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なぜ、企業が参加する「緊急雇用安定基金」なのか(保坂展人のどこどこ日記)
http://www.asyura2.com/09/senkyo57/msg/467.html
投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 1 月 06 日 19:03:25: mY9T/8MdR98ug
 

http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/e080e24e00f5d03c5b2311a07b6874b0

私は、今回の雇用クラッシュを非正規労働者のセーフティネットを欠落された「システム機能不全」が生んだ「政治災害」だととらえている。つまり、派遣切り・請負切りにあった人たちは「失業者」であるだけでなく、地震や火事で無一文で焼け出された人に近い「被災者」であると考える。「被災者」が行き場を失う事態であれば、緊急支援が必要である。市民やボランティアが智恵や力を出して、自治体や国が取り組んでいる状況だが、「企業の社会的責任」(貢献と言い替えてもいい)を真剣に考えてみてはどうかというのが、私の考える「緊急雇用安定基金」の構想である。今日は、その構想の走り書き的なメモを記すことにする。

緊急雇用安定基金についてのメモ      (09年1月6日)

 巨大な内部留保を抱える企業が、景気悪化を見越して「派遣」「請負」労働者をバサバサ切って捨てている異常事態である。地方自治体や国が対策に乗り出すのは当然にしても、雇用確保の企業努力を放棄した企業が涼しい顔で傍観している現状は明らかにおかしい。

 社民党の緊急雇用・医療対策本部で実施した12月下旬の「大分キヤノン調査団」は、キヤノン専務と面会して現状を強く批判し、地方自治体(大分県)に緊急雇用安定基金が創設した場合に拠出をするかどうか問うた。キヤノン側の答えは「前向きに考える」とのことで、私たちは大分県庁で副知事と会い、さらに記者会見をして経緯を説明した。刻々と悪化する事態の中で、年末の12月29日には河村官房長官に政府としてもサポートするように要請した。

 私たち調査団は、すでに下請け会社から解雇された労働者たちと話をした。彼らは、1月下旬まで暫定的に寮に住むことは許されているものの、収入も途絶えて所持金もなくなり、このまま寮を追われると「難民化」してしまうという事態がある。緊急支援を市民や行政が行うにしても限界があり、主原因をつくった企業が一定の資金を自治体が管轄する緊急雇用安定基金に拠出して、住居の確保と雇用支援に使うことは当然ではないかと考えた。

 企業の支出する拠出金の目安は、失業した「労働者の賃金×半年分×人数」をひとつの目安にするということでどうだろうか。たぶん大分キヤノンの場合は、 10億円を超えることになるだろう。大分県が、税金を注ぎ込んで一工場だけで補助金50億円で誘致したことを考えると、相応の金額でなければならない。同時に、企業が安易に非正規労働者を解雇しないための「雇用継続圧力」に相当する金額でないと意味がない。

議論をしていくと、この事態で企業に「基金拠出」を認めることは、「金を出せば解雇出来る」ということを追認することにならないかという指摘が出てくる。もっともだが、それならどうすればいいのか。「解雇撤回」「原状復帰」と言っても、「そもそも下請け企業に外注しているだけだから雇用していないんですよ。雇用していないのに解雇撤回は無理ですね」と言われてしまう。

同種の議論に、「派遣労働者の権利確立を要求するということは、派遣労働者を認めることになり、同一労働・同一賃金原則から逸脱した雇用環境を追認することになる」という考え方がある。労働組合を経験した80歳の老先輩が私の雇用状況の報告を聞いて言った。「どうして、一時休業などの努力を企業はしないのか」という疑問である。

この10年で、雇用環境は激変した。労働組合に守られている正社員の待遇並びに賃金水準と、同じ工場で働く期間工・派遣・請負労働者たちのそれとは、身分制社会のように分裂していった。私たちの問題にしている大量首切りの当事者たちは、
「直接雇用」の枠外に置かれている人たちが大半である。だから、地域で「暮らしと住まい」を被災者支援的に受け止める必要があると私は言いたい。

企業の参加を求めずにやるべき、国や自治体の仕事だ……ということにはならないだろう。火事で燃えている現場で、とっさに水をかけて消火して、被災者を保護するというのが緊急避難措置だ。近所の人も、自治体も、国も、企業も、労働組合も、みんなでやるべきだろう。

 それでは、緊急雇用安定基金の使途はどうなのか。すでに、私たちが調査に入ってた大分県の場合には短期間の直接雇用に踏み切った自治体がいくつかあるが、その期間を基金の支援を得て更に延長する。たとえば1か月を半年にという具合いにだ。

さらに、学校の校舎での耐震補強工事、下水道・ガス菅の交換、山林整備などの公共投資にあてる。この場合、製造業で失業した人の雇用枠を設けるだけではなく、景気後退で倒産寸前の中小の工務店などの救済にもつながる。生活に身近かな「いのちとみどりの公共投資」である。

また、今後は製造業などで減産・工場閉鎖などの事態にあたって、一定の期間雇用を維持しながら、工場の外へ出て「いのちとみどりの公共投資」にあたることの出来る制度をつくるることで安易な解雇を防止する。こうして雇用継続にあたる企業に対しては、雇用保険の雇用調整助成金をあてる。

また地場産業や、環境のための自然エネルギー事業や、農園などに仕事を覚えながら就労した労働者に対して、この基金から賃金の40〜50%を支払うことで1年間の雇用を確保するということも考えてもいい。

今回の世界同時不況が従来の循環型の不況とは異なるのであれば、思い切って雇用のシフトを生んでいくような「呼び水」的効果を考えてもいい。もちろん、緊急基金の役割は短期的なものであり、すぐに実行可能なことを中心とするべきで、中長期的なプランとは異なる面もある。しかし、密接にリンクしていてこそ「雇用破壊からの避難」から「雇用創出への一歩」に転換していけるのではないだろうか。

 

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