_________ _________ 10. 中田秀夫の映画 10
『クロユリ団地〜序章〜』 第1話, 第2話, 第11話, 第12話 TBS 2013年
総合監修 - 中田秀夫 脚本 - 加藤淳也、三宅隆太 監督 - 中田秀夫 http://www.pideo.net/search?q=%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%A6%E3%83%AA%E5%9B%A3%E5%9C%B0%EF%BD%9E%E5%BA%8F%E7%AB%A0%EF%BD%9E http://www.acfun.tv/search/#query=%E3%80%90%E6%97%A5%E5%89%A7%E3%80%91%E9%BB%91%E7%99%BE%E5%90%88%E5%B0%8F%E5%8C%BA~%E5%BA%8F%E7%AB%A0;page=1 http://search.bilibili.com/all?keyword=%E6%97%A5%E5%89%A7%E3%80%91%E9%BB%91%E7%99%BE%E5%90%88%E5%B0%8F%E5%8C%BA%EF%BD%9E%E5%BA%8F%E7%AB%A0%EF%BD%9E
第1話 http://www.pideo.net/video/pandora/570d6f03e0ad765e/
第2話 http://www.bilibili.com/video/av566320/ http://www.bilibili.com/video/av566320/index_2.html 第3話 http://www.bilibili.com/video/av569059/ http://www.bilibili.com/video/av569059/index_2.html 第4話 http://www.acfun.tv/v/ac692777 http://www.acfun.tv/v/ac692777_2 第5話 http://www.pideo.net/video/pandora/cf2a678213cc78e6/ 第6話 http://www.acfun.tv/v/ac745677 http://www.acfun.tv/v/ac745677_2 第7話 http://www.pideo.net/video/pandora/ef8ef6952c701b5d/ 第8話 http://www.acfun.tv/v/ac762798_3 http://www.acfun.tv/v/ac762798_4 第9話 http://www.pideo.net/video/pandora/4d2519855643d3fd/ http://www.acfun.tv/v/ac762798_5 http://www.acfun.tv/v/ac762798_6 第10話 http://www.pideo.net/video/pandora/93f9c9a6601a4298/ http://www.acfun.tv/v/ac762798_7 http://www.acfun.tv/v/ac762798_8 第11話 http://www.pideo.net/video/pandora/3d4f41b033debbf3/ 第12話 http://www.pideo.net/video/pandora/a13d64104037b836/ ホラー映画『クロユリ団地』に先駆けて放送されるスピンオフ作品です。
井村兄妹編 あらすじ
