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手厚いセーフティーネットが強い国を作る 中産階級が実感できる公共サービスを提供せよ(この国のゆくえ)2009年1月8日 木曜日 篠原 匡
「官から民へ」。この言葉が金科玉条のごとく唱えられていた小泉政権下、構造改革のバックボーンである新自由主義的経済学を批判し続けた東京大学の神野直彦教授。その著書『人間回復の経済学』では、人間を「利己心に支配された経済人」と捉える新自由主義に対して、「人間の行動基準は利己心ではなく夢と希望」と断言した。
規制緩和による競争促進、公営企業の民営化、公共サービスの縮小――。この10年、日本は経済成長を実現するために、小さな政府を目指す数々の改革を実行してきた。だが、未曾有の金融危機に見舞われて以降、私たちの足元は急速に揺らいでいる。
公的年金への不信は極限に達した。医療を支える医師不足も深刻の度を増している。「派遣切り」や「内定取り消し」も頻発、雇用を巡る環境の悪化は急速に進む。針路なき日本。今こそ、国家の在り方や社会のあるべき姿をわれわれ一人ひとりが考えるべき時ではないだろうか。セーフティーネットの重要性を説き続けてきた硬骨の士に聞いた。
―― 小泉政権以降、「小さな政府」を目指す構造改革が進行しました。ただ、その代償として、派遣切りや医師不足など、社会に綻びも見え始めています。世界恐慌が眼前に迫る今、日本はどんな国を目指すべきなのか、お考えをお聞かせいただけますか。
神野 経済学には「再分配のパラドクス」という言葉があります。
生活保護のように、貧しい人々に限定して現金を給付すれば、貧困や格差が少なくなるように見える。でも、現実には、病気や介護、子育てなど貧富に関係なく広く、手厚く保障する方が格差は縮小し、貧困が減少する。垂直的分配ではなく、水平的分配の方が貧困は減る――。このことを、再分配のパラドクスと言います。
前者のように貧しい人に限定して再分配しよう、と考えている国は米国や英国です。米国や英国の生活保護費は世界で最も多い。常に、この2カ国でトップ争いをしている。それに対して、高福祉で知られるスカンジナビア諸国は生活保護をあまり出していません。
セーフティーネットが人間の知的能力を高める
スウェーデンでは医療サービスは基本的にタダ。教育サービスや介護サービスも無料です。そのため、家族が病気になった、子供が学校に通いだした、親に介護が必要になった、と言っても生活保護費を増やす必要がない。その人が口にする物と身にまとう物だけのお金を給付すれば済むわけです。
―― ほかのセーフティーネットが厚いため、
生活保護費を増やす必要がないということですね。
神野 そうです。いろいろなネットに引っかかるため、ラストリゾートとしての生活保護が結果として少ない。ところが、セーフティーネットが少ない日本や米国では、貧しい人が直接、ラストリゾートに落ちてきてしまう。しかも、その生活保護で国民年金保険料や医療費を払わなければならない。これでは、格差はなくなりませんよね。
セーフティーネットの重要性は福祉に限った話ではありません。
スカンジナビア諸国は1990年代後半に高成長を実現しました。これは、セーフティーネットが経済成長を阻害するものではないということを示しています。それに、今後、先進国は従来の重化学工業から自然資源を乱費しない知識集約型産業にシフトしていかなければならない。
この知識集約型産業では人間の能力がすべて。セーフティーネットが幾重にも張られていれば、人々は安心して冒険することができる。逆に、最低限の安心がなければ、人は何かに挑戦し、知的能力を高めようとはしませんよね。セーフティーネットを張り巡らせる方が、逆に経済成長すると私は見ています。
しかも、そのネットはトランポリンでなければならない。
自発的な勉強サークルが危機を救った
―― トランポリンですか。
