである。上の土地区画整理事業についていうと、都市計画審議会がそれである。土地区画整理組合の事業認可にあたっては、事業計画案の縦覧、意見募集、公聴会が行われ、地元住民からは多数がこれらに応募した。しかし、提出された意見にも公聴会の場で出された意見にも、木で鼻をくくったような数行の「考え方」が示されたのみ。参加した住民の間には「出来レース」に付き合わされたのかという徒労感と空しさが募るばかりだった。
 そこで、改めて千葉県都市計画審議会の委員の顔ぶれを調べると、会長・副会長を含む7人は「民間人」だが、その他は千葉県議会議員が8人、国の関係省庁の部局長が5人、県下の市町村の市長・議会長が6人、それに県警察本部長の計28人となっている。これでは行政から独立し、行政に意見を具申する機関としての役割を期待するのがそもそも無理である。その上、民間人7人もどういう基準、手続きで選ばれたのか、市民には不明である。
 

小泉「改革」の先兵役を務めた「民間委員」


 こうした状況は単に一地域の特殊事情ではなく、わが国の行財政の中枢にまで及んでいる。たとえば、2001年1月の中央省庁再編にともなって設置された規制改革会議と経済財政諮問会議は、小泉「改革」賛美のマスコミに頻出し、与党や官庁などの「抵抗勢力」に対抗する規制緩和路線の旗振り役として甚大な影響を及ぼした。マスコミ自身もこの会議に参画した「民間委員」を郵政民営化、三位一体改革など、政官の「既得権」に切り込む勇士のように、その一挙一動にスポットを当てた。
 しかし、それから8年後の今日、小泉政権が手がけた規制緩和と「構造改革」(タクシー業界における新規参入の自由化、社会保障費予算の総枠の抑制、労働者派遣法の改定など)は、地方における医療と経済の荒廃、安全軽視の事故の続発、セーフティネットの整備なしの自己責任論と競争原理がもたらした格差助長といった弊害が次々と露呈し、与野党を問わず、見直しの声が起こっている。また、小泉政権が改革の本丸と絶叫した郵政民営化について、現職総理大臣までが「実は賛成ではなかった」、「有権者は民営化の中身を知らなかった」と言い出す有様である。さらに、この1月の参議院本会議では代表質問に立った自民党議員が、公私混同の規制緩和、行き過ぎた市場原理主義がもたらした惨状の結果責任をとって、経済財政諮問会議の解散を要求するに至っている。


小泉「改革」はどのような「既得権」を蹴散らしたのか?


 こうした事態の推移から透けてみえるのは、「民間委員」が先兵役を務めた小泉「改革」が蹴散らした「既得権」とは、経済的強者に偏在した機会と権限ではなく、市井の国民の安全で健康で文化的な生活を享受する権利と就業の機会だったということである。経済的強者の特恵的な地位を「国際競争力の強化」、「民間活力の維持・向上」という実態不明のスローガンの下に擁護する一方、経済的弱者の憲法で保障された権利を「自己責任」と「モラルハザード排除」の名のもとに蹴散らしたこと――これこそが小泉「改革」の本質であり、その旗振り役を務めた「民間委員」の最大の罪と罰と言って過言でない。
 そこで、「民間委員」の顔ぶれを見てみると、経済財政諮問会議の設置根拠法である内閣府設置法は10名以内とされた議員総数のうち通称「民間議員」(正式には、経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者)が4名以上とすることを定め(第20条第3項)、これら民間議員は内閣総理大臣が任命することとしている(同条同項)。しかし、「民間」とはいってもそのうちの2名は財界から起用され、具体的には経団連会長が任命されてきた。残り2名は学界から選ばれてきたが、程度の差はあれ、効率性と市場原理を重視する経済学者が起用されてきた。


オピニオン・ショッピング


 会計監査の世界で「オピニオン・ショッピング」という言葉がある。意訳すると、「監査を受ける企業が自分に都合のよい監査意見を付けてくれる監査法人や公認会計士を探しまわること」をいう。
 私は、過去約10年間、情報通信審議会(旧電気通信審議会)委員を歴任し、その後、田中康夫県政時代の長野県で2つの審議会委員を務めた経験から、この「オピニオン・ショッピング」という言葉が政官による審議会委員の選任の実態にそっくり当てはまると感じている。
 私の体験については次の論稿を参照していただくことにして、ここでは、審議会委員の選任にまつわるオピニオン・ショッピングの氷山の一角ともいえる事例を紹介しておきたい。

 醍醐聰「総務省が審議会委員の私を『解任』した真相」(『エコノミスト』2003年1月21日、掲載)
 http://sdaigo.cocolog-nifty.com/shingikai_iin_kainin_no_sinso.pdf