カメラマンの井村陽介は、妹の奈緒美が自殺したことを知らされる。住んでいた黒百合団地から飛び降りたのだ。奈緒美の同僚の葉子によると、数ヶ月前から奈緒美は様子がおかしくなったらしいが、部屋は特に変わったところもなく、遺書も見当たらない。 しかし井村は、奈緒美が残したデジカメに記録された一枚の写真に違和感をおぼえる。それは、無人の部屋の片隅を写したものだった……。 第1話 刺激的な表現に年々と消極的になっているような地上波で、どこまでやれるのか。いぶかしがりながら観た第1話は、地上波にしては頑張ってました。テレビドラマでここまで直球なホラーは、久しくなかったのでは? 基本は、日本のホラーならではのじわじわ不気味な感じ。無意味なお色気シーンがあったのは、海外ホラーへのオマージュか、はたまた中田秀夫監督の遊び心か。 キャストが地味目な俳優たちだから、画も地味でホラーに合ってます。映画版の前田敦子と成宮寛貴は、ホラーにしては華がありすぎる気がします。 とにかく、鑑賞後に微妙に不安な気持ちになるくらいの力はありました。なにぶん貴重なホラー連続ドラマなので、第2話も観てみよう。 物語はまだ先が見えてきません。奈緒美の部屋に訪れていた「なにか」が、どれだけ怖いものなのか、そして予定されている全12話の最後まで緊張感が保てるのか。中田秀夫監督のお手並み拝見です。 第2話 第1話のやたらと長いダイジェストから始まってうんざりしました。前回を観た視聴者への、軽い嫌がらせです。テレビ局の人は視聴率の低下を嘆いているようだけど、これじゃ録画して観るよね。海外ドラマの「前回までは」くらいの短さで十分です。 飛び降りた葉子が、奈緒美のときと同じ姿勢で倒れてるのは笑えました。恐怖と笑いは背中合わせですから、こういう演出はありですね。 前回から引っ張っていた、奈緒美の部屋に訪れていた存在は少年の霊(?)でした。個人的には、『呪怨』に出てくる白塗りでパンツ一丁の俊雄くんなど、少年の霊はどうにも怖くない。子役の限界でしょうか、表情から素が透けて見えるから、ただの子供にしか見えません。実際に遭遇したら怖いでしょうけど。 少年の霊よりも、蛍光灯がチカチカしている団地の廊下の方が恐怖を覚えます。点滅する蛍光灯は、ホラーの超定番ですね。なぜ怖いのか不思議です。 12話もどうやって話を続けるのかと思っていたら、井村兄妹編はこれで終わりのようです。前後編で6つのエピソードをやるっぽいですね。 第2話のピークは、団地の公園らしきところで光を放ちながら回転していた謎の球体です。もしかして、映画『キャビン』のような、既存のホラーを逆手に取った超展開を期待していい?「すべての謎の答えは映画版で!」みたいなオチが待っていそうですが。 宗形瑞穂編 あらすじ 女子高生の瑞穂は、ある日を境に突然様子がおかしくなってしまう。学校へも行かず部屋に閉じこもる瑞穂を心配した母親は、瑞穂の幼なじみ真美を自宅に招き、様子を見るように頼むが……。
第3話
第3話から、監督が中田秀夫から豊島圭介にバトンタッチ。遊び心やカメラの無駄な動きを削ぎ落とした、ぐっとタイトな演出になりました。そのぶん淡々としているけど、それでもこっちのほうが好きです。 今回の怖がらせ役は、様子がおかしい女子高生の瑞穂。これが、前回の少年の霊よりよっぽど怖い。よく言う「生きている人間が一番怖い」ですね。 瑞穂は、お約束の黒髪の長髪。『四谷怪談』のお岩さんから脈々と受け継がれる日本の伝統的な恐怖の記号です。もしも映画『リング』の貞子がミルクティー色のショートヘアだったら、あそこまで怖くなかったはず。 しかしなぜ黒髪の長髪が怖いのか。私が思うに髪の毛は、過去の想いの象徴なのかと。心機一転したいとき、髪をばっさり切ることが多いですよね。積もり積もった恨み辛みを連想させる力が髪の毛にはありあます。 登場人物が女子高生でさえガラケーを使っているのに引っかかりました。明示されていないけど、少し前の時代設定なのかな。この設定は今後活かされてくるのでしょうか。 前回登場した、光を放ちながら回転していた謎の球体は、どうやらジャングルジムだったようです。昼のシーンに映っていました。なぜジャングルジムが光を放っていたのか、謎が深まります。 第4話 ホラーは、恐怖体験が始まってからよりも、そこに至るまでの前フリのほうが緊張感があって怖かったりします。というわけで、瑞穂が大暴れする今回は、得体の知れない感じが前編より薄れてしまって、あまり怖くありませんでした。 また、瑞穂に復讐されるいじめっ子の恵理子と彩乃を演じた役者が、二人とも演技力が不足していたのも恐怖感が足りなかった理由の一つ。