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[希望のトポス]「CDS金融時限爆弾」と「米SEC&経団連の腐敗」が予兆する「市民・理性ルネサンス」への期待
<注記0>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20090102
【プロローグ/画像】映画『グッド・シェパード』(The Good Shepherd/良き羊飼い)・・・フランス公開時のタイトルは『国家の理性』(Raison d'Etat)
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・・・公式(DVD)HPはコチラ→http://www.universalpictures.jp/sp/goodshepherd/
「ピッグス湾事件」(Bay of Pigs Invasion/1961年/参照、http://www.maedafamily.com/kanren/pigsbay.htm)によってCIAは窮地に追い込まれ、作戦の指揮を執った幹部諜報員エドワード・ウィルソンにも疑いの目が及ぶ。そんな中、彼の元に一本のテープと写真が送られてくる。・・・現在と過去(英・戦略事務局(OSS)の指導を受けたCIA創設期(そのCIA創設期のカルト集団的な空間)を往還するシーンを繰り返しつつ、映画『グッド・シェパード』は、このような場面から始まります。そして、このCIA創設期に謎の人物(実はナチスに繋がるドイツ人で独・英・米の三重スパイ?)として重要な役割を担うのが、イエール大学で主人公エドワ−ド・ウィルソンに文学(詩作)を指導するフレデリックス教授(マイケル・ガンボン)です。
[f:id:toxandoria:20090102164847j:image:right]「The Good Shepherd 」の原義は聖書に登場する「良き羊飼い」ですが、この映画では「自らが“国家の最高理性”であることを意識しつつ、実はパラノイアに取り憑かれた“獰猛な番犬”に過ぎないCIA幹部らの実像」という意味に読み替えると分かり易いような気がします。ともかくも、この映画は1961年4月17日に起こったキューバ革命の転覆を目論むCIAの工作が失敗した事件「ピッグス湾事件」の“真相の解明”と”CIA創設史を飾る妖しげな人間関係のエピソード”をオーバーラップさせた物語で、『ゴッド・ファザー』、『ディア・ハンター』の名優ロバート・デ・ニーロが13年ぶりに監督した映画です。デ・ニーロ自身も重要なビル・サリヴァン役で登場しますが、主演は知的雰囲気を醸すウイルソン役を好演したマット・ディモンと個性的でセクシーな女優アンジェリーナ・ジョリーです(画像は、http://blog.livedoor.jp/p-5762508/archives/2007-10.htmlより)。
近年、一部の歴史研究家の間で、1963年11月の「ケネディ暗殺(於、ダラス)」についてCIA関与説(キューバ侵攻作戦に失敗したCIAをケネディが解体しようとしたためとされる)の疑いが濃くなっていますが、映画『グッド・シェパード』では、その伏線として、スカル・アンド・ボーンズ(Skull and Bones=髑髏と骨、S&Bと略称/参照、下記URL★の論説)との深い関わりについての秘話が、まるでレンブラント絵画を想わせるように濃密な映像美で、しかも謎めいたドキュメンタリー・タッチで描かれます。
そして、この秘密結社のパラノイア・カルト感覚(=自分たちが神より上位の理性的存在であるというカルト感覚)が現在もアメリカ政界のパワー・エリート(特に、現代のブッシュ政権に繋がるイエール大学系の人々)に大きな影響を与え続けており、その中枢にあるのがCIAだということを暗示するドキュメント風の映像が随所に挿入されています。ともかくも、撮影監督ロバート・リチャードソンのレンブラント・ライトを駆使したバロック絵画風の映像が見事に成功しており、欧州映画のように上質な映像と濃密なリアリズムの空気がスクリーン上に漂っています。
★1 http://www.yorozubp.com/0403/040305.htm〔中澤英雄(東京大学教授・ドイツ文学):スカル・アンド・ボーンズを覆うカーテン〕
★2 http://www.ribbon-project.jp/SR-shiryou/shiryou-14.htm〔トム・ハートマン:民主主義が破綻するとき――歴史の警告〕