 内定委員を“解任” 規制改革に慎重発言(『読売新聞』2004年11月16日)
 「株式会社の学校経営の是非などを論じるため、内閣府に設けられた規制改革・民間開放推進会議の教育・研究ワーキンググループ(作業部会)で、委員に内定していた会社社長が規制緩和の一部に慎重な意見を述べたところ、内閣府の要請で委員就任を辞退させられていたことが16日、分かった。政府が定めた結論に合わせて人選しようとする審議会の実態が露呈した形だ。
 委員就任を辞退させられたのは、飲食チェーン『ワタミフードサービス』の渡辺美樹社長(45)。・・・・・渡辺社長は、委員の辞令交付を受ける前の初会合に参考人として出席。NPO(非営利組織)法人の学校経営については賛成したが、株式会社については『利益の株主還元を優先するため、不適当』と慎重意見を述べた。渡辺社長以外のメンバーはおおむね賛成論だったという。
 内閣府によると、渡辺社長の見解は他の委員や事務局内で問題化し、同月25日、河野栄・同推進室長が渡辺社長を訪れ、委員就任の辞退を求めた。
 渡辺社長によると、『考えを変えるか、就任を辞退するか選んでほしい』と言われた。委員就任を辞退した渡辺社長は『就任を頼んでおいて、意見を変えろと迫るのは、あまりに失礼な話で驚いた。推進会議の議論の進め方は乱暴過ぎる』と話している。
 河野室長は『結果的に失礼なことになったが、年内に答申をまとめるには、基本的な意見の違う方はふさわしくなかった。規制改革はもともと省庁の反対が強いので、あえて委員に反対派を入れる必要はないと考えている』としている。」


プリオン調査会、半数の委員が辞任/揺らぐ食の番人の信頼性(『東奥日報』2006年4月12日)
 「米国産牛肉の輸入再開をめぐる安全性評価を担ってきた内閣府の食品安全委員会プリオン専門調査会で、12人の委員のうち半数が4月の改選で一気に辞める異例の事態が起きた。消費者団体などから慎重派とみられていた6人の辞任で、食の番人である同委員会が掲げる『公正中立』の立場が大きく揺らいでいる。」
 「▽露骨な圧力も 委員の不信の始まりは、国内のBSE対策を検証した04年9月の報告書『中間取りまとめ』にさかのぼる。審議の過程で『科学的根拠がない』と退けられ、吉川座長が記者会見で削除を明言した『生後20ヵ月以下の感染牛を発見することは困難』との文言を、座長に無断で事務局が残したまま、結論として公表したという。・・・・。その後、米国産輸入再開に関し、政府の姿勢に異論を呈したある委員の研究室を厚生労働省の担当者が訪れ『(国から)研究費をもらってますよね』と露骨に“圧力”をかけたこともあったという。上部組織の食品安全委メンバーから調査会に提出する慎重意見を変更するよう電話で指図された委員もおり、不信感は増すばかりだった。」
 「▽狙い打ち 自ら辞任した委員ばかりではない。メディアで食品安全委へ批判的な発言を繰り返した山内一也(やまのうち・かずや)東大名誉教授(74)がその一人だ。『70歳以上は原則選任しない』という安全委が昨年策定した方針が適用されたが、山内さんは就任時、既に70歳を過ぎており『発言が嫌われた』(関係者)との見方も。山内さんは辞任直前まで『何も(事務局から)言われない。自分が辞めるのかどうかも分からない』とこぼしていた。」


 以上、2つの事例についてはもはや解説はいらないだろう。しかし、悔しがってばかりでは現状は変わらない。どこをどうするかが問われている。
 私は今、NHKの経営委員の選任に公募・推薦制を採用するよう求める視聴者運動に参加している。しかし、これとは別に、最近、分野横断的に公職委員の選任全般を見直し、委員の選考過程に市民が参加する制度を作り上げようという運動が提起されている。次に紹介する、ComRights主催の企画で取り上げられる英国の公職任命コミッショナー制度はその先駆例として注目に値する試みである。

(参考)英国の公職任命コミッショナー制度の仕組み(下記の企画の主催者作成)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/commmissioner_for_public_appointments.pdf


英国の公職任命コミッショナー制度に学ぶ


第2弾 みんなのメディア作戦会議

公職任命コミッショナー
政官財の癒着を断ち切る秘策があった!

派遣法や郵政民営化・・・
何もかも後から失敗だったと気付く仕組みはもうごめん。
自分たちの代表を審議会委員に送りこもう

主催 ComRights
   コミュニケーションの権利を考えるメディアネットワーク

2009 年2月21日(土)14:00
立教大学池袋キャンパス8号館8201教室

問題提起  日隅一雄(弁護士・NPJ編集長)
 「政財官の癒着を断ち切る秘策・英国任命コミッショナー制度とは」


パネリスト
 青山貞一(武蔵工業大学・大学院教授)
 醍醐 聰(東京大学教授)
 中野真紀子(デモクラシーナウ! 日本代表)
 服部孝章(立教大学教授) 
 三井マリ子(女性政策研究家)


私もパネリストの末席に参加させてもらうが、日本の政治・行政システムを大きく変える可能性を秘めた(と私は思っている)この企画に多くの方々が関心が寄せていただけると幸いである。


 

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