神野 セーフティーネットは落ちても死なないために整備するもの。でも、スウェーデンではそのネットを就労に結びつけている。つまり、「働くための福祉」。失業しても、再教育、再訓練して働けるような福祉を提供していく。私はこのことを「シュンペーター的ワークフェア」と呼んでいます。ワークフェアというのは、就労(ワーク)と福祉(ウェルフェア)の造語ですね。
能力開発型の福祉になると、人間の能力を高めて生産性の向上や技術革新を実現し、国際競争力を高めよう、という発想になる。訓練によって衰退産業から成長産業へ移そう、という考え方ですね。
それに対して、日本の場合は国際競争力を高めようとする場合、賃金を下げる、という発想になってしまう。人的投資を考えていないということですよね。
―― 1990年代初頭、金融危機によってスウェーデンは破綻寸前に陥りました。その後、銀行の国有化などを断行、1990年代後半には奇跡の復活を遂げました。この復活にも教育の力が大きな役割を果たしたそうですね。
神野 スウェーデンは危機の1990年代を通して、重化学工業から知識集約的なIT(情報技術)産業に産業構造を替えました。その時に、大きな役割を果たしたのは国民の自発的な学習サークルと国の職業訓練支援でした。
スウェーデンは19世紀末の大不況の時に極貧を味わいました。貧しさに耐えかねて、国民の3分の1が米国に移住してしまったほどの大不況でした。この時、スウェーデンの人々はお互いに勉強し合って、人間の能力を高めて、不況を乗り切っていこう、という国民教育運動を始めました。勉強のためのクラブ活動ですね。壁塗りや織物教室など中身はいろいろなものがありますが、1990年代には情報処理などのサークルが増えた。これが、産業構造の転換を促したことは確かでしょう。
職業訓練中の生活は政府が保証する
―― 自発的な勉強会が職業訓練の場になっていたということですか。
神野 そうですね。そして、もう1つ職業訓練支援があります。例えば、失業すると職業紹介所に行きますよね。自分は旋盤工だったけど、これからの時代は旋盤工よりもIT系の方が産業としては有望――。そう言われて、IT関連の会社を紹介されたとしましょう。
その後、面接で採用されると、6カ月だけ試験的に雇用される。その際、当時は75%の賃金を政府が出していた。余談だけど、これが経済協力開発機構(OECD)とのもめ事になっている。OECDはこの人たちを失業者と捉えているが、スウェーデンは政府が賃金を払っているだけで失業者ではない、と主張している。そのため、OECDの統計を見ると、OECD基準とスウェーデン政府の言い分の両方を載せている。
まあ、それはいいとして、6カ月後に「やはり雇用できない」と雇用を断られたとしましょう。その際、企業は「どういう能力が足りないか」「どんな能力を身につければ雇用するか」を指摘する。失業者はその指摘を受けて、職業訓練を望む人は成人高等学校で職業訓練を受ける。
―― 足りない能力を補うわけですね。
神野 そうです。先ほど申し上げた通り、教育費はもともとタダ。そのうえで、職業訓練を受けている間の生活費は職業訓練手当という形で政府が保証してくれる。さらに、自分でステップアップするために学校で勉強し直す場合。この場合、訓練手当は出ませんが、出世払いで生活費を貸してくれる。こういうセーフティーネットによって、人間の能力を高めているわけですね。
雇用と社会保障の両方とも放棄する日本企業
―― お話を聞いていると、最低限の保障ではなく、何重にもセーフティーネットを張り巡らした社会の方が結果として優れている。そういう社会に日本も変えるべきだと…。
神野 僕はそう思いますね。
―― スウェーデンに関して言うと、あの国は結構、簡単に労働者を解雇しますよね。それも、セーフティーネットがあるからこそなんでしょうか。
神野 オランダもそうだけど、スウェーデンは労働市場が弾力的です。簡単に言ってしまえば、解雇がしやすい。もっとも、解雇はしやすいんだけど、その代わり、社会保障を企業が引き受ける。労働市場のフレキシビリティーは企業による社会保障とセットになっている。