[f:id:toxandoria:20090102164848j:image]特に興味深いのは、この映画が『創設期いらいCIA上層部(幹部たち)がこの<パラノイア・カルトの伝統>をシッカリ継授してきた』ことを示唆している点です。例えば、この映画の中で、あるCIA幹部は“人々が<theCIA>と呼ばず無冠詞で<CIA>と呼ぶのは<神>を<theGod>と呼ばないのと同じこと”だと語ります。また、“イエール大学(モットーが“Lux et Veritas”(ラテン語で「光と真実」の意味)で、アメリカWASPエリート社会の象徴(≒国家権力の中枢を占める最高理性を体現するとされる大学/世俗化したハーヴァードへの批判として創設されたため、イェールはハーバードのモットーVeritasにLux(光)を加えた)の伝統は『スカル&ボーンズの次の序列がGodである』ことを強調すること”だと主人公ウィルソン(マット・ディモン)の妻マーガレット(アンジェリーナ・ジョリー)に再三語らせることで、CIAが特殊なパラノイア観念に取り憑かれた反市民的なカルト組織であることをすら匂わせています(画像は、http://hollywoodceleb.blog99.fc2.com/blog-entry-357.html)。
そのためか、異例なことですが(ウイキペディア情報によると・・・)、CIAは、映画『グッド・シェパード』のエピソードについて、「映画の中で事実として語られること」と「CIAが事実として認めていること」の違いをわざわざ分析てし公表しています(参照、下記▲)。例えば、主人公エドワードの上司であるアレンCIA長官が公金の一部をスイス銀行の秘密口座へ隠匿していたことが発覚し辞任した事件を強調するあまり、この映画が当時のCIA上層部の多くが腐敗していたという印象を与えている点、あるいはアレンの息子(エドワード・ジュニア)の機密漏洩だけが「ピッグス湾事件」の失敗の原因を作ったと見なしている点などは事実と異なる(この秘密が漏れる可能性は無数に存在したためとする・・・)と指摘していますが、それは、米政府とCIAに対するこの映画の『衝撃の大きさ』が窺える興味深いエピソードです。そして、同じく印象に残ったのは、この映画の中で某幹部が「市民団体が我われCIAを監視すると言ってるが、絶対にそんなことできるはずがない!」と不遜な態度で言い切った場面です。
▲『The Good Shepherd Intelligence in Recent Public Media』、A movie directed by Robert DeNiro; screenplay by Eric Roth. Universal Pictures. 2006/Reviewed by David Robarge, Gary McCollim, Nicholas Dujmovic, Thomas G. Coffey、https://www.cia.gov/library/center-for-the-study-of-intelligence/csi-publications/csi-studies/studies/vol51no1/the-good-shepherd.html
なお、映画『グッド・シェパード』(The Good Shepherd/良き羊飼い)のフランス公開時のタイトルが『国家の理性』(Raison d'Etat)であることを下記ブログ記事▼(エッセイ)で知りましたので、案内しておきます。このフランス版・タイトルの方が、映画『グッド・シェパード』の真髄(=この作品の脚本家エリック・ロスの意図)を明快に現していると思われます。
▼『ね式(世界の読み方)』、http://neshiki.typepad.jp/nekoyanagi/2007/07/the_good_shephe_b5db.html
・・・・・
(「金融時限爆弾」(巨額CDS爆弾)を仕掛けた米国型金融ビジネス・モデルの巨額ポンジー詐欺)
「金融時限爆弾」(巨額CDS(Credit Default Swap)の存在)の犯人がサブ・プライムローンの詐欺的融資方法(=アメリカでは“呼吸をしていて平熱なら、誰でもカネを借りられるという“借金の民主化”が進んだ/参照→http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081218)と、そのネズミ講的性質(=ウオールストリート型ポンジービジネス・モデル)を爆発的に増幅したのが金融工学であることは周知のとおりです。そして、その巨大に膨れ上がった「金融時限爆弾」が本格的に炸裂する恐れ(可能性)が高まるのは、実はこれからなのです。
日本経済新聞(2008.12.26)は、「企業の信用リスク」を取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS/信用リスクに対する一種の保険機能を持たせるため、大きなデリバティヴを効かせた金融派生商品)の残高がじわりと増加に転じたと報じています。そして、12月19日時点における、その想定元本(総取引額)の合計は 29兆1298億ドル(約2600兆円)であり、10月末に毎週の残高の公表を開始してから初めて増加に転じたとのことです。それは、景気(実体経済)悪化の波が世界的に広がっているため資源価格の急落や信用収縮の影響を受けやすい銘柄などを対象とするCDSの取引が再び活発化しているためとのことであり、このような傾向は真に由々しきことです(情報源:http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081227AT2M2402226122008.html)。
