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株式日記と経済展望
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ドイツが(とくに太平洋の)植民地を欲しがったという点です。このためには
艦隊が必要となったのです。まったく同じことを中国もやっているわけです。
2013年4月15日 月曜日
◆ルトワックの動画の翻訳:その2 4月14日 地政学を英国で学んだ
http://geopoli.exblog.jp/20286321/
●ここで戦略の三つ目の問題が出てきます。それは、「常識」は敵である、普通の人間的な感情は敵である、ということです。
●つまり、われわれの唯一の味方は、紛争の冷酷なロジックなのです。そしてこれは外交レベルで最も必要とされます。
●たとえば第二次大戦の時のドイツを思い出して下さい。ドイツ国防軍は素晴らしかったですが、空軍はそれほどでもないし、海軍は無益でした。
●陸軍の将軍で有名だったのはロンメル、グデーリアン、それにマインシュタインなどでしょうが、彼らも結局は何の役にも立たなかったわけです。つまり価値は「ゼロ」だったのですね。
●なぜでしょうか?それはヒトラーがロシアとアメリカと戦争をはじめて、同盟国をブルガリアとイタリアにしたからです。私はブルガリア軍を非常に尊敬しておりますが、それでも役には立たなかったのです。
●だからこそここで、われわれには「忍耐」(discipline)が必要になってくるわけです。この「忍耐」のわかりやすい例を挙げてみましょう。
●19世紀から20世紀に変わる頃の話ですが、ドイツの大学は世界の最先端を行っておりまして、イギリス人でさえ大学で科学や古典(ギリシャ・ローマ)をやる場合にはまずドイツ語を学ばなければならなかったほどで、唯一ドイツ語を必要としない学科は英文学だけでした。
●学問界ではそのような状況でしたが、産業界ではその差がさらに開いていて、シーメンスやドイツ銀行などは世界のトップでした。
●そうなると、1890年の時点で30年後の世界、つまり「1920年の世界はどうなっているか」と予測したとすれば、知性を持ったほとんどの人々が「ドイツが世界を席巻しているよ、当然だ」と答えたでしょう。
●ところが実際の1920年のドイツは敗戦国で、国土は荒れている状態にありました。
●では何が問題だったかというと、ドイツが(とくに太平洋の)植民地を欲しがったという点です。このためには艦隊が必要となったのです。
●まったく同じことを中国もやっているわけです。彼らは空母を持ってますが、これは完全ジョークですよね。なぜならこれで手に入れられるのは、何の影響もない小さな島くらいであり、しかもそれで世界を敵に回してしまうわけですから。
●で、ドイツは何をしたかというと、艦隊を建造しはじめたわけです。これがイギリスの支配層の逆鱗に触れて、彼らは冷酷に「ドイツ帝国海軍は破壊されなければならない」と考えたのです。当時のビクトリア女王はドイツ皇帝と親戚でしたが、これは無意味なことでした。
●ではイギリスは何をしたか。まずアメリカとの紛争を徹底的に回避したのです。
(15:00)
●アメリカはイギリスにたいしてやりたい放題したわけですが、それをイギリスは我慢したのです。これこそが「忍耐」なのです。
●次に何をしたのか。フランスと17箇所で行っていたとされる植民地争いをやめ、すべてにおいて妥協をして問題の決着を計ったのです。これで領土争いは早い段階で一挙に解決できました。フランスは100%要求を獲得できたのです。
●三つ目にイギリスがしたのは、鼻をつまんでロシア帝国と同盟を結んだのです。
●この時点でドイツは三つの帝国(英仏露)に囲まれたわけであり、唯一同盟ができる国は日本だけだったのですが、イギリスは先に日英同盟を結んで予防策を講じていたわけです。
●この三つのことをやり切るあいだ、イギリスはとにかくすべてを譲って犠牲にしてきたわけです。この時には「帝国の遺産を切り売りしている!」と言われたり、「外交官は毎日シャンペンを飲んでるだけだ」と非難されたわけです。
●ところがその結果はドイツの敗北です。
●もちろんドイツ陸軍は優秀でしたし、科学者もすごくて、ガス兵器も使ったりしましたが、それでも結果的には何の役にも立ちませんでした。なぜなら三つの帝国を相手にした状態で、いくら戦闘や戦域で連戦連勝したとしても、封鎖されて何も輸入できなくなっていたからです。
●これはアメリカが参戦しなくても最終的な結果は同じで、食べるものがなければ終わりということです。
●ではこれはどのようにして達成されたのかというと、イギリスがとても冷酷に戦略に焦点を当てていたからです。つまり「同盟国」のほうが、自国が伝統的にもっていた「国力」よりも大切であるということです。
