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(回答先: 「住宅は資産」という幻想で誰があなたをカモにするのか? 投稿者 中川隆 日時 2016 年 1 月 23 日 19:00:16)
空き家・空き地・所有者不明土地対策はどこまで進んだか
米山秀隆 (富士通総研経済研究所 主席研究員)
全国で空き地・空き家が急増し、登記簿などの情報を見ても直ちに所有者に辿り着くことが難しい所有者不明の物件が増えています。所有者不明の土地にいたっては、いずれは北海道の面積に相当するだろうと言われるほど。これまで価値があるとされてきた不動産ですが、マイナス価値の「負動産」と化しているのが現状です。こうした問題の有効な対策について、空き家問題に詳しく、
などの著書がある米山秀隆さんに、新刊著書
『捨てられる土地と家』(ウェッジ)
https://www.amazon.co.jp/%E6%8D%A8%E3%81%A6%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E3%81%A8%E5%AE%B6-%E7%B1%B3%E5%B1%B1-%E7%A7%80%E9%9A%86/dp/4863102046
をもとに3回に分けて解説いただきます。
空き家・空き地・所有者不明土地対策はどこまで進んだか(1)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13443
空き家は誰が解体すべきか?
増える空き家、空き地、所有者不明土地
総務省「住宅・土地統計調査」によれば、2013年の全国の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%となり、10年前に比べ、空き家数は107万戸増加、空き家率は1.3ポイント上昇した。
空き地も増えており、国土交通省によれば、世帯が保有する空き地は2013年に151万件(981ku)に達し、10年間に比べて45万件、300ku増加した。空き家が解体された場合、跡地は空き地となるが、利活用が有望でない空き家の敷地は2013年には272万件(830ku)と、10年前に比べて92万件、323ku増加した。
空き家、空き地の中には、登記簿などの台帳を見ても、所有者が直ちに判明しないか判明しても連絡がつかない物件も増えている。人口減少が進む中、相続時に登記されない物件が増えていることによる。
空き家、空き地、所有者不明土地問題の深刻さは増すばかりであるが、今年は総務省「住宅・土地統計調査」の5年に1回の調査年に当たり(10月1日時点で調査)、空き家の最新動向が2019年に判明する。この連載では、対策がどこまで進んだのかについて見ていく。
空家法とその効果
空き家については、2015年5月に全面施行された空家対策特別措置法(以下、空家法)において、(1)倒壊等保安上危険、(2)衛生上有害、(3)景観を損なうなどの状態が著しくなっているものを「特定空家」と認定し、助言・指導、勧告、命令、代執行の措置を行えるものとした。また、空家法では、従来、代執行ができなかった所有者がわからない場合も代執行できるようになった(略式代執行)。
同時に、2015年度税制改正では、勧告の対象となったものは固定資産税の住宅用地特例を解除することとした。住宅を建てた場合の税軽減の仕組みは、住宅が足りない時代には住宅取得を促進する効果を持ったが、住宅が余っている現在では、危険な住宅でも解体せず残しておくインセンティブを与えていた。
このように空家法と税制改正によって、特定空家の所有者に対してプレッシャーが強まった。これが空き家所有者の行動に与える影響としては、特定空家にならないように維持管理を行う、賃貸化するなど物件を活用する、維持管理コストと将来的な税負担増を考えて売却するなどの選択を行うことが考えられる
2018年3月31日時点で、空家法に基づく措置の実績は、助言・指導が10,676件、勧告が552件、命令が70件、代執行23件、略式代執行75件となっている。助言・指導の件数に比べ、勧告の件数が少ないことは、助言・指導の段階で従う場合が多かったことを示している。その意味で、空家法と税制改正の効果はあったといえる。