一方、かつてブルームバーグなどが伝えたところではCDSの総額が47兆ドル(約4200兆円)以上というデータもあるようなので、実像は闇の中ということのようです(2008年7月に出版されたチャールズ・R・モリス著『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』(日本経済新聞社)では、CDSの総額は45兆ドル)。それは、このCDSが原則として相対取引であるため、DTCC(デポジトリー・トランスト・アンド・クリアリング・コーポレーション、http://www.dtcc.com/)などのデリバティブ登録・決済機関も、その全体像をつかむことができないという現実があるからです。
これは恐るべきことであり、金融工学とか言う真に体裁の良い名前がついていますが、それは一種の合法的な<簿外(バランスシートの外)への飛ばしシステム>のようなものです。乱暴に喩えるならば、アメリカのウオールストリート型ポンジー(ネズミ講型)ビジネス・モデルは日本の自治体の裏金が本予算の数十倍に膨れ上がったような<奇怪な擬装金融・会計システム>を構築してしまったのかも知れません。つまり、全くの本末転倒の資本主義となっていた訳です。
これでは、カルヴァン派の「予定説」に基づき「予定説→人間に対して神への大きな畏怖感を与える→人間は、この畏怖感を前提することによって、自らは神に選ばれた人間であるという証を求めて一心不乱に仕事に励むようになる(成功すれば自分は救われたことになるので)→与えられた職業にますます没頭するようになる→これが資本主義の発達を促すエネルギーとなった」と説いたマックス・ヴェーバー(Max Weber/1864 - 1920)もビックリの<異常な資本主義の姿>です。(この説はマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』より)しかも、この<CDSという名の合法的簿外飛ばしシステム>は「電子認証システム」(Net-webシステム)で決済されるため一般の人間には皆目その実像が見えなくなっています。
従って、これは<壮大なオレオレ詐欺システ ム>のようでもあり、ハイエクを高祖としミルトン・フリードマンを始祖とする新自由主義と規制緩和で羽目を外した「資本の論理」が「グローバル金融システム」を「グローバル詐欺システム」へ変えてしまったと見なすことができます。更に、上(2008.12.26付・日経記事)で見たとおりですが、この「グローバル詐欺システム」が何より恐ろしいのは「CDS増加→金融危機→実体経済悪化→CDS増加→金融危機→実体経済悪化→CDS増加・・・」という、デフレ・スパイラルならぬ<悪魔のCDS膨張スパイラルの罠>へ世界経済全体がスッポリ嵌ってしまったように見えることです。従って、これも米オバマ新政権下での「大幅ドル切り下げ(≒新ドル発行)の可能性」が囁かれる現実的な理由の一つです(関連で下記★を参照乞う)。
★2008-12-23付toxandoriaの日記/米「ゼロ金利政策」突入と「ドル急暴落」の“危機”の深層、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081223
(米・証券取引委員会(SEC)に巣食っていた巨額ポンジー(ネズミ講)詐欺)
更に恐るべき報道があります。それは、同じく日本経済新聞(2008.12.30)が「特集記事」で報じた「米ナスダック(NASDAQ)・マーケットの“バーナード・マドフ元会長による巨額詐欺(ネズミ講型の擬装投資ファンド)事件”の拡大・深刻化」ということです。当記事及び「International Business Times」(http://www.ibtimes.com/articles/20081223/founder-access-international-advisors-found-dead.htm)によると、12月23日にヘッジファンド投資会社アクセス・インターナショナル・アドバイザーズ社の共同創業者の一人ティエリー・ドラビルシェ氏がN.Y.のオフィスで自殺体として発見されました。
<注記>NASDAQ(National Association of Securities Dealers Automated Quotations)
