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http://kishida.biz/column/2004/20041201.html
角さんは無罪だった可能性が高いロッキード裁判
ロッキード事件は、アメリカの航空会社であるロッキード社が全日空に自社の製造したトライスター機を売り込む際、多額の工作資金を日本の政界や闇ルートに使ったとされる事件だ。1976年にアメリカで表面化し、1995年に裁判が終わった。
工作資金は、ロッキード社と代理店契約を結んでいる丸紅、購入先の全日空、それにロッキード社の秘密代理人契約を結んだ児玉誉士夫氏の3つのルートを通じ流れたとされた。
その3つのルートのうち、角さん(田中角栄元首相)は丸紅のルートを通じて5億円を受領したという疑いで東京地検に逮捕された(1976年7月)。この裁判には解けない疑問がある。
角さんに対する裁判の結論は、控訴棄却。つまり、検察の起訴は効力がないというもの。この結論は角さんが死亡のためになされたものだ(1993年)。逮捕されてから実に17年後の結論だった。その間、一審では懲役4年、追徴金5億円の有罪(1983年)、二審は控訴棄却(1987年)、即刻最高裁上告。二審の係争中に脳梗塞で倒れ、最高裁上告審の係争中に逝去したものだ。
この裁判の大きな問題は次ぎの3点だ。
(1)5億円を受領した物的証拠がない。いつどこで受領したのかの証拠は受け渡したとする丸紅専務の証言だけだ。受取った金をどこにやり、何に使ったのか、銀行口座への入金や領収書などの証拠がないのだ。さらに、その専務の証言も記憶にないものがある。
(2)贈収賄事件なので、首相が5億円もらうことでトライスター機を全日空に買わせる権限がないといけないが、その論拠があるはずという「感じ」なのだ。まともに考えて、総理大臣が民間航空会社にボーイングを買えだの次はエアバスを買えだの言える権限があるはずない。言える立場にもない。そんなことをして、事故でも起きたらどうするのだ。
(3)物的証拠がないので、5億円を送ったとするロッキード社のコーチャン社長の証言を検察は求めた。しかし、コーチャンはアメリカ人。日本の捜査権が及ばない。そこで、嘱託尋問という日本の裁判所がアメリカの裁判所に依頼して尋問が行なわれた。その尋問内容が証拠として使われた。しかし、その尋問に対して角さん側の反対尋問が行なわれていない。
どういうことかというと、日本の憲法37条にこのような規定がある。「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」
つまり、コーチャンを証人とするのなら、被告人である角さん側からもいろいろ質問する機会が与えられないといけないのだが、その機会が全く与えられていないのだ。これは、被告人の人権が無視されているばかりでなく、公平な裁判が行なわれない理由になる。検察の思惑通りの証言しか出てこないからだ。思惑以外の質問はしなければいいのだから。だから、被告人にも同じ人に同条件の質問の機会が与えられなければならない。
さらにこの件については、日本の裁判所が外国の裁判所に嘱託尋問すること自体がどういう法律に基づいたものなのかがはっきりしない。もし、日本の裁判所の依頼により北朝鮮の裁判所で聴取された北朝鮮人の証人の証言をもとに日本の被告人が裁かれたらどう思うだろうか。とても主権国家のやる裁判とは言えない不当な裁判だ。
ただし、この嘱託尋問証書の採用については最後の判決で違法との見解が最高裁から出された。最高裁の判断を最高裁が正した訳だが、その結果は無罪とはならなかった。(この判断は角さん亡き後のもので、一緒に逮捕された秘書官の榎本敏夫さんに対するもの)
どうして、こんな裁判が平気で行なわれたのか。裁判官、検事、被告の多くの関係者がすでに亡くなっているので、分からない面もあるが、同時に関係者がいなくなるに従い当時を振り返る論調も出てきている。
立花隆氏が角さんの金脈と人脈を批判し、首相の座から引きおろした後に起こった事件なので、世論が金権政治の権化のように角さんを見ていた。その世論にマスコミが逆らえなかった。同時にクリーンなイメージを前面に出した三木政権も角さんを金権政治の首領として批判し続けなくてはならない運命にあった。地検特捜部がその手柄を時流に乗って成し遂げた。
この事件と裁判は他人事ではない。普通に生活していた人が突然検事に呼ばれ、みっちりしごかれ、逃れたさの一心で嘘の調書に加担する。それにより国家的な犯罪がでっち上げられる可能性はいまだに高いのだ。なぜなら、ロッキード裁判が多くの疑問を残したまま、まともに検証されていないからだ。我々の記憶には田中角栄は有罪として残ったままだ。
2004年12月1日(水)
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参考資料:
木村喜助著「田中角栄の真実」弘文堂
立花隆著「田中角栄研究全記録」講談社文庫
Microsoftエンカルタ総合大百科2005 「ロッキード事件」「田中角栄」「三木武夫」
産経新聞【正論】上智大教授・渡部昇一 問題残したロッキード裁判[1995年03月02日 東京朝刊]
参考サイト:
日本国憲法
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