それに対して日本はどうか。日本企業は景気が悪くなると、雇用と社会保障の両方とも放棄してしまう。これが困るんだよね。1990年代、企業はフレキシビリティーのために非正規従業員と言われている人々を生み出してきた。でも、現実にはその人々は社会保障の蚊帳の外に置かれている。
―― 労働組合も非正規のためには動きませんしね。
神野 正規従業員は年功序列の生活給が基本ですよね。でも、非正規やパート従業員の待遇改善を企業別労働組合はやらない。社会保障も正規従業員だけをカバーしている。非正規の場合には、厚生年金でも通常の労働者の4分の3時間以上という条件をつけているから、実情はネットから外れてしまう。
一方、スウェーデンは職種別組合です。職種別組合が日本経済団体連合会(経団連)に当たるところとやり合って賃金を決める。その賃金はパートだろうが何だろうが、すべてに適用される。しかも、その賃金は仕事が同じである限り、伸びません。だから、再訓練を受けて能力を高めようとする。能力を高めなければ、賃金は増えない仕組みになっているんですよ。だから、国や社会で教育に取り組んでいる。
企業頼み、家庭頼みの社会保障は崩れている
―― 「同一労働同一賃金」は理想ですが、日本とスウェーデンでは組合の成り立ち1つを取っても違います。すぐには変えられないのではないでしょうか。
神野 …というか、そもそも日本的な企業が崩壊しているんだからさ。これまでの重化学工業時代には、企業は熟練工を抱え込む必要があった。生活給が成立していたのはそのためでしょう。でも、これからは産業構造が変わる。変えなければならないわけですよ。
「日本は無理ですよね」って簡単に言うけど、雇用関係や労働市場は変わっていくよ。それから家族も変わるよ。
重化学工業の時代には筋肉労働する男性だけが働きに行って、女性が家庭内でアンペイドワークをしていた。でも、今後サービス産業が増えれば、女性も働きに出て行くようになるから家庭にいなくなる。日本のように、セーフティーネットを外してしまうと、家族が成立しなくなる。つまり、日本は企業頼み、家族頼みで生活保障をしていたけど、それが両方とも崩れるんだよ。
今のようなクライシスの時代にはセーフティーネットがあり、そのネットをトランポリンにしているスウェーデンのような国の方が絶対に強い。この世界恐慌は1つの時代の終わり。米国を中心とした世界経済は最終的に崩壊する。これは、米国を中心とした世界経済秩序を支えていた重化学工業という産業構造が崩壊していくということでもある。1929年の世界恐慌を見ても、次の世界経済秩序が出来上がるまでに10年以上の歳月がかかるんです。
この10年、かじを切り間違えると大悲劇が
あの時、米国はニューディール政策を採って内向きになった。当時新興国だった日独伊の3国はファシズムに走り、ロシアは社会計画経済をやっていた。世界が内向きになる中で、新しい世界経済秩序を作るのに失敗し、第2次世界大戦という悲劇につながった。そして、第2次大戦後、米国が絶対的な経済力と軍事力を手にして、米国を中心としたブレトン・ウッズ体制が出来上がっていった。
歴史の教訓に学んでいけば、今は新しい世界経済秩序を構築するための重要な時期なんですよ。米国のオバマ次期大統領は国際均衡よりも国内均衡を重視する政策を明確に打ち出しますよね。世界を見ても、アフリカのコンゴでは惨殺をやっているわ、中近東では火花が散っているわ、反米色の強い中南米などは金融危機が起きて「万歳」と叫んでいるわ、皆内向きになっています。
そして、今の新興国はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だからね。このBRICs、中国もロシアも国民国家でなくて“帝国”ですよね、言い方は悪いけど。しかも、どこも国内に紛争の種を抱えている。こういう各国の国内均衡とバランスの取れた国際均衡を実現しなければならない。それが、両立できるかどうか、歴史的な岐路に立っている。日本をはじめとした世界は10年ぐらい暗く辛い時期を過ごさなければならないでしょう。この間にかじを切り間違えれば、大悲劇が待っている。