・・・NY市場と並ぶ米国の代表的な株式市場でNASD(全米証券業協会)が運営する株の取引システム。取引所がない店頭取引のシステムによる市場で、マイクロソフト・インテルなど米国を代表するハイテク株が上場。ナスダック市場の動きを示す株価指数であるナスダック指数は、NYダウとともに世界の株式市場に大きな影響力を持つ(情報源:http://kw.allabout.co.jp/words/w000445/%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%80%E3%83%83%E3%82%AF/)。
それによると、ドラビルシェ氏はマドフ元ナスダック会長の擬装投資ファンドに15億ドル(約1300億円)を投資していました。同氏は名門投資会社アポロ・マネジメント(Apollo Management L.P. / a private equity investment firm、 founded in 1990、http://www.bloggingbuyouts.com/apollo-management)の設立などにも関わった人物であるだけに市場関係者らへ大きな衝撃が拡がっています。
この“バーナード・マドフ元会長による巨額詐欺(ネズミ講型の擬装投資ファンド)事件”(マドフ元会長は、2008年12月11日にFBIに詐欺のため逮捕され、SEC(証券取引委員会)は同氏の会社の資産を凍結)は、既に12月中旬頃には各紙が報じていたことです(参照、下記◆)。しかし、このNASDAQの信用を傘に着た「巨額ネズミ講(ポンジー)詐欺事件」は、その損失額が少なくとも約500億ドル(約4.5兆円)と史上最大規模が見込まれることもあって、それが<アメリカの投資社会全体へ与える動揺の大きさ>は計り知ることができず、更に<世界の投資・金融不安>を煽る可能性すらあるようです。
◆米証券詐欺事件、マドフ氏ファンドの清算に着手、http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20081216AT2M1600K16122008.html
◆米巨額詐欺関連投資 あおぞら銀124億円、http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20081216-OYT8T00420.htm
◆米マドフ容疑者の巨額詐欺、野村HDも275億円を投資、http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2549956/3615032
◆セレブ軒並み“マドフ被害” スピルバーグ氏もノーベル賞受賞者も、http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200812250063a.nwc
◆クローズアップ2008:ウォール街巨額詐欺 「名声」にだまされた、http://mainichi.jp/select/world/news/20081228ddm003040057000c.html
◆ネズミ講詐欺事件、マドフ元会長以外にも関与か(ブローカー、法務関係者、会計士チームら)、http://jp.ibtimes.com/article/biznews/081219/25578.html
この「マドフ巨額投資詐欺事件」の特徴は、マドフ元会長がユダヤ人であったためか、その被害が特にユダヤ人社会で大きく拡がっていることです。例えば、スティーブン・スピルバーグ(世界最高のヒットメーカーの一人として挙げられる余りにも有名な映画監督)とその映画会社ドリームワークスの共同創業者ジェフリー・カッツェンバーグ、GMAC(GMの金融関係会社)のエズラ・マーキン会長が代表を務めるヘッジファンド、あるいはヘッジファンド業界・ニューヨーク社交界の著名人であるウオルター・ノエルなどの面々という具合です。
しかも、問題はそれだけにとどまりまらず、マドフ元会長とSEC(米証券取引委員会)の<濃厚な癒着>が注目されつつあります。この日経記事によれば、SECのコックス委員長は“少なくとも過去10年にわたり、明白な複数の過失(マドフ氏との関係において)があった”と述べ、SEC自身の投資市場についての監督体制の不備を全面的に認めたようです。つまり、SECは1999年の時点でマドフ元会長の疑惑を知っていたにもかかわらず、その本格的な調査に踏み込まなかったということであり、それどころか、SECはマドフ元会長に実務面での助言まで求めていたという事実が明るみに出てしまったのです。つまり、SECはマドフ元会長を身内扱いするまで同氏と<濃厚な癒着>関係にあったことは疑う余地がなくなっているのです。
