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『建築家が眺望するニッポン』−文化から見る日本人の底力−2008.04.20.
メールマガジン『まぐまぐ』http://archive.mag2.com/0000150178/index.html
今、日本に賃金のカットと解雇の嵐が吹き荒れています。
自分の会社で人員整理をしておきながら、経営者の本音は自分の会社以外の企業は賃金カットも派遣社員や契約社員の整理もして欲しくない、というものではないでしょうか。
日本全体の労働者の購買力が落ちれば自社製品が売れなくなるからです。
サブプライム問題が現在の日本の不況の主要な原因になっていることは間違いありません。
しかしそれだけではなく、日本がイザナギ景気以来の長期好況にあったとき、労働力を正規社員から派遣や契約社員に切り下げて、賃金を低く抑えてきた結果が、今の内需不振の原因になっていることも事実ではないでしょうか。
今の若い人たち、とりわけネットウヨクといわれているような人たちが、政治の分野で最も嫌っているのは、理由は全く分かりませんが、旧社会党と連合の流れを汲む勢力です。
しかし、全国の労働者が社会党、民主党、共産党の下に結集し、賃上げ闘争などで充分な力を持っていたころ、労働者の購買力も増し、内需も拡大して経済は健全な状態を保っていました。
このことを考えるとき、私は進化論の一節を思い出します。
例えばライオンとウサギがいたとします。ライオンはウサギを捕らえることができるように足が太く進化しました。ウサギはライオンから逃げ切れるようにやはり足が太く進化しました。
ライオンとウサギを個別に見れば、両者は争っているように見えます。
しかしここに生態系という概念を持ち込んで、ライオンとウサギ両者の関係を見ると、それぞれの個体数をちょうどいい数に保つように、競争を通して調整していることが分かります。
一頭のライオンだけの足が太くなればそのライオンは大きな恩恵を受けますが、すべてのライオンの足が太くなると、ライオンはウサギを食べつくしてしまい、結局ライオンも全滅してしまうからです。逆にウサギの足が速くなってすべてのウサギが逃げ切れるようになっても、ライオンは飢えて全滅し、増えすぎたウサギは草を食い尽くしてやはり全滅してしまいます。生態系という大きな世界で見れば、ライオンとウサギは戦っているように見えて、結果として助け合っているのです。
会社も同様で全国で1社だけが賃金の抑制に成功したとすれば大きな利益を生むことができます。しかし、すべての会社の賃金が下がれば購買力が失われ、すべての会社は危機に襲われます。逆に労働組合が強くなりすぎると会社は倒産し、労働者は路頭に迷うことになってしまいます。
海外の安い労働力に対抗するという意味もあったのでしょうが、小泉内閣は派遣業などの規制を撤廃し、企業が正社員を派遣社員や契約社員、パートやアルバイトにシフト変えする後押しをしました。それによって企業は空前の利益を上げましたが、利益を労働者に還元することを怠り、賃金は低いままで抑えられました。
そういう時労働者の権利を守ってきた社会党も民主党も今はありません。。若者の労働運動に対する反発などもあり(何らかの世論操作があったのではないかと疑ってしまいます)労働組合は弱体化し、解体されてほとんどの組合は会社の御用組合に成り下がりました。
かくして一時的な経営者の春(独壇場)が訪れたのです。前のたとえでいえばライオンがウサギに完膚なきまでに勝ってしまったわけです。
そんなときサブプライム問題でアメリカの購買力の低下と円高で、外需が激減しました。外需がダメなら内需に頼るしかありませんが、その内需は経営者が賃金を極限まで削り、労働者を解雇し続けてきたことで、すでに瀕死の状態になっていたのです。
結局経営者側が利益のみを追い求めて労働組合を骨抜きにし、労働者を追い詰めた結果、自らの首を絞めることになったわけです。
私は、賃金を海外並(主にアジア諸国)に落とすことで、海外と同じ土俵で競っても日本に未来はないように思います。
日本は、日本にしか作ることができないものをこそ作るべきです。それらはたとえ多少高価であっても、円高になっても、あるいは高い関税を掛けられても売れるでしょう。ほかでは作れないのですから・・・。このメールマガジンで何度も述べてきたように日本にはその潜在能力が充分にあります。
労働組合が嫌いなはずの若い人たちが「蟹工船」を読み、ここに来て新たに労働組合を結成する今までなかった動きも見え始めています。
ここ数年とは逆の、つまり質の高い労働力が高い賃金を生み、その高い賃金に支えられた厳しい目を持った消費者がより高度な製品を求め、それに答えるべく鍛えられて、労働者の技術がさらに高まる、という正のスパイラルを作り出す絶好のチャンスなのではないでしょうか。
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