ホラー映画は、登場人物の恐怖が観客に伝わってこそ怖い。二人が怖がっているのは演技なのが見え見えだから、こちらの感情も動かないのです。 一方で瑞穂を演じた三浦由衣は、なかなかの怪演を見せています。集中力のある女優さんですね。顔芸的なシーンが多い役どころをやりきっていて好印象でした。 いじめや友達の裏切りなど、テーマが陰惨としてる割にはどろどろした感じが薄かったのは、少年ミノルくんを通してワンクッション置いているからか。 物語のほうは、このミノルくんがどうやらラスボスのようです。ミノルくん、今のところまったく怖くないのだけど、大丈夫なんでしょうか。ラスボスが恐怖感を薄めてしまうなんて、本末転倒ですよね。 柏木不動産編 あらすじ いわくつき物件を多く取り扱う柏木不動産で働く山崎吾朗は、井村奈緒美が投身自殺した部屋も担当していた。新人の緒方みゆきの教育担当を任された山崎は、5歳になる息子の真一と二人で暮らす自宅に緒方を食事に誘う。 事故物件だという山崎の自宅に緒方は不吉なものを感じながらも、食事を共にしたことで山崎と打ち解ける。しかし、食後に山崎が咳き込んだまま倒れてしまい……。 第5話 事故物件で幽霊に出くわし腰を抜かした部下に「言ったじゃん、事故物件だって。早く慣れなきゃね」と主人公山崎がぶっきらぼうに言い放つオープニングエピソードが面白い。これまでとはちょっと違う物語を楽しめそうです。 しかし、せっかく秀逸なエピソードなのに、肝心の幽霊がただの変顔した女性だったせいで台無しに。鏡に幽霊が映った瞬間、思わず吹き出してしまいました。表情の作り方が中途半端で、笑わそうとしてるのかと。 恐怖と笑いは表裏一体なので珍しいことではないけれど、ここはきっちり恐怖を感じさせて欲しかった。ホラーは演技力が足りない演者だと、とたんにすべてが上滑りしてしまいます。 どうにも気になったのは、登場人物たちが深夜の山崎家で心霊現象に襲わたのに、次のシーンでは何事もなかったかのように爽やかに朝を向かえていること。いくらなんでも端折り過ぎです。あんな怖い目に遭ったのに、朝ごはん作って出社? 真一くんは実は……、というのがばればれな伏線がありましたが、そのままひねりのない展開を見せるのか、もしくはどんでん返しがあるのか。また、あまり出番のなかった黒百合団地にどうつながってくるのか、後編がいろいろ楽しみです。 第6話 山崎の息子真一は、実は死んでいた。ここまでは予想どおりでしたが、まさか山崎の自宅に居たのは真一の霊ではなく、ミノルくんだったとは。 第2話で少しだけ映ったミノルくんの顔を覚えていた人や、映画版を先に観ていた人は、「ちょwwwミノルくんなにやってんのwww」みたいな感じで前編からばればれだったのですね。これは大胆なエピソードです、驚きました。 てっきり、ミノルくんは黒百合団地の地縛霊だと思っていたのですが、違うようです。自由に黒百合団地から離れられるどころか、完全に実体化しています。ここまでくると、普通に生きている少年と変わらないわけで、恐怖感をほとんど感じさせません。これでいいのでしょうか。 そんなわけで、今回のエピソードも前編の方が怖かったです。毎回『クロユリ団地〜序章〜』は、前編で自ら煽って挙げた恐怖感のハードルを後編で超えられていません。ミノルくんが出てくると、途端に恐怖感が薄れてしまうのが難点です。 そんな中で冴えていたのは、山崎の自宅で深夜に聞こえていた叫び声は、息子をひき殺してしまったときの山崎吾朗の叫び声だったということ。これはとても怪談的で、薄ら寒い話です。こういった要素が、もっと映像的に活きてくると怖くなるのだけど。 渡部夫妻編 あらすじ 黒百合団地に入居してきた渡部夫妻は、過去のある出来事をきっかけにお互い秘密を抱えていた。妻の小夜里は、ときおり部屋で物が燃えるような不吉な音がすることに怯えていた。そんなある日、小夜里は公園で一人で遊んでいる少年と出会う。ミノルと名乗る少年は、小夜里に懐いてくるが……。 第7話 渡部夫妻編の監督は久保朝洋。