従って、サブプライム・ローン問題に端を発し、CDS(Credit Default Swap)など金融工学を駆使した「金融デリバティブ商品」を野放しにしてきたため、結局は「米発大金融パニック→世界恐慌への危機」という現在の全世界的な非常事態を招いた責任の一端はSECにもあるという批判が全米で高まるのは当然のことです。つまり。今となっては、米国内におけるSECの役割の見直しは当然のことと見なすべきであり、IMF(International Monetary Fund/国際通貨基金)、BIS(Bank for International Settlements/国際決済銀行)、世界銀行などのグローバル金融監視機関と各国政府・中央銀行・証券監視機構などが本気で各国の格付機関(民間)をも巻き込む形で、しかも、従来と全く異なる発想に基づき、米国のみならぜ全世界の金融市場への規制・監視体制を構築すべき事態となっているのです。
(経団連・裏ガネまみれの伝統か?、経団連と政官の癒着構造が発覚?・・・“御手洗キャノン・鹿島”裏金問題)
一方、日本国内では「キャノン、トヨタなど主に製造業による非情きわまりない非正規雇用切り捨て問題」を片目で睨みつつ【“御手洗キャノン・鹿島”裏金問題】という日本経団連トップを巻き込んだ、実に嘆かわしくも【薄汚い裏ガネ・スキャンダル】が噴出しています(参照、下記▼)。実は、この問題もアメリカ(NASDAQ)の「マドフ元会長・巨額投資詐欺事」と同様に、今急に突発したことではなく、約1年前の時点で、既に一部では問題視されていたことなのです。そこで、約1年前に書いた弊ブログ記事(下記▲)の中から関連部分だけを、ソックリそのまま再録しておきます。
▼鹿島、十数億円の裏金づくり キヤノンの発注工事で、http://www.asahi.com/national/update/1228/TKY200812280212.html
▲2007-12-10付toxandoriaの日記/福田総理『あわわわわ〜!』の背後から続々と噴出する裏金づくり「闇の構図」、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20071210
『 ・・・・・<鹿島建設、キヤノン大分工場関連の架空外注費で6億円の裏金づくり問題(介在したコンサルは裏金30億円の申告逃れか?)>があります(参照、下記の各ニュースソースURL/NHKと毎日新聞が最も早く報じていた)。そして、ここに登場する立役者は鹿島建設、キャノンのほか「元政治家秘書・地元関連与党政治家(通産族議員?)・県知事(元、通産の高級官僚)・専門コンサル&その筋」らの人々で、言わば、この手の“癒着構造事件の常連さん”たちです。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071209k0000m040125000c.html
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071209k0000m040127000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071210it02.htm?from=top
http://www.asahi.com/national/update/1210/TKY200712100141.html
地方への大型企業誘致関連では、概ね、この種の癒着・腐敗の噂が付きまとうものですが、今回の<事件>は経団連会長をも務めるキャノンの御手洗会長がトップスターとして登場しており、鹿島建設が隠した所得の一部(大分県内のコンサル会社に渡っていた)は、鹿島建設がキヤノンの工場建設を請け負うための受注工作資金に使われた疑いも浮上していると報道されていることから、肝心の問題(キックバックの流れ)が中央政界へ波及する可能性も否定できないようです。
視点を変えると、この種の事件も“経営者としての根本的自覚を欠いたトップによる船場吉兆の食品偽装”に似た一種の「無自覚で悪質な偽装・詐欺事件」と見なすことができます。つまり、地元民や一般国民に対し、恰も自分たちは正々堂々と真っ当で健全な仕事(経済・生産・建設・販売活動など)をやっているかのように偽装していたと見なせるのです。近年、食品偽装など企業の不祥事が相次ぎ表面化していますが、その多くは社員らによる「内部告発」が切欠となったものです。
さらに、その背景を探れば、そこに浮上するのは“長期不況時の過酷なリストラ、やりすぎの成果主義人事、人件費削減のための過剰な非正規社員化”などによる従業員の会社に対する「帰属意識と忠誠心の希薄化」の問題が顔を覗かせます。しかも、皮肉な見方をするならば、無責任で不正直なトップが支配する不健全な多くの会社が、帰属意識と忠誠心の希薄な従業員らの「内部告発」によって“辛うじて逆統治(逆ガバナンス)されている”という異常な経営統治のリアリズムが見えてきます。
まさに、今の日本は“相互信頼から相互不信の社会へ逆転した社会(or 会社?)構造”となりつつあるのです。それは、まるでルイス・キャロル(Lewis Carroll/1832-1898)作『鏡の国のアリス(Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)』のように異様な「逆さま社会づくり」に邁進するのが「防衛疑獄の闇を始めとして自らの背後からピョンピョン飛び出す巨大ゴキブリたち」を平然として(必要悪として?)飼い続ける福田政権だということになります。・・・・・』