―― 下手をしたら、過去の二の舞いですね。
過剰資金の行き着く先
神野 とりもなおさず、当時私たちは産業構造を大きく変えなければならない時期にありました。第2次大戦後、重化学工業によって大量生産、大量消費を可能にした。そして、その果実を再分配しながら福祉国家を築いて、貧困を解消し、経済成長を手にしていった。
ところが、新しい経済構造があまりにも資源浪費型だったので行き詰まった。それが、1973年の石油危機とその後のスタグフレーションでした。資源を浪費すれば資源価格は上昇しますよ。その代わり、行き詰まった経済は成長しません。ケインズ経済学では想定できなかったような、不況とインフレが同時併存する事態が起きてしまったんです。
スタグフレーションが発生したということは、国際的な過剰資金が形成されるということです。オイルマネーを考えてみればいいでしょう。片方で資源価格が上がっているんだから過剰資金が生まれる。しかし、経済が行き詰まっているから、投資先がない。マネーがだぶつきます。これが、よせばいいのに、あちこちでバブルを起こした。
まず、マネーは中南米に行って、1980年代に“失われた10年”が訪れた。その次にマネーは日本に来た。産業構造を変える投資をすればよかったものを、ストックを買って不動産バブルを引き起こした。そして、日本の1990年代が失われた10年になった。マネーは今度はどこに行ったか。中国とインドです。
ここでは、ストック買いではなかったけど、あろうことか第2次大戦後に世界の国々がやった重化学工業と大量生産、大量消費の産業に走らせたわけでしょう。自然資源をなるべく使わないような産業構造を起こせばいいのに。確かに、経済は伸びるけど、行き詰まることは見えているわけですよ。
―― 日本はこれから何をすべきなのでしょう。
神野 まず、自然資源を浪費しないような産業構造に転換する。そして、その上にケインズ的福祉国家に代わるシュンペーター的ワークフェア国家を構築し、地域や世界と共生できるシステムを作り上げる。これからの10年は、そのシステムを作り上げる10年なんだ。これは、大変だよ。1つ間違えれば、とにかく破局よ。
「サービスを減らせば増税に応じる」という国民の不可解
―― シュンペーター的ワークフェア国家は様々なセーフティーネットを張り巡らし、福祉を就労に結びつけていく国家。それによって、国民一人ひとりの能力を高めていく国家ですよね。当然ですが、国民負担は増えますが、それについてはどうお考えですか。
神野 福祉や医療、教育のことをソーシャルサービスと言いますが、スウェーデン語では「オムソーリ」と言うんですね。これは、「悲しみの分かち合い」という意味です。スウェーデン人が税を納めるのは悲しみを分かち合うため。悲しみを分かち合うことがウェルフェア(幸福)につながると考えている。
もちろん、国民負担は上げなくちゃいけないけど、税負担が上がっても、安心できるセーフティーネットが構築できれば、全体としてはいい。好循環で回っていくリズムが生み出せれば、そんなに恐れることはありませんよ。
―― 国と国民の信頼関係が失われている日本は悪循環に陥っていますね。
神野 正直なところ、今の国民が言っていることはよく分からない。メディアを含めて、「増税をするなら歳出を削減しろ」と言う。普通、公共サービスは国民の生活を支えるのに必要なものでしょう。そう考えると、多くの人は「必要な公共サービスを減らしてくれれば、負担増に応じる」と言っていることになる。
―― …まあ、そういうことになりますね。
神野 それからさ、「財政再建のための増税に応じる」と言う人も多い。財政再建なんだから、サービスは増えませんよね。つまり、「サービスが減るか、同じだったら負担増に応じてもいいけど、サービスを増やすのは嫌だ」と言っていることになる。こういう考え方は普通あり得ない(笑)。どうなっているのか分からない。端的に言ってしまえば、民主主義が機能していない。
―― なぜ、国民は論理的に考えることができないのでしょう?