漫画『富江』が原作のホラー映画『富江 vs 富江』を監督した人らしいです。オーソドックスで、特に特徴のない演出です。そう考えると、井村兄妹編を担当した中田秀夫監督は、やはり個性がありました。 地上波の限界なのか、たいして怖くない『クロユリ団地〜序章〜』。過去3つのエピソードは尻すぼまりだったものの、まだ前編は緊張感がありました。今回は、ついに前編からまったく恐怖感も緊張感もありません。 だってミノルくんが普通の少年なんだもの。目の奥に影がない。少年を恐怖の対象として据え置くのは無理があります。おさない子供は本能的にかわいいと感じさせる存在だから、なかなか恐怖感につながりません。 たとえワンパターンだとしても、貞子の類型でよかったのでは?ホラー映画がセルフパロディにするほどパターンが決まっているのは、決して製作者の怠慢ではないのだから。 そんな中、興味をそそったのは、映画版のメインキャストである成宮寛貴さんが登場したこと。せっかく映画と同時期の放送なのだから、こういったクロスオーバーは、もっと盛り込んで欲しいですね。 ところで『クロユリ団地〜序章〜』の放送が終わる頃には、映画版の公開も終了してそうですが、どういう順番で観ることを制作側は想定しているのでしょうか。映画版も怖くないと評判なので、映画館へ行く気がしないのだけど。 第8話 いやー、脱力しました。主人公がミノルくんを追いかけちゃうんだもの。逆でしょ?主人公は恐怖に駆られて逃げるほうでしょ?主人公がミノルくんを怖がってないから、観ているこっちも恐怖にかられません。 『クロユリ団地〜序章〜』がまるで怖くないのは、少年がもたらす緊張感の緩和が原因だと思っていたけれど、脚本のせいなのかも。ビジュアルの怖さは一瞬だけど、良く出来た怪談話は思い出すたびに怖い。地上波の制限は、怖くない理由の言い訳にならないはず。 あまりにも怖くないから、「もしかして、そもそもホラーじゃないのかな?」と、思わず公式サイトを確認してしまったくらい。すると、映画版のトップには「戦慄ホラー」と記載されているけれど、テレビドラマ版のページにはホラーのホの字もありません。(執筆時) あれ?本当にホラーじゃない?心霊現象を題材にした人間ドラマとでもいうのでしょうか。それにしては人間描写が浅いです。いったい『クロユリ団地〜序章〜』は、なにを目指して撮られているのでしょうか。 そんなこんなで白けつつ観ているとミノルくんが怨念をもった霊になった理由が遂に判明しました。ダストボックスに隠れていたミノルくんに気がつかず、そのまま回収、焼却してしまったというもの。事故か事件かは不明みたい。今後この設定は活かされるのか。 ところで、なぜ日本の映画やテレビの登場人物がネット検索するとき、架空のサイトを使うのでしょうか。海外ドラマだと普通にGoogleで検索するのに。Yahoo風やGoogle風のサイトが登場するたびに、なんだか冷めてしまいます。 しかも、今回主人公が検索に使っていた“Boogle”は、Googleのタイプミスを狙った思わしき正体不明のサイトが実際にドメインを取っています。ドラマ製作者が確認しなかったのでしょうね。ずさんです。 葉山一家編 あらすじ 人里離れた廃墟にやって来た葉山一家は、明るく、家族旅行のようだが、どこか様子がおかしい。誰もいないはずの廃墟で少年に遭遇する娘の麗奈。無人だと思っていた廃墟に一家以外にも誰かいると知った母親は、なぜか態度が一変する。揉める両親から逃げるように部屋を出た麗奈は、階下で物音がしたのに気がつき、階段を下りていくが……。 第9話