・・・
つまり、この問題の根は非情に深いので、一筋縄での真相解明はとても容易ではないと思われます。そして、その焦点が「日本財界のトップたる経団連そのものの腐敗」であることは明らかです。思えば、財界総理と呼ばれることもある日本経団連会長選で巨額のカネが飛び交うという噂は昔から流れていたことです。奇しくも、米国金融市場の中枢(SEC周辺)における怪異で<濃密な癒着>の実態解明の動きと同期するかのように、いよいよ我が国でも、司直が、日本財界トップと政官界の<濃密な癒着>についての疑惑解明に着手したということかも知れません。この背後には「日米権力構造の交代劇」が絡む可能性もあるかも知れません。我われ一般市民の立場としては、司直による厳正な捜査の更なる推移を見守るしかありません。が、続いて報じられた下のような事件◆が後を絶たないこともあるので、一般市民がこの種の問題に対する批判力を身につけるにはどうすべきか、又それを政治参加の形で表現する方法等について、根本から真剣に考え直すべき時かも知れません。
◆西松建設が違法献金か、政治団体隠れみのに4億8千万円、http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081231-OYT1T00021.htm?from=top
それは我が国においても、米国と同様に「資本主義そのもの」と「政治のあり方」(=与野党を問わぬ、政・官・財のガン化したカネまみれの濃密な癒着構造)が<本来のあるべき姿>から遠く外れてしまっており、しかも、それらは外部(市民団体・メディア・監視&査察機関など)からの監視と規制による強制力が作用しなければ自律回復できないほど深く、かつ酷く病んでしまっているということです。「非情な派遣切り」の如き、我が国に特有の<非人道的で劣悪な雇用問題>も、この類の悪しき実情(=資本主義、市場経済および日本の経済社会についての理念などは屁の河童で、ひたすらカネを介したオゾマシイ政・官・財の癒着構造のみを重要視するという一種の集団パラノイア状態)と無縁のことではないはずです。
因みに、下のとおり、およそ「小泉政権」以降から現在へ至る時代のA「営業余剰」とB「混合所得」(個人企業の営業余剰)の推移、およびC「雇用形態別就業者数の推移」を概観するだけでも、まず「労働分配の果実」が大・中規模の企業側へ偏ってきたことが分かります。また、1,732万人規模(全労働者数の33.4%=約三人に一人強の割合/2007→これが2008年の推計値では約34%、220万人ほどに達している)となった非正規雇用者の中で約1,000万人が年収200万円以下であり、就業者(労働者)全体の貧富の格差が「アメリカ型に似た二極分解の形」(アメリカ型の二極分解については、下記記事★を参照乞う)へ進行してきたことが分かります。また、年収500〜800万円は約2,200万人ほどを占めるが、その全階層において対「1998年比」で少なくとも6〜8%程度は下回っており、中間層の没落傾向も確実に観察されます。
★2008-12-18付toxandoriaの日記/米国型「下流(貧困)食いビジネス」に便乗した日本メディアの蒙昧、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081218
出典:A〜B=所得の発生勘定国民経済計算(内閣府、経済社会総合研究所・資料、http://www.esri.go.jp/)、C〜D=雇用形態別就業者数の推移(連合・データコーナー、http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/koyou/hiseikiroudou/data/index.html)
A【営業余剰】(単位:10億円)
(2001)63,390→(2002)66,495→(2003)68,567→(2004)74,499→(2005)78,460→
(2006)75,288→(2007)76,926
B【混合所得】(個人企業の営業余剰/単位:10億円)
(2001)20,649→(2002)21,434→(2003)21,257→(2004)19,925→(2005)19,709→
(2006)17,408→(2007)17,276
C【画像/雇用形態別就業者数の推移】・・・2007年の「非正規雇用者数、1,732万人」は全雇用者数の33.4%に相当する。
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D【画像/収入階級別給与所得者数】・・・(2007)1,032万人が年収200万円以下、二極化する給与所得者層