●私のいう「大戦略レベル」とは、国家の資源や国民の支持、それに経済などですが、それと外交レベルがあり、ここで同盟国が必要になってきてすべてが決定されるわけです。
●この「同盟国」というのは、単なる外交的な言葉の上辺のものだけではなくて、本当に機能しているものであるということです。
(私のコメント)
19世紀の大英帝国において、ドイツという強力なライバルが出現しましたが、もしドイツが賢明な外交戦略を展開していたら、大英帝国の後の世界覇権はドイツが持っていたことでしょう。しかし大英帝国は宿敵でありアメリカとの紛争を回避して、同じくフランスとの植民地をめぐる争いでも譲歩する事で決着を図った。
戦略は極力単純化しなければ国論を統一できませんが、大英帝国は宿敵をドイツと定めて、対立を抱えていたアメリカやフランスと同盟関係を築く事にした。ロシアは大英帝国の本来の宿敵ですが、クリミア戦争の怨念も忘れて手を組んだ。外交戦略と言うのは「ドイツを叩かねばやられる」と言う大戦略を一つに集中させなければ失敗する。
確かに19世紀のドイツは学術的にも経済的にも台頭が著しく大英帝国を凌駕する勢いがあった。明治維新の日本が大英帝国よりもドイツを手本としたのは状況からして当然だった。しかしドイツは大陸国家であるにも拘らず、大海軍を建設して太平洋地域の領土領海を取ろうとした。当然大英帝国は危機感を感じて外交的な包囲網をドイツに対して仕組んだ。
二度の世界大戦は、ドイツを疲弊させて多くの人材を失い、東西ドイツに分割されて学術レベルも落ち込んで経済規模も日本や中国にも抜かれるほどの国になってしまった。ドイツにはビスマルク以降の大戦略家が育たず、ドイツ皇帝による失政やヒトラーの台頭によってドイツはボロボロになってしまった。最近でも最後まで東西ドイツ統一に反対したのはイギリスのサッチャー首相だった。
このような英独の対立で漁夫の利を受けたのはアメリカであり、大英帝国は没落してヨーロッパの一国家となってしまった。なぜ大英帝国は宿敵ドイツを倒したのに没落してしまったのだろうか? 「株式日記」では大英帝国を没落させた一番の原因は、日本との同盟を切った事であり、日本を敵に回す事で香港要塞やシンガポール要塞を失い、アジアの広大な植民地を失った事だ。
そうしたのはウインストン・チャーチルであり、日英同盟を解消させたのはアメリカの圧力によるものですが、チャーチルは日本がシンガポール要塞を陥落させるほどの軍隊ではないと見ていたのだろう。この事によってドイツとの覇権争いには勝ったがアメリカに世界覇権が移ってしまった。もし日英同盟が継続されていれば、日本は外交的に孤立することなくオーストラリアや中東からの鉄や石油を確保する事ができたはずだ。
しかしアメリカから見れば、日英同盟はアメリカ本土が東西から脅威を受けることであり、日本とヨーロッパが手を組まない事がアメリカの大戦略である。だから日独同盟はアメリカは脅威に感じた。松岡洋介外相は米英と対抗する為に独ソ日伊のユーラシア同盟で対抗しようとしたが、海洋国家が大陸国家と同盟してもメリットはないことが理解されていなかった。
このことは大英帝国もアメリカも同じであり、大陸国家のソ連やフランスと同盟してドイツを押さえようとしたが、大陸内部の勢力争いに巻き込まれるだけだった。結局は二つの世界大戦で大英帝国は何とか勝ったが、ドイツ・イギリス共に疲弊してアメリカとソ連が超大国として台頭した。ドイツのヒトラーはイギリスと手を組む事でソ連と対抗する事を考えていたが、米英は、ソ連とドイツとの戦争に対してソ連に援助した。
このような複雑で流動的なヨーロッパ情勢に、日本の松岡外相が取った行動はピエロであり、独ソ海戦で平沼内閣は「世界情勢は複雑怪奇なり」と称して辞職した。大英帝国の失敗はドイツに対する過剰な敵意であり、真の敵はアメリカでありソ連であった。米ソの冷戦時代は大英帝国が解体した時代であり、スエズ運河すらアメリカに取り上げられた。
日本は大東亜戦争に敗れることで中国(満州)と朝鮮半島を失ったが、大陸と手が切れた事で高度経済成長で経済大国になれた。海洋国家が大陸国家の勢力争いに巻き込まれることは大英帝国の過ちを繰り返すことであり、ドイツをヨーロッパ大陸に封じ込めておけばよかったと思う。その為に行なう必要のなかった世界大戦を二度も行いイギリスも国力を消耗した。
私の考える戦略は、海洋国家は大陸に手を出すべきではなく、大陸内部の勢力争いにも関与してはならないというものだ。アメリカもユーラシア大陸内部に手を出して失敗していますが、朝鮮戦争は忘れたい戦争であり、ベトナム戦争は思い出したくもない戦争だった。海洋には無限のエネルギー資源が眠っており、鉱物資源も豊富であり海洋権益の確保こそが日本の国家戦略であるべきである。
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