ただ、特定空家の所有者へのプレッシャーと税負担を高めたとしても、支払い能力がなく解体費も出せない場合には、そのまま放置される物件も出てくると考えられる。この場合、最終的には代執行に至るが、費用は請求しても払ってもらえず、費用回収のため敷地の売却を迫られる。しかし、売れても抵当権が付いていた場合、自治体に回ってくる分があるかはわからない。代執行に積極的に踏み切る弊害としては、最終的にこうした措置が取られることがわかっているとしたら、自ら動かず、自治体に任せる所有者が出てくることである。
空家法と税制改正で、特定空家の自主的解体は従来より進んだ。現に自治体が直面する問題は、それでも対応してくれない場合、すべて代執行を覚悟するのか、あるいはそれ以前の段階で、解体費補助などで自主的対応を促しておいた方が得策なのかという問題である。
様々な解体支援策
実際、これまで自治体は、各種のインセンティブを通じて解体を促してきた。件数ベースで最も多く解体費を補助している自治体は広島県呉市で、2016年度までに501件、総額1億4,243万円の補助を実施した(1件当たり上限は30万円)。呉市は斜面が多く解体が進みにくいため、補助の仕組みを設けた。これにより、これまで処分に悩んできた所有者が、空き家の解体に踏み切るきっかけとなった。仮に501件が代執行となれば、自治体の対応能力を超える。
一方、群馬県高崎市では上限100万円とより高額で、2016年度までに427件、3億8,753万円の補助を実施した。呉市の補助金は国が半分出すスキームを利用しているが、高崎市では全額市が出しており、支給の基準も10年程度空き家であればよく、緩い。
高額の補助を出すことについては、モラルハザードの問題も大きいが、それによって自主的解体が進み、将来問題空き家となり得る物件が現時点で大きく減れば、そのほうが望ましいとの考え方に立つことも可能である。空家法に基づく対処は時間がかかり、空き家対策で目に見える効果が上げるには補助金を支給するのが早いとの市長の判断に基づく仕組みである。財政が豊かであればそのような選択も取り得る。
このほか、土地建物を市に寄付する条件で、空き家の公費による解体を進めた自治体もある(長崎市など)。また、空き家の建っていた土地を一定期間公共利用することを条件に解体費を補助し、公共利用の間の固定資産税を免除する仕組みを設けた自治体もある(福井県越前町など)。
こうした様々な形の公費投入の仕組みは、自治体がそれぞれの事情によって講じたものである。ただし、公費投入にはモラルハザードの問題がある。最初から支援を受けられるとわかっていたら、誰も自己負担で解体しなくなる。自治体としては、あくまでも自主的解体を原則とし、公費投入に踏み切る場合は、地域にとって有効な手法を選ぶ形で支援しようとしている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13443
空き家・空き地・所有者不明土地対策はどこまで進んだか(2)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13448
空き家ビジネス最前線
一番取り組まれている施策「空き家バンク」
空き家の利活用促進策については、人口減少で悩む地方の自治体などが、早くから空き家バンクの設置を中心に進めてきた。空き家バンクとは、自治体が空き家の登録を募り、ウェブ上で物件情報を公開するなどして、購入者や賃借人を探すというものである。
これまで自治体が講じた空き家対策のうち、一番取り組んでいる割合の高い施策は、空き家バンクである。自治体は近年、適正管理の推進や解体促進策としての空き家管理条例の制定を急いだが、それ以前から地方の自治体では、利活用促策として空き家バンクを設置してきた経緯がある。空き家バンクを設けている自治体は2017年時点で、検討中も含めれば全国で1,000以上に達する。
しかし、空き家バンクへの物件登録、成約実績には自治体によって差が大きい。市町村が開設した空き家バンクでは、開設以来の累計成約件数が10件未満にとどまるものが半数となっていた(移住・交流推進機構調べ、2014年)。さらに、その後の調査で各年度(2015〜17年度)の成約件数を見ると、成約件数が0件という空き家バンクが毎年2〜3割に達している。空き家バンクを設置したものの、開店休業状態のものが多いことを示している。