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一方、12月23日付・共同通信が、大量の非正規雇用を主とした人員削減を進めるトヨタ自動車・キヤノンなど日本を代表する大手製造業16社で、2008年9月末の「内部留保」の合計額が、空前の約33兆6000億円に達した(景気回復前の2002年3月期末から倍増)したことを報じています(参照、下記▲)。仮に、「@240万×8.5万人≒2千億円、(2千億円/33兆円)×100=0.6%」の計算を試みると、トヨタ自動車・キャノンなど大手製造業16社の内部留保金(33兆円)の僅か0.6%を手当てすれば8万5千人について1年分の総人件費が賄えることになります。
▲大手製造業、株主重視で人員削減/内部留保、空前の33兆円、http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008122301000451.html
▲派遣切り、ついに8万5千人にふくらむ雇用クラッシュに、http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/d5e4b4638596dd443770703ffc879fd3
このことからも、「小泉政権」以降において如何に付加価値の分配が「企業と株主側」へ過剰に傾斜し、著しく歪んだ労働分配構造となってきたかが窺えます。これは、市場原理主義へ向かって暴走した米国型を手本としてきた「日本の資本主義」が酷く病んでいる証左でもあります。欧州は素より、渦中のアメリカのビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)でさえも今のところは従業員の多くが所得保障の上での自宅待機で済んでいることからすれば、日本の大手製造業の社会的責任意識の欠落ぶりと、日本政府が今までお座なりで過ごしてきたため生じた低劣な労働環境、そして何よりも「日本の財界と与党政治の冷酷な体質」と日本における「人権意識の低さ」を世界へ向けて発信した形となっています。
このような「日本の政治・経済のバカさ加減」(≒政治権力と濃密に癒着しつつ米国型市場原理主義ベッタリの“机上の空論”経営にウツツを抜かしてきた財界トップ&癒着政・官のバカさ加減)を理解するには、何も竹中平蔵氏風に難解な経済理論をまくし立てるほどのこともありません。少子高齢化社会へ向かう社会条件の中で、愈々、これからグローバリズムと調和させつつ、本気で内需型経済システムを構築すべきであるという緊急事態であったにもかかわらず、「小泉劇場」以降の「政治と経済界の癒着構造」は、労働者を単なる消耗品あるいは使い捨ての部品扱いにして、まるでバカの一つ覚えの如く、ひたすら中間層の破壊と格差拡大に精を出してきたという訳です。
こんな体たらくでは、日本の大方の財界人・経営者らは、とても世界における資本主義社会のリーダーを名乗る資格はありませんし、欧州型の雇用システムであるフレキシキュリティやワークシェアリングを語る資格もありません。むしろ、もっぱら「私腹肥やし&株主利益」と薄汚い「権力構造へのしがみつき」に熱中してきた財界トップと政権与党の<政治屋>たちは、即刻<財界人&政治家の擬装看板>を降ろして下野し、「年越し派遣村」などでの社会奉仕活動に加わって罪滅ぼしに取り組むべきです。
(関連参考情報)
年越し派遣村 、行政に支援要請・・・(宿泊用のテントがほぼ満員となり、このままでは泊まれない人が大勢出るおそれがあるため、実行委員会は、公共施設などを一時的に開放し宿泊場所として提供するよう、厚生労働省に文書で要請した。)、http://www3.nhk.or.jp/news/t10013328261000.html#
(米・オバマ、日・ポスト麻生が目指すべきは賭博型経済とカルト政治から脱却し『国家の理性』を回復すること)
ここで、その詳細を論ずる余裕はありませんが、このような「資本主義のあり方について一種の集団パラノイア」が日米の政界・財界の中枢&トップを蝕むことになった原因の一つに「そもそも資本主義の根本が貨幣を介在させた賭博型投機システム」であるという現実があります。これは、謂わば一種のゲームのようなメカニズムと言っても過言ではなさそうです。元々、市場は「神の見えざる手」に任せるべきだとアダム・スミスが考えたとされており、そのスミスが想定した神は「善なる神」のはずであり、その「善なる神の手」は神の声を聞く人々(社会)の道徳的感情によって自ずから自由放任システムの中で調整されるはずでした。ところが、このアダム・スミスの「神の手の神話」そのものが誤解であった可能性があるのです。
