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http://www.amakiblog.com/archives/2008/12/27/#001313
2008年12月27日
やがて火を吹くアスベスト問題
元国鉄職員二人の遺族と旧国鉄らが争っていた損害賠償訴訟が、25日和解した。この事がメディアによって26日に一斉に報じられていた。
しかし、そのニュースを見たり読んだりしている一般国民のはたしてどれだけの者が、アスベスト問題の深刻性に気づいているのかと思う。
二人の元国鉄職員は、石綿の粉塵が飛散していた作業現場で、マスクの着用も指示されることなく長年労働に従事させられていた。
アスベストの吸引が原因でその二人は悪性中皮腫となり、04年と08年に死亡した。その補償をめぐっての訴訟である。
しかしアスベスト被害訴訟はこれだけではない。最近の新聞記事を注意して見ると、例えば12月18日の毎日新聞には車両メーカー「近畿車輛」がアスベストによる労災で死亡した社員の遺族に上積み補償をする方針を決めたと報じていたし、12月11日の朝日新聞は韓国のアスベスト被害者が韓国のアスベスト工場に出資した日本の建材メーカー「ニチアス」らに対し集団損害賠償訴訟を起したと報じていた。12月18日の産経新聞は、阪神大震災直後に営業で走りまわった建設会社員がアスベストによる中皮種におかされて余命2年を宣告されたという記事を掲載し「忍び寄る震災アスベスト禍」を警鐘していた。
アスベスト禍は潜伏期間が20年―50年とされていることや、発病との因果関係が明瞭でない事などにより、問題が隠されている面がある。しかし医学や科学の進歩により因果関係がより明確に突き止められるようになると、アスベスト禍の問題は大きな社会問題となることは間違いない。
重要な事は、アスベスト問題は、単に過去の被害の救済問題にとどまらない事である。より深刻な問題は、全国のいたるところに何百万単位で存在するアスベスト使用の建造物の修理、改築を行う時、アスベストの存在を確認し、その塵埃を未然に防ぎ、いかに安全にそれらを廃棄するか、である。そのための適切な法整備がなされているかということである。
いうまでもなく、日本でアスベスト問題が起きた最大の原因は、欧米やWHOではつとにその危険性が指摘され、使用禁止になっていたアスベストを、何故日本だけが使用し続けていたかである。被害者が判明して大騒ぎになってやっと禁止されたのはわずか2,3年前の事である。それまでの間、アスベストは使用され続けてきた。その結果が大量のアスベスト使用建造物の存在だ。
私がこの問題になぜ注目するかと言えば、このまま誰も問題提起をせず、いたずらに月日が経っていけば、公害、薬害、耐震構造問題などの例に見られたように、行政の不作為による国民の犠牲がまたもや起きるからである。これ以上誤りを繰り返してはならない。
アスベスト問題はその所管が複数の省庁にまたがる。総務省(旧建設省)、厚生労働省、環境省、経済産業省などがそれだ。
前向きな仕事には競ってその業務の奪い合いにしのぎを削る省庁も、やっかいな仕事となるとその業務を押しつけあう。責任を押し付けあう。これを官僚用語で「消極的権限争い」という。そこに、「適切で迅速な立法措置、行政措置」の遅れや空白が生じる危険が潜む。
実際のところ、このアスベスト問題は、建造物が老朽するまで手をつけずに封じ込めて置けばよいうというような考えや、法整備が整う前に耐震強化工事や修理工事の名にかこつけて気づかれないうちに除去してしまおうという考えが、ひそかにひろがりつつあるとも聞く。
もし問題意識を持ったメディアがこの事に警鐘を鳴らし、良心ある内部告発者が現状を世に知らしめるようになれば、このアスベスト含有建築物の解体、修理問題の疑惑は表面化し、アスベスト問題は一気に火を吹く事になるだろう。政治と行政の不作為の責任が糾弾される事になる。
問題はいつアスベスト問題に火がつくかである。
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