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2009年1月 6日 (火)
「泥船」脱出の先陣を切った渡辺喜美議員
11月20日に「麻生政権の致命傷になる補正予算案提出先送り」の記事を掲載した。その後、民主党の小沢一郎代表が党首会談を申し入れ、11月28日には党首討論が実施された。小沢代表は、「麻生首相は景気対策のスピードが大事だと言って解散・総選挙を先送りしたのだから、補正予算案を臨時国会に提出すべきだ」と迫った。麻生首相は小沢代表の要求を拒絶したが、明確な理由を示せなかった。
中国の古典『韓非子(韓非子)』に次の逸話(いつわ)がある。「どんな盾(たて)も突き抜く矛(ほこ)」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた男が、客から「その矛でその盾を突いたらどうなる」と問われて答えられなかった。「矛盾」という言葉はこれに由来している。
「年末の資金繰りが大切で景気対策のポイントはスピード」と明言した10月30日の記者会見と、「11月、12月を空費して、2009年の1月になって補正予算案を国会に提出する政策サボタージュ」は、同一人物の言動として説明のつけようがない。ひとつの決定的な「矛盾」が全体を崩壊させる原動力になる。
日比谷の「年越し派遣村」。湯浅誠氏を中心とする市民団体、労働組合の行動力が偉大な変化の契機を生み出した。派遣切りの被害に直面して、底冷えのする年末に仕事と住居を失った国民が派遣村で生存権を確保した。多数の被災者を救出したのは政府ではなかった。民間のボランティア活動が被災者を救出したのだ。
日比谷公園と目と鼻の先の国会議事堂では自民党議員が晴れ着で記念撮影をする映像がニュースで伝えられた。自民党国会議員である坂本哲志総務政務官は「年越し派遣村」について、「本当にまじめに働こうとしている人が集まっているのか」と批判した。
国民が生存権を脅かされて苦しんでいるのに、政府の行動は致命的に遅れた。そのうえでの派遣切り被災者や支援者を冒涜(ぼうとく)する発言は、麻生政権の雇用問題に対する基本姿勢を端的に示すものだ。晴れ着で正月気分を楽しもうとする麻生政権にとって、「年越し派遣村」は目障りな存在でしかないのだろう。
1月5日に召集された通常国会では、2008年度第二次補正予算と2009年度当初予算が当面の争点になる。野党は国民の8割が評価していない「定額給付金」を補正予算案から切り離して、補正予算の早期成立を図るべきだと主張している。
「カナダde日本語」の美爾依さんが紹介してくださっているが、民主党の菅直人代表代行は、「2兆円あれば、100万人の失業者に月17万円ずつ1年間支給しても賄える」と指摘している。菅代表代行は「定額給付金を補正予算案から切り離し、雇用・景気対策を急いで実現させるよう、通常国会で麻生太郎首相に迫っていきたい」と述べた。
日本の財政収支が悪化していることはよく知られている。財政状況が悪化していることを理由に麻生首相は消費税増税を主張し始めた。不況が深刻化している局面で消費税大増税を唱える麻生首相のKYな感覚は、麻生氏が首相の任務を遂行する能力を失っていることを物語っているが、いずれにせよ、日本の財政に無駄遣いをする余裕はない。
2兆円の財源を投入して定額給付金を全国民にばら撒く積極的な理由は存在しない。「総選挙に向けての買収工作」というのが的確な表現だろうが、財政資金を買収資金に使われてはたまらない。
急激な景気悪化が日本経済を襲い、多くの国民が悲惨な状況に追い込まれている。甚大(じんだい)な自然災害に見舞われて多数の被災者が発生すれば、政府は被災者の支援に全力をあげるだろう。
小泉竹中政治の「市場原理主義」経済政策が「派遣切り被災者」を大量発生させる原因を生み出した。「年越し派遣村」に見られる不当解雇に直面した派遣労働者の惨状は「市場原理主義者」の間違った政策によって生み出された「人災」である。
限られた財政資金を、もっとも重要な支出対象に集中して投入することが、正しい政策対応である。「政局」を除外して「政治が全身全霊を注いで最善を尽くす」ことを基本に据えるならば、政治の対応についての答えはおのずと明らかになる。
補正予算案から「定額給付金」を切り離し、補正予算ならびに本予算の早期成立を実現させることが正しい対応である。
11月28日の党首討論後の世論調査で麻生内閣の支持率が暴落し、首相にふさわしい人物として小沢代表を支持する世論が麻生首相を大きく上回る変化が生じたのは、小沢氏の主張に「理」があるからだ。麻生氏の言動には深刻な「矛盾」があった。
「理」に支えられた主張を「政局」と呼ばない。野党が「定額給付金」を補正予算案から切り離すべきだと主張して、補正予算審議が紛糾しても、国民の批判は野党には向かわない。野党の主張は「大義」に支えられているからだ。
麻生首相が「矛盾」を抱えたまま、国会運営を強行すればするほど、麻生内閣の支持率は下がる。政治は麻生首相の「私物」ではない。政治の主権者は「国民」である。「国民」の8割が「定額給付金」を望ましくない政策だと評価し、同時に、補正予算の早期成立を求めている現実を踏まえれば、定額給付金を補正予算から切り離し、補正予算および本予算の早期成立に全力を注ぐほかに、選択する道はない。
世の中には「理」に適(かな)わないこと、「不条理」、「理不尽」が無数に存在する。「理」に適わないことがしばしば起こる。私も「不条理」、「理不尽」に直面してきたから、よく知っている。
しかし、国民が監視する政治の世界では「理」に適わないことは長続きしない。安倍晋三元首相が2007年7月の参議院選挙で「政権選択」を明言して惨敗したのに首相の座に居座ろうとした。しかし、長く首相の座に居座ることはできなかった。
「理」に合わない行動をしてしまったら、引き返すしかない。山道を歩いて「けものみち」に迷い込んだら、引き返すしかない。「引き返す勇気を持つこと」が命を守る。道に迷ったことを自覚しながら、「けものみち」を突き進むのは自殺行為である。「引き返す選択」を妨げるのは「面子(めんつ)」である。
麻生首相が「命」をつなぐには、「定額給付金」を補正予算から切り離し、補正予算と本予算の早期成立に全力を注ぐ以外に道はない。「矛盾」を押し通せば、「矛盾」は拡大するばかりだ。麻生首相が「面子」を乗り越えるぎりぎりの「器量」を持つのか、注目される。
補正予算の執行には関連法案の成立が必要である。野党が反対する関連法案を成立させるには、衆議院での3分の2以上での再可決が必要になる。与党議員から17名の造反が生まれると再可決はできず、法案は廃案になる。
渡辺喜美氏の離党宣言は、泥船からの脱出行動である。麻生丸が矛盾を抱えたまま荒海を突き進めば、多数の与党議員が次期総選挙で落選する。その意味で渡辺氏は「機を見るに敏」だ。このまま進めば造反議員は確実に17名を超えるだろう。そのとき、麻生首相は「理」を伴わない「自暴自棄(じぼうじき)解散」を決断するだろう。
麻生首相が「政治は国民のために存在する」基本をおろそかにして「政局」だけを追求し続けるなら、「麻生丸」の難破は時間の問題だ。「泥船」から脱出する「造反者」が急増するのは確実な情勢だ。
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