葉山一家編の監督は三宅隆太。なにを目指しているのかがぼやけていた渡部夫妻編と違って、ホラーの定番演出が多く、久しぶりに『クロユリ団地〜序章〜』がホラーしてました。 車にいつのまにか霊が乗っている。という定番エピソードが通常よりも怖くないのは、やはり昼間だからか。そいういえば『クロユリ団地〜序章〜』は昼間のシーンが多いな、と思い返して、はたと気がついた。子役は基本的には21時以降の仕事が禁止されているから、ミノルくんが出演するロケのシーンは明るい時間が多いのかも。 そんなわけで、冒頭の霊能者のエピソードは、完全にすべってるし、いらなかったんじゃね?と観ていたら、再登場して話がつながりました。けれど、スーツの上着を脱いで見た目の感じが変わっていたため、ロッカーに隠れていたのが霊能者だと分かり辛い。ながら見していた視聴者は、「誰これ?」状態だったのではないでしょうか。 相変わらずミノルくんは、怖いどころか場を和ませています。でも、今回は主人公たち葉山一家の目的が分からないサスペンスの要素を盛り込んだため、緊張感がありました。葉山佑介を追い詰めるのがミノルくんではなく、葉山佑介のドッペルゲンガーなのも「怖い話」的でよかった。 散々な出来栄えだった前回の渡部夫妻編よりも大分楽しめました。葉山一家の目的は、おそらく一家心中のようですが、なぜそこに至ったのか。霊能者はどうなるのか。舞台の廃墟と黒百合団地はどう関係するのか。これらが後編でうまく展開できれば、『クロユリ団地〜序章〜』で一番のエピソードになりそうです。 第10話 「なぜ、ミノルくんがこの廃墟にいるのか?」という、前編で気になった疑問の答えが、「霊能者の車に乗ってきた」とは……。しかも、ラストで歩いて黒百合団地に帰っていくミノルくん。歩いて⁉いくら恐怖と笑いは紙一重とはいえ、これじゃあ笑いしか起きません。 おまけにミノルくんは、部屋のドアを閉められると中に入れない有様です。たしかに、中にいる人間に入口を開けさせるため、怨霊があの手この手で化かしてくる、という怪談は昔からあります。けれどもそれらは、神社などの聖域や、結界の張られたお堂などの話。なんの変哲もない廃墟の部屋にドアを閉められただけで入れないなんて……。 それなのに、ドアの閉じた車には自由に出入りできる。まったく整合性が取れていません。怪談からテキトーに使えそうな話を持ってきただけ、ずさん極まりない脚本です。 一家心中の理由も取って付けたようなものだし、母親が夫の死を目にしても平然としている理由付けも弱い。恐慌状態だった霊能者が次のシーンでは落ち着きを取り戻していて、主人公に説教しだしたりと、人物描写もいい加減。 母親の過干渉に苦しんだ人が、自分の子供にも同じことを繰り返す、という負の連鎖も、なんで脚本に盛り込んだのか分からないくらい活かされていませんでした。 毎度のことですが、『クロユリ団地〜序章〜』は、前編の緊張感を後編で台無しにしてしまうのが好きですね。 最終章 あらすじ ある朝、小林とも江が目を覚ますと夫と娘が見当たらない。家の中を探して回ったとも江が目にしたものは、トイレで首を吊った夫の死体だった。いったいなにが起こったのか。心療内科で娘の記憶を催眠療法を使って呼び覚ますと……。 第11話
最終章の第11・12話は、『クロユリ団地〜序章〜』の総合監修を務める中田秀夫が直々に監督しています。同じく中田監督が手がけた第1・2話でも感じたのだけど、この人の演出は泥臭いというか、古臭いというか……。まさに「ケレン味たっぷり」といった感じで、はったりが利いています。 そのせいか、相変わらず冴えない脚本だったにもかかわらず、30分あっという間に観れました。「ケレン味がある」とは、必ずしも褒め言葉ではありません。でも、ホラーに限っていえば、こういったケレン味は大事ですね。 さて、なぜ第1・2話のあらすじから始まるのかと思っていたら、なんと井村陽介が再登場しました。第2話が放送されたのは2ヶ月以上前で、井村陽介が最後にどうなったのか覚えてなかったけど、生きていたのですね。 妹の死の真相を追ってミノルくんにたどり着いた井村陽介。でも髪型をきっちりスタイリングしているから悲壮感がありません。意味もなく小奇麗にヘアメイクするなんて、ホラーらしからなくて興ざめです。プライムタイムの恋愛ドラマじゃないんだから。 遂にミノルくんの母親が登場した以外は進展なし。最終回への前振りのみに終わった回でした。ミノルママを演じる女優さんの演技がくさくて、期待より不安が上回ります。 第12話 最終回となる第12話では、ミノルくんの死の真相が明らかになりました。