アダム・スミスは「モノの価格の決まり方について市場のプロセス(需要と供給)が決定するとは一言も述べておらず、賃金と利潤と地代の通常率を足した自然価格という概念を提示しただけだ」という理解が佐伯啓思氏(京都大学大学院教授)によって明らかにされています(参照、下記▼)。とするならば、アダム・スミスは賃金や利潤は職業などに対応して慣習的にある一定の水準を保っていると考えた訳であり、これは「公正価格」が市場機能の外にある人間社会に内在する経済ファクター以外の諸条件(例えば、契約・福祉・人権などの諸理念との関わり)によって決まるはずのものであり、ましてや民主主義国家たる「社会下の市場経済」においてはそのように決めるべきだということになります。今回の「米発金融危機の勃発」あるいは「マドフ元NASDAQ会長による巨額詐欺事件」と、余りにもオゾマシイ「日本経団連を舞台とした“御手洗キャノン・鹿島”裏金問題」は、このこと(自由放任の市場原理へ任せることの誤り)に対する厳正な証拠を突きつけたことになるのかも知れません。
▼2005-12-19付toxandoriaの日記/『小泉劇場』が培養する悪徳の栄え/耐震構造偽造問題の深層、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051219
もう一つ、重要な観点を示すならば、それは「市民による政治・経済の監視」と「グローバル時代の適切な規制にIT−Web技術を活用する」ことの重要性ということです。いかに壮大かつ緻密な屁理屈を駆使しようが、<高度なIT−Web技術で妖しげな金融商品を開発しつつ投資環境の拡大・深化を図り、一握りの権力者らがインサイダーやポンジー取引を駆使して私腹を肥やす一方で早期の対青少年・投資教育の促進で経済を発展・拡大させつつ社会厚生の高度化をも実現できる」という竹中平蔵氏の市場原理主義と規制緩和原理主義(=トリクルダウン理論)が「ネズミ講詐欺の妖しげな理屈」と同義であったことは、最早バレバレとなってしまったのです。従って、これからは健全な市場(資本主義)の発展と健全な雇用・労働・福祉環境および充実した市民社会を実現することを目的とする「金融・経済・経営についての適切な規制システムとネットワーク構築」のためにこそ、高度なIT−Web技術を活用することが重要となるはずです。
その前途が必ずしも安泰に続くとは言えぬまでも、少なくとも、これから発足する米オバマ政権が「草の根」(若者・弱者・貧困層など)の選挙運動から始まり、このような意味での「CHANGE」(市場原理と規制の役割の見直しによって、米国の貧富格差拡大の構造を変革すること)が大きな目標の一つであるとするならば、富裕層の優遇へ偏ってきた共和党・ブッシュ政権との違いを際立たせるためにも、オバマ民主党政権は、「金融資産が負債より多い富裕層」の反発を受けながらも、敢えて、果敢に自ら掲げた旗印「CHANGE」の主要な柱として、このような方向へ接近する政策を実行する可能性があると考えられます。そうであるなら、政・官・財・メディアともども、このような考え方に到達できない日本にとって今までの日米関係とは違った意味で非常に厳しいものになるであろうことが予想されます。
市民意識レベルの反映でもあり、またジャーナリズムとしてのメディアの自覚(本気度?)とメディアが本来担うべき役割実行の動向しだいでもあるため、ポスト「麻生マンガ政権」がどうなるかは分かりません。しかし、少なくとも、これまで見てきたような意味で「資本主義、市場機能、金融システム等への規制のあり方、適切な雇用・福祉・医療等のあり方」について、市場原理主義的パラダイムの根本的転換が行われぬ限り、日本に明るい未来は到来しないと見るべきです。いささか古いコトバですが、あの「小泉詐欺劇場」が華やかであった頃に『偉大なるイエスマン』(当時の武部勤・自民党幹事長を指す/流行語大賞を受けた)という“真に軽薄なコトバ”が珍重されたことが想起されます。
考えてみれば、これは“軽薄”どころか、あの「スカル・アンド・ボーンズのカルト信仰に牛耳られた擬似超国家組織(CIA)に至高の忠誠を誓いつつ国家の主役たる市民への忠誠を捨て去ったCIA幹部の不遜な態度」に重なり、その余りの“軽薄ぶり”には恐怖心をすら覚えます。それは、そのような錯誤のガバナンスに嵌まった国は『国家の理性』(Raison d'Etat )を失っているからに他なりません。しかし、逆説的にみれば、現代の日本がこのような状況に至ったということは、「日本国民、一般市民」の多くが、民主主義体制下における『国家の理性』とは、他ならず自ら一人ひとりの意志の実行(実現)であることを漸く知り得る良い機会となるかも知れません。それこそが「市民理性のルネサンス」であり、リセット型(Reset/市民・国民・労働者を使い捨てにする愚かな資本主義社会)から日本がリボーン型(Reborn/適正な労働分配下で、限られた数の労働者を次世代の経済成長の活力源に育てつつ内需型経済とグローバリズム経済を調和させる賢い資本主義社会)へ脱皮するチャンスです。
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