神野 分からない。ただ、スウェーデンのケースから考えられるのは、公共サービスが中産階級の生活を支えているかどうか、それが国民が納得できるかどうかのポイントなんだと思う。
国民の多くが公共サービスを体感していない
政府を信用していないのは何も日本だけの話ではありません。スウェーデン人も政府を信用していないし、非効率だと思っている。ただ、「あなたは医療を充実させるために、増税に応じますか」と聞くと、「イエス」と皆が答える。「保育を充実させるために増税に応じますか」という質問に対しても「イエス」。養老サービスもイエスなんです。
ただし、「ノー」と答える場合が2つある。それは、生活保護と住宅手当。簡単に言ってしまえば、貧しい人に限定されるサービスに税金を使うのはスウェーデン人もノーなんだよ。つまり、増税に応じるか否かは、それによって行われる福祉というサービスが中産階級を支えるかどうか。日本はサービスが中産階級を支えないから増税に応じない。
―― 要するに、多くの国民が公共サービスを
サービスとして感じていないということですね。
神野 この間、うちの大学が総力を挙げて納税意識調査をやったんだ。「あなたは高福祉であれば負担が高くても応じますか。それとも、税金が安ければ、低福祉でもいいと考えますか」という問いに対して、回答者の6割は「福祉がよければ負担が高くても構わない」と答えている。この率は、年々増えているんですよ。
ただ、中身を見てみると、やっぱり訳の分からないことになっている。男女別に見ると、男性は7割が高福祉高負担に賛成。でも、女性がダメなんだよ。女性は福祉の恩恵に浴するはずなのに、低福祉低負担を望む率が半分。それで、平均すると6割になる。
危機を前にどうでもいいことばかり議論している日本
もう1つ分からないのは、1000万円以上を高額所得者と区切って分類しているんだけど、所得が高くなればなるほど高福祉高負担に賛成、逆に低くなればなるほど低福祉低負担に賛成となる。この結果を見ると、どうなっているんだ、この国は、と思わざるを得ない。もう訳が分からない。
―― サービスの実感を持っていない。
だから、負担増ということに過剰に反応してしまう。
神野 持ってないからだろうね。何でかな。女性も実感として、公共サービスが何も生活を支えてくれない、と思っているのかな。
―― そういうことですよね。とにかく、
今は国がやらなければならないことが山ほどありますよね、本当に。
神野 どこから手を着けていいのか分からないけど、全部手を着けないとダメだよ。総合的な視野に立ってやらないと、本当にクラッシュするよ。冗談抜きに。
―― 経済面だけでなく、治安が悪くなるなど、
社会不安も増していくんでしょうか。
神野 子供の頃の同級生にある女の子がいてね。頭もいいし、美しくてね。彼女には年子の妹がいてね。これが全く同じ顔をしているんだよ、双子みたいに。まあ、どうでもいいんだけどさ。その人がたまたま実家のそばに土地が空いたから、と言って埼玉に家を買ったんだけど、この間殺されてしまった。
―― 殺された?
神野 厚生労働省の山口剛彦元次官の奥さん。もうとんでもないよ、この世の中は。すべての社会で異様な事件が起きるけど、毎日、毎日起きていれば、どこか社会が狂っていると思わないとダメだよね。こんなに異常には起こらないよ、普通。
―― 負担を嫌って、社会が荒廃したら本末転倒ですよね。
神野 この大事な時期に、政治やマスコミがろくでもないことを議論していることも問題だよ。さっきも言ったように、かじを切り間違えればクラッシュしてしまうような重要な時期に、どうでもいいというか、何というかな…。
―― 総理がホテルのバーで飲むのは良いか悪いかの議論をしていましたね。
神野 このまま真っすぐ行くと、タイタニック号が氷山にぶつかるから、「慎重にかじを切らなきゃいけない」「どの方向にかじを切ろうか」という議論をしなければならない時に、「誰だ、甲板の掃除をサボったのは!」ということを言い合っているようなものでしょう。もう危ないよ、これは。
―― ありがとうございました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090105/181859/
神野直彦(じんの・なおひこ)
1946年生まれ。69年東京大学経済学部経済学科卒業後、日産自動車に入社。同社では工場の組立作業や車のセールスなどにかかわった。81年に東京大学大学院経済学博士課程単位取得退学。大阪市立大学助教授などを歴任した後、92年に東京大学経済学部教授に。専門は財政学。著書に『人間回復の経済学』ほか
(写真:村田和聡、以下同)
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