とはいえ、その真相を知りたくなるような仕掛けが、第11話までにほとんど施されてきていません。そういうわけで「( ´_ゝ`) フーン」てな感じです。伏線なき真相にはドラマ性がありませんから。 ミノルくんこと木下稔の死の真相は、「母親に突き飛ばされたときに後頭部を強打して死亡。その遺体をダストボックスに捨てて焼却させ、事故死に偽装した」というもの。 母親に突き飛ばされたミノルくんが、後頭部をぶつけて死亡するシーンのリアリティのなさには驚きました。いくらなんでも衝撃が弱すぎる。あの程度で即死だなんて無理がありすぎです。 おそらく、子供に対する暴力描写は規制が厳しいのでしょう。そういった規制は理解できます。なので、そもそも恐怖の対象を子供にするべきではなかった。視覚的な恐怖感も弱く、表現に制限がかかるのでは、ホラーとして成立させるのは難しい。 また、今まで信じられていた「焼却炉で生きたまま焼かれてしまった」という表向きの理由よりも、真相のほうが怖くないってホラーとしていかがなものか。母親に明確な殺意はなく、過失致死だったわけですし。 ただ、真相のほうが悲しい。今まで観ていて何度か思ったとおり、『クロユリ団地〜序章〜』はホラーではなくて、心霊現象を題材にした人間ドラマにしたかったのでしょうかね。人間描写がもっときっちりしていれば、それはそれでありなのだけれど。 エピローグでは、前田敦子さんが演じる映画版の主人公である二宮明日香が登場。これは本当におまけ程度でした。せっかく映画版に興味を持たせるチャンスなのに、ドラマ性はほぼゼロで、ただ登場するだけ。最後まで空回りし続けたドラマでした。 総評 『クロユリ団地〜序章〜』を観始めたのは、地上波の連続ドラマでホラーをやるというのが物珍しかったから。早い時点で「面白くないな」と感じたけれど、2話完結だったこともあって、「次こそは」と惰性で最後まで観てしまいました。 第2話でジャングルジムが光を放ちながら回転するように歪む映像を観たときは、「もしやこれは映画『キャビン』的な超展開が待ってる⁉」と胸がときめいたのに、これぞというサプライズがないまま終わってしまいました。いったいあのSF的な演出は、なんだったのでしょうか。 そんなこんなで全12話を振り返っても、これといって書くことがないのが『クロユリ団地〜序章〜』のすべてを表しているかと。 http://marsconnector.com/entertainment/tv/kuroyuri-danchi.html 【ネタバレ有】真の死者は中田秀夫。映画「クロユリ団地」 秋元康が凝りもせずまたホラー映画を手掛けると聞いて おそらくこんなもんだろうと思いながらそれでも観に行く自分が嫌になる。
映画「クロユリ団地」は「着信アリ」「伝染歌」の秋元康が企画を担当し「リング」の中田秀夫を監督に迎えて製作されたホラー映画である。 元AKB48の前田敦子と「逆転裁判」の成宮寛貴のW主演で共演は勝村政信、西田尚美、岩松了、手塚理美。 「着信アリ」(1のみ)では三池崇史を、「伝染歌」では原田眞人を監督に迎えながら評判がさっぱりだったのは、ストーリーの辻褄だの演出だの以前に恐怖の連鎖を生み出した「リング」の亜流から離れられない秋元康のプロットに問題があったと私は考えている。 「全8章仕立てだ」と壮大な構想を発表しながら3作であっさり打ち切った「着信アリ」の後にブレイク前の AKBメンバーを使って「伝染歌」を作りこれも失敗。 「●●を使って恐怖が連鎖する」ことに限界を感じたのか今作では本家「リング」を撮った中田秀夫の力を借りて、「仄暗い水の底から」の亜流を仕掛けてきた。 根本のアイディアが手垢に塗れた二番煎じでも、中田秀夫が撮っていれば本家の血筋であるかのように見せかけられると思ったのだろう。 しかし、ここで秋元はひとつ大きな読み間違いを犯してしまった。 肝心の中田秀夫の源泉がすっかり涸れていたのである。 ストーリーは、古い団地に引っ越してきた主人公・二宮明日香(前田敦子)が次々と怪現象に見舞われるJホラーの定番。 