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(書評)
対日宣伝ビラが語る太平洋戦争 [単行本]
土屋 礼子 (著)
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5つ星のうち 5.0
戦時宣伝における心理学者の役割, 2012/3/10
By 西岡昌紀 -(2012年3月10日)
戦争において、検閲と宣伝は、盾(たて)と矛(ほこ)の関係に有る。即ち、検閲によって、自国に都合の悪い情報を自国民から隠す一方で、敵国民に対しては、様々な情報を流布し、その戦意喪失を狙ふ事は、あらゆる国が、戦争において行なって来た事である。第二次世界大戦における心理戦争ももちろん例外ではなく、枢軸側も連法国側も、検閲と宣伝をその盾と矛として、心理戦争を戦った。
この本は、1958年生まれの社会学者である土屋礼子さんが、第二次大戦中、アメリカ、イギリス、オーストラリアが、日本の兵士と民間人に対して作り、流布した宣伝ビラを、実物を見せながら、それらが作成された過程と、日本人がそれらのビラをどの様に受け止めたか、を分析、検証した、驚くべき一書である。
本書の内容は、私にとっては、初めて知る事の連続であった。先ず、第二次大戦中、日本人に対するビラを最初に作ったのが、オーストラリアであった事を、私は、この本を読むまで知らなかった。その他にも、興味深い事実が殆ど毎頁に書かれてあったが、この本を読んで改めて印象ずけられた事は、第二次世界大戦の際、連合国側の心理戦において心理学者が果たした役割の大きさである。第二次大戦中、アメリカやイギリスの心理学者が心理戦に果たした役割の大きさは、ロナルド シェイファー著『アメリカの日本空襲にモラルはあったか―戦略爆撃の道義的問題』(草思社)などにおいて詳しく述べられて居る。シェイファーのこの本を読むと、例えば、日本とドイツに対する都市への無差別爆撃の計画において、オルポートの様な高名な心理学者達が、何と、戦争開始前から関与して事を知らせれて驚かずには居られないが、土屋礼子さんのこの本も、その事を改めて印象ずける研究書である。この本で、私が特に印象ずけられた事は、この本で取り扱はれて居る宣伝ビラをはじめとする戦時宣伝において、大きな課題だったのは、その宣伝の実際の効果を評価する上で、心理学者が果たした役割の大きさである。これは、私の意見であるが、プロパガンダを作り、流布する事は、恐らく、心理学者が居なくても可能である。しかし、そのプロパガンダの効果を測定し、評価する事は心理学者でなければ出来無い作業である事を本書は語って居る。私は、心理学者達のこうした戦時宣伝への関与は、戦後の「民主主義」世界においても、形を変えて、世論操作などに利用されて来たのではなかったか?と思って居る。−−戦争が終はっても、戦時宣伝は終はらないのである。
ジョン・ダワーの『容赦なき戦争―太平洋戦争における人種差別』などは、この本と同じ様に、戦時中の日米の宣伝を取り上げながら、それらの宣伝にこめられた憎悪や歪曲を、双方の人種的偏見に帰する事で、大戦中のアメリカの心理学者の役割を少なくとも結果的には隠して居る様に思はれる。戦時宣伝は、アカデミズムの姿を装いながら、今も続いて居る、と私は思ふ。
(西岡昌紀・内科医/東京大空襲から67年目の夜に)
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