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2009年02月09日 社説
[グアム移転協定]
住民不在の露骨な策だ
日米両政府は、新たに締結する在沖米海兵隊のグアム移転協定の中に「ロードマップ(行程表)の順守」を明記する方針だという。
ロードマップとは、二〇〇六年五月、日米安全保障協議委員会で合意された在日米軍再編に関する最終報告(「再編実施のための日米のロードマップ」)のことである。
ロードマップを「政治文書から条約と同レベルの合意に引き上げる」(外務省幹部)ことによって、ロードマップに盛り込まれた日米合意案に強い法的拘束力をもたせる、というわけだ。
なぜ今、協定を締結するのか。なぜ、「ロードマップの順守」をあえて協定に盛り込まなければならないのか。
次期衆院選を控え、政権交代の可能性が取り沙汰される中で、「選挙の結果にかかわらず、米軍再編は最終報告に盛り込まれた合意案通りに進める」との姿勢を明確にする狙いがあるのは明らかだろう。
だが、米軍普天間飛行場の移設に関する日米合意案(V字形滑走路二本案)は、一見、地元の合意を得たように見えるものの、その内実は、どさくさまぎれの押しつけというほかなく、多様な見方や読み方が可能な代物だ。
ロードマップ発表後、額賀福志郎防衛庁長官と稲嶺恵一知事(いずれも当時)は〇六年五月十一日、「在沖米軍再編に係る基本確認書」に署名した。しかし、その時点では防衛庁と県の信頼関係は失われており、確認書の解釈をめぐって、署名直後から大きな食い違いが生じた。
「知事は政府案を容認した」と主張する防衛庁に対し、稲嶺知事は、V字形滑走路案を容認したわけではない、と言い続けた。〇六年四月に沖縄タイムス社が実施した世論調査で、県民の約七割がV字形滑走路案に反対であることも明らかになった。
〇六年十二月に就任した仲井真弘多知事も、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部へのV字形滑走路案について「現行のままでは賛成できない」と明言し、頭越しの日米合意を批判してきた。沖合移動を求める知事の姿勢は今も変わっていない。
丁寧な合意形成がなされないまま、強引に、上から押しつける形で地元に示されたのが、ロードマップに盛り込まれた日米合意案なのである。
ロードマップの順守を協定に明記するということは、沖縄地元の声をローラーで敷きならすのに等しい、と言わざるを得ない。
日米合意案をまとめた守屋武昌元防衛事務次官は「沖縄の食い逃げは許さない」というのが口癖だった。県政不信の土壌の上に築かれたのが現行案だ。
不信の土壌の上に、「アメとムチ」の交付金をつくり、さらにロードマップの順守を衆院選前に協定化する―それが「沖縄の負担軽減」のための政策といえるのだろうか。
普天間問題のそもそもの出発点は普天間飛行場の危険性除去である。その具体策も示さないまま、ロードマップ順守の協定を「駆け込み締結」するのは納得できない。
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