ドラマ「クロユリ団地 序章」は明日香の越してきた団地でこれまでにどのような事件が起こってきたのか(要するにミノル君の悪行三昧)を2話1エピソードの形式で描いているが、ドラマと映画がクロスする部分は少なく、ドラマを観ていなくても 映画単体で楽しめるようになっている。 だが、団地内で起こる怪奇現象や恐怖演出のほぼ全てが既視感の強いものばかりで、はっきり言って恐怖はほぼゼロに近い。 「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」というこれまた既視感の強い作品を押し付けられた中田監督はもう引き出しの中を覗き込むことも、アイディアを絞り出すことも止めしまったように思える。 『「リング」の中田秀夫』という看板さえあればあとは惰性でも仕事は来るし、喰ってもいけると思っているようにしか見えない。 「リング」で生まれた貞子は、中田監督のもとを離れて今や始球式に登場したり、写真集を出したりと完全に女子高生のおもちゃと化しているが、過去の栄光に頼ることなく新たな道を切り拓いているだけずっとマシだ。 放送中の「序章」と比較しても、エピソードによってはドラマの方が面白いぐらいでこれでは劇場版を任された中田監督も立つ瀬がないだろう。 1話あたり30分、2話で1エピソードが完結するドラマ版と映画版のストーリーがほぼ同じ情報量しかないため 2時間も尺がある映画版に水増し感が出るのは仕方ない面もあるのだが ホラー映画はココ一番のシーンに辿り着くまでの引っ張り方が腕の見せどころ。 何も起きない時間の長さが、観客の緊張感を高めることなくそのまま間延びに繋がっているのは、やはり演出に問題がある。 縮み上がるような恐怖も、あっと驚くどんでん返しもない。 ドラマ版でひた隠しにしている「ミノル君が必殺技を出すシーン」もわざわざ隠す必要があったのかというほどそのまんまで、何の感慨もなかった。 こうなると、もうシナリオのバカバカしさを笑うしか楽しむ手段がなくなってしまうのである。 手塚理美演じる女性霊媒師が経を読み上げる際の滑稽さでクスクス、 「しっかりしろ!あれはお前の家族じゃない!」と前田に思いっきり平手打ちを入れた直後に、今度は自分の恋人の声色をされあっさりドアを開けてしまう成宮の驚くべき間抜けさにクスクス、 極めつけは、ミノル君が何故死んでしまったのかの理由。 友達とかくれんぼをしていて、ミノル君が「ここに決めた」のが焼却炉。 ところが、うっかり鍵がかかってしまい、いくら叩いても出られない。 ミノル君はそのまま収集員にゴミとして回収されてしまい燃やされてしまったのでした。顔に火傷の跡があるのはそのせいだったんですね。 OH、可哀想に。 ってちょっと待て。 いくら子どもとはいえ、人間ひとり持ち上げて気付かない収集員などいるのか。 眠っていたとしても、ゴミ袋に入れてるわけでもない生身の子どもを何のためらいもなく裁断機に向かって放り投げたのか。 仮にそうだとしたら、ミノル君の亡霊は火傷跡どころの見た目じゃないと思うが。 貞子にしろ伽倻子にしろ、襲う理由が理不尽なのは構わない。 無差別に撒き散らす怨念こそが、Jホラーを世界的に有名にしたからだ。 しかし悲劇の根本をぞんざいにしてはいけない。 劇中で女性霊媒師がこんな台詞を吐く。 「いい?死んだ人の時間は止まってるの。だから死んだ人とは関わっちゃ駄目」 中田秀夫の時間は「仄暗い水の底から」を撮った2001年で止まっている。 真の死者はミノル君ではなく中田秀夫だったのである。 ヒットにこそ結びついていないが、「ラビットホラー」などで何とか新味を出そうと苦心している清水崇に比べて何という体たらくか。 しかも、「貞子3D」に続き本作も大ヒット中というWの悲劇。 あれほどもてはやされた Jホラーが世界の市場から見向きもされなくなったのは何故なのか。 関係者は今いちど考え直してみる必要があるのでは。 http://ameblo.jp/sinobi/entry-11534945886.html
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