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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20081223-01-0901.html
スイスのレマン湖畔で、日本の農業や食料自給に大きな影響を与える重要な交渉が続いている。WTOのドーハ・ラウンドだ。ドーハ・ラウンドは、関税の大幅引き下げなどをめぐるぎりぎりの交渉がジュネーブのWTO本部で続いているが、早ければ13日にも開かれる見通しだった閣僚会合が、17日以降に延期され、現時点で見通しはたっていない。
しかし、いずれにしても対立点は絞られてきており、7年に及んだドーハ・ラウンド交渉は、関税の大幅引き下げなど、日本の主張が一顧だにされない、日本にとっては非常に厳しい内容となることが避けられない状況だ。
農水省でガット室長などの貿易交渉ポストを長年経験してきた山下一仁氏は、コメをはじめとする「重要品目」を関税引き下げの対象から外し、あくまで高い関税で国内市場を守ろうとする日本政府の交渉スタンスを批判する。「重要品目」は高い関税の維持を認めてもらう代わりに、最低輸入義務(ミニマム・アクセス)を受け入れなければならないが、それが結果として必要以上のコメの輸入を拡大させることになり、日本の食料自給率の更なる低下が避けられないとの理由からだ。
ドーハ・ラウンドが妥結すれば、日本はコメの関税を778%に維持することへの代償として、現在毎年77万トンの最低輸入義務(ミニマム・アクセス)が課せられているコメの輸入を、さらに増やさなければならない。水田の4割を減反して生産量を抑えておきながら輸入量が増えるという、矛盾した結果となるが、多数の高関税品目を持つ日本が関税の引き下げを行えば、そうでなくでも苦境にある日本の農家が大打撃を受けるというのが、政府やJAの主張だ。
しかし、山下氏は、折からの穀物価格高騰で国際市場でのコメの価格も上昇しており、日本は現在の関税を大幅に引き下げても、輸入米と十分競争していけると主張する。関税引き下げを免除してもらうことの引き替えにミニマム・アクセスを受け入れるよりも、競争原理を受け入れた方が、結果的にコメの輸入量が増えないばかりか、将来的にはコメの輸出さえ可能になるというのが、山下氏の主張だ。
日本は工業製品の分野では、自由貿易の恩恵をもっとも受けてきた国の一つであり、WTOにおいても工業製品の分野では一貫して関税の撤廃を推進する立場をとっているが、農業については、コメ市場を守ろうとするあまり、頑なに高い関税を死守する政策に拘泥している。しかし、アメリカやEUが、農家への直接支払いによって国内農業を保護していく政策に転換する中、どうも関税で国内市場を保護する日本の政策は国際社会の中で正当性を失いつつあるようだ。
もとより工業製品と同じように農業を扱うことはできないが、日本の農業政策は、ともすれば日本の農業を守るというよりも、日本の農協(JA)、そしてそれが代表する兼業農家を守る政策にすり替わっているきらいがある。そして、それを支えているのが、農協、農水省、自民党農水族の「農水鉄のトライアングル」だと、山下氏は説明する。
神保哲生、宮台真司両キャスターが、現在の日本政府の農業政策は、本気で農業をやろうとする主業(専業)農家のためにも、消費者のためにもなっていないと、農水省の政策を批判し、省を辞職して間もない山下氏とともに、WTO農業交渉から見えてくる日本の農政の問題点を議論した。
山下: 一番日本が抵抗しているのは、関税の引き下げだ。これは交渉でもほぼ決まっていると思うが、75%以上の高い関税については70%削減しなさいというのが原則だ。つまり、今の高い関税率の30%までは維持しても良いということをいっている。
日本は、高い価格を維持することで農業を保護しているから、高い関税が必要だと主張している。75%以上の関税品目は、数え方にもよるが全品目の12%ほどある。最初は、関税削減の対象外となる「重要品目」を全品目の4%から12%まで広げてくれと主張していた。ところが、今年7月の若林農水相が、「いくらなんでも世の中の相場からかけ離れている主張をしても、WTOで受け入れられない」と、ある意味で英断を下されて、8%まで水準を下げた。しかし、EU からするとなぜ8%も必要なのか、皆4%で良いといっているではないかということで、4%が原則となった。日本のメンツも立てる必要があるので、一定の条件で6%まで高めても良いということにはなった。
