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http://mainichi.jp/select/science/news/20090111ddm003040126000c.html
クローズアップ2009:静岡・浜岡原発の廃炉・新設 リスクより経済性
◇東海地震の想定震源域 CO2削減目標、最優先
中部電力が浜岡原子力発電所1、2号機(静岡県御前崎市、沸騰水型軽水炉)の廃炉と敷地内での6号機新設を決めた。浜岡原発は東海地震の想定震源域にあり、適地なのかという疑問が残る中での計画だ。地球温暖化防止とエネルギー安定供給のため原子力発電を重要視する国は、浜岡と同様に古い他の原発に廃炉の流れが広がることを警戒する。
「原子力発電の比率を早く向上させたかった」。中部電力の三田敏雄社長は、6号機新設を決断した理由をこう説明した。
中部電力の発電量に占める原子力の比率は18%(07年度)で、原発を保有する電力9社の中で2番目に低い。発電電力当たりの二酸化炭素(CO2)排出量(排出原単位)について90年度比20%減という目標を掲げる中部電力としては、発電中にCO2を出さない原発の削減は避けたい。
中部電力は過去、三重県南部で芦浜原発の建設を目指したが、県が00年に白紙撤回。01年には同県海山町(現・紀北町)でも原発誘致の住民投票で反対派が圧勝した。関西電力、北陸電力と共同で進めた石川県珠洲(すず)市での計画も03年に凍結され、新たな場所での立地は困難だ。こうした状況で浮上したのが、1、2号機の廃炉と6号機の新設だった。
1号機は76年、2号機は78年に運転を開始しており、いずれも30年以上経過している。1号機は01年の配管破断事故から、2号機も04年の定期検査から長期間休止している。今後1、2号機の耐震性を確保するには3000億円、期間にして10年以上かかる。
他方、新設する6号機は出力140万キロワット級の改良型軽水炉で、1、2号機の合計出力(138万キロワット)に匹敵する効率的な発電が期待できる。ほぼ同規模の5号機に要した新設費用は約3600億円で、6号機新設は経済的観点から最も現実的な選択だった。
東海地震の被害を争点に係争中の運転差し止め訴訟が廃炉決定の背景にあるとの指摘もある。中部電力は「1、2号機は廃炉にするため審理の必要がない」と主張、影響が3〜5号機にも及ぶことを防ぐ構えとみられる。
廃棄物の処理という廃炉の課題は未解決だ。浜岡の場合、1号機で24万トン、2号機で30万トンの処理が必要と中部電力は試算する。うち推定3%は「核のゴミ」と呼ばれる放射性廃棄物(1万6000トン)で、埋設場所は決まっていない。
地元の受け止め方は一様ではない。市民団体が増設反対の文書を県に提出したほか、08年11月と12月に5号機(調整運転中)がトラブルで停止したことについて隣接する掛川市の戸塚進也市長は6日、「住民が安心できるようにしてほしい」と苦言を呈した。一方、8日に御前崎市で開かれた町内会長らへの説明会では反対の声は出なかった。地震への不安の一方、新設に伴う経済効果への期待もある。【中井正裕、松久英子】
◇「古い=危険」論、国は警戒
運転開始から30年以上たつ「老朽原発」は浜岡1、2号機を含め全国に17基ある。市民団体「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」の小山英之代表は「原発の寿命はもともと30年とされ、各地の原発で老朽化の兆候が表れ始めている。浜岡の廃炉は反対運動の後押しになる」と期待を寄せる。
一方、地球温暖化対策を迫られ、原発を重要視する国は警戒感を隠さない。「古い原発=危険」という考え方が広がれば、他の原発にも波紋が広がり、エネルギー安定供給の青写真にも影響が出かねないからだ。
国は78年、原発の耐震指針を初めて定め、より厳しい新指針を06年に作った。経済産業省は「浜岡1・2号機の廃炉は中部電力独自の判断」とし、「補強工事をすれば新指針にも合格していただろう」とみている。
内閣府原子力委員会の近藤駿介委員長も6日、記者団に「世の中が建て替えモードにならないか心配」と話した。浜岡にならって、古い原発は廃炉にし、その代わりに新原発を建設するというなら、原発の発電総量はそれほど増えない。古い原発はなるべく長く使いたいのが国の立場だ。
新設に時間がかかることも理由の一つだ。青森県で08年5月に着工した電源開発大間原発は、計画公表から着工までに32年を要している。
他の電力会社の幹部も廃炉には慎重だ。
運転開始から38年が経過した美浜原発1号機(福井県美浜町)を管理する関西電力の森詳介社長は「CO2排出量も少ないし、簡単に止めるわけにはいかない」と話した。九州電力は「建て替えるとしても第3の候補地を探さなければならない」と苦慮する。
原子力資料情報室の沢井正子さんは「原発新設ができないため、老朽施設の寿命を無理やり延ばしてきた原発行政の限界が露呈した」と批判している。【山田大輔】
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◆運転開始から30年以上経過した原発◆
運転開始 出力(万キロワット)
日本原電・敦賀(1) (福井県)70年 3月 35.7
関西電力・美浜(1) (福井県)70年11月 34
東京電力・福島第1(1)(福島県)71年 3月 46
関西電力・美浜(2) (福井県)72年 7月 50
中国電力・島根(1) (島根県)74年 3月 46
東京電力・福島第1(2)(福島県)74年 7月 78.4
関西電力・高浜(1) (福井県)74年11月 82.6
九州電力・玄海(1) (佐賀県)75年10月 55.9
関西電力・高浜(2) (福井県)75年11月 82.6
中部電力・浜岡(1) (静岡県)76年 3月 54
東京電力・福島第1(3)(福島県)76年 3月 78.4
関西電力・美浜(3) (福井県)76年12月 82.6
四国電力・伊方(1) (愛媛県)77年 9月 56.6
東京電力・福島第1(5)(福島県)78年 4月 78.4
東京電力・福島第1(4)(福島県)78年10月 78.4
日本原電・東海第2 (茨城県)78年11月 110
中部電力・浜岡(2) (静岡県)78年11月 84
※()数字は号機
毎日新聞 2009年1月11日 東京朝刊
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