そうした中で、実績が出ている空き家バンクは、所有者による自発的な登録を待つだけではなく、不動産業者やNPO、地域の協力員などと連携して、積極的に物件情報を収集している。さらに、空き家バンクを見て問い合わせがあった場合、物件案内はもちろんのこと、生活面や仕事面など様々な相談にも応じたり、先に移住した人と引き合わせたりするなどきめ細かな対応をしている。自治体職員だけでは対応しきれないため、NPOや住民とも連携をしている。空き家バンクの成約件数が最も多い自治体は長野県佐久市で、2008年度のスタートからこれまでの成約件数は400件以上にのぼる。
地方を中心に成長「買い取り再販ビジネス」
一方、空き家を流動化させるビジネスも登場している。近年活発化したのは、地方を中心に空き家を数百万程度で安く買い取り、数百万円程度で改修し、1,000万円から1,500万円で売る、買い取り再販ビジネスである。地方では新築の半値以下であり、立地や物件の状態によっては十分需要が生じる。親から引き継いだ土地付きの家を数百万円で売却するのには抵抗があるが、保有し続けても税負担、管理責任、さらには事故が起こった場合の工作物責任などを負うばかりでメリットがなく、値段がついただけましと売却する人が増えている。
その代表的な事業者は、こうしたビジネスの先駆けで今や全国に拠点を置く「株式会社カチタス」(群馬県桐生市)である。競売物件の買い取りから事業を始め、近年は空き家の買い取りで成長し、地方都市を中心に100店舗以上を持つ。年間の取り扱いは約4,000戸で、累計4万戸以上の販売実績を持ち、2番手以下に圧倒的な差をつけている。空き家を買い取る目利きが、この立地でこの状態ならば売れると見込んだ物件を仕入れ、売れる値段で確実に売り切る戦略を取っている。
こうしたビジネスは、都市部においては地価の高さから販売価格が高くなり、新築との競争力を出しにくいため、地方を中心に成長している。
賃貸需要の開拓を専門に
さらに近年登場したのは、空き家を市場では供給が少ない戸建ての賃貸物件として活用しようとする動きである。所有者から安く借り、最低限の改修を施し、相場より安い価格で貸し出すことによって、起業家向けやアトリエ、工房などの需要を開拓している例がある。そのような需要が見込まれる場所であれば、十分、ビジネスとして成り立つ。こうした不動産投資は、「廃墟不動産投資」や「古民家不動産投資」と呼ばれることもある。また、こうした賃貸需要の開拓を専門で行っている仲介業者もいる。
芸術家や工芸家のアトリエ、工房に使える物件を仲介する「取手アート不動産」(NPO法人取手アートプロジェクト、茨城県取手市)と株式会社オープン・エー([東京都中央区]が運営するサイト)、空き家を若いクリエーターなどの入居者とともに、工房やアトリエなどに改修して使う活動に取り組んでいる「omusubi不動産」(千葉県松戸市)などがある。
こうした取り組みでは、借り手が自由にDIYで改修を行い、原状回復の義務がないDIY型賃貸としていることが多い。取手アート不動産では、東京芸術大学の学生や卒業生の需要などを開拓している。
omusubi不動産がターゲットとする物件は、荷物だらけの古民家、未内装のままぼろぼろになっていしまった古ビル、ほとんど空室のアパート、昭和の団地やマンションなどであり、こうした価値がないと思われている物件を、DIYや新たなアイディアによって再生させている。
以上述べてきた買い取り再販、賃貸需要の開拓は、需要がつかない「負動産」と思われていた空き家の新たな需要を開拓した例として注目される。ただ、当然のことながら、そのような潜在需要のある場所でなければ成り立たない。所有者にとっては、売却価格や賃貸料は高くなくても、放っておいてただ固定資産税を払っているよりはましという観点から、流動化を考える場合が増えている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13448
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