ところが、ここにあまり報道されていない問題がある。実は、WTOの交渉の基本ルールというのは、原則に対して例外をなかなか認めてくれない。また、原則に対して例外を認めてもらう場合、必ず代償が必要だ。
たとえば、ウルグアイ・ラウンドの際、実は私はジュネーブでその交渉を行ったのだが、日本はコメの関税化に最後の最後まで徹底的に対抗した。関税化を選んでいれば、今年事故米の原因になった最低輸入義務(ミニマム・アクセス)が消費量の5%で済んだところを、関税化をしないという選択肢をとったために、 8%分輸入をしなければいけなくなった。これが代償だ。
現状は、全品目の4%までは「重要品目」が認められている。ただし、重要品目を適用すると、ミニマム・アクセスを追加しなければいけないことになっている。今コメについては77万トンの輸入義務があるが、120万トン以上を輸入しなければいけなくなる。
日本の交渉は、「重要品目」は多ければ多い方が良いというスタンスだ。そのため、コメだけでなく小麦、大麦、乳製品、こんにゃくなどもすべてミニマム・アクセスの加重が必要になる。その結果どういうことが起こるかというと、輸入が増えるため、食料自給率は下がる。 食料自給率を上げようという閣議決定をしておきながら、ジュネーブでは食料自給率を下げる交渉を行っているということだ。ここが、日本の交渉の一番の問題点だ。
なぜ農水省は高関税を守ろうとするのか
山下: 交渉に携わっている者としては、ウルグアイ・ラウンドの当時でも、関税化の方が良かった。というのは、当時関税化というのは「汚い関税化」と呼ばれた。それはどういうことかというと、内外価格差の基準年をウルグアイ・ラウンドが始まった1986年から88年というふうにとった。その時期の状況は、アメリカとヨーロッパの輸出補助金競争がものすごく激しくて、国際価格が最低の時だった。アメリカとヨーロッパは、国内で保護をしていたので国内価格が高かった。つまり、内外価格差が一番開いたときをそのまま関税に置き換えた。
現在の日本のコメの関税率は778%だ。そのような関税化を行えば輸入品が入ってこられないことは皆わかっていたが、日本国内では「包括的関税化は反対」「一粒たりともコメは入れない」というスローガンやドグマがものすごく先行したために、農水省としては関税化の例外を主張するしかありえなかった。
冷静に判断すると、関税化した方が有利だと思っていた。だから、99年に関税化をしたわけだが、どういう訳かわからないけれども、冷静な議論がなぜか日本社会では通用しない。政治的なスローガンやドグマで、ずっと流されてしまう。その時に「関税化をした方が良い」と言っても、誰にも相手にされないばかりか、言っていることがけしからんから交渉から外せということになってしまう。
現在ミニマム・アクセスで輸入しているコメは、たとえば一部の食用の中国産のもので10年前は1俵あたり3千円だったものが、現在1万円まで上がっている。国内のコメの価格は逆に下がって、現在約1万4千円だ。つまり、必要な関税率は40%で済んでいる。この3年間に農水省がとっている、マークアップという、国内の価格と輸入品の価格の差の比率である必要関税率は、コメの場合50〜80%だ。今コメは778%の関税率だが、必要ない。また、今回の交渉によって関税率を3割維持にしたとしても、まだ233%もある。そんな関税率は必要ない。つまり、実は「重要品目」に指定する必要は、コメですらない。
宮台: 感情の政治になってしまっている。日本の、北朝鮮を含める対アジア外交でも同様だが、どういう交渉をしてどういう選択をすれば合理的なのかという、合理計算の話ではなくなっている。ある種のシンボルを巡る政治、「死守・断固・決然」というところに感情が乗ってしまって、そうした状況ゆえに、政治家も合理的な計算に基づいた説得ができないという状況が続いているということだろう。
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