投稿者 上葉 日時 2010 年 4 月 19 日 09:31:21: CclMy.VRtIjPk
薩摩藩の維新を支えた残酷な史実 | キャリワカ:本 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100407/219930/
薩摩藩の維新を支えた残酷な史実
2010年4月9日(NPO連想出版 新書マップ編集部 川井 龍介)
『 明治維新のカギは奄美の砂糖にあり 薩摩藩 隠された金脈』
大江 修造 著
アスキー・メディアワークス
760円
奄美大島、あるいは奄美諸島と聞いて、すぐにはっきりとしたイメージを浮かべられる人は多くはないだろう。おなじ大島だからといって、伊豆大島と混同する人もいるくらいだ。
昨年の夏は、皆既日食の絶好のスポットとしてその名前がメディアに登場した。最近では、沖縄の普天間基地の移転先の候補として、奄美諸島の一つ徳之島の存在が浮かび上がった。しかし、全体としてこの地域が話題になることはほとんどない。
同じ南方の島々で、沖縄が太陽とするならば、奄美は月のようなイメージがある。その中心となる奄美大島は平地は少なく緑が濃く、瑞々しい亜熱帯の空気が漂う。島唄も本来は奄美で生まれた唄であり、そのメロディーも、どちらかといえば陽気な沖縄音楽に比べると、湿ったもの悲しさが印象に残る。
この島唄のなかには、サトウキビをつくる際の辛い労働を表したものがある。長い間、薩摩藩によって支配されてきた奄美は、サトウキビをこれでもかというほど作らされ、納めるよう求められた。収穫するときは、土から上、ぎりぎりのところで刈り取るよう命令されたと、島の人に聞いたことがある。
苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)を極めたこの支配は、奄美の人に薩摩に対する反発や怨恨を抱かせた。その反対に、薩摩はサトウキビによって巨大な財力を蓄えた。そして、この経済力をもとに戦艦を購入するなど近代化を進めやがて幕府を倒すまでになる。つまり、本書にあるように、明治維新には奄美の砂糖が一役買っているのだ。
幕末、明治維新に詳しい人なら、この事実はよく知っているだろうが、一般にはサトウキビがこれほど力をもっていたことや、奄美が収奪されていたことを知る人は少ないだろう。本書の著者は、化学工学が専門の大学教授だが、両親が奄美大島の出身で母方の家系は琉球王の末裔である田畑家だという。
慶長14(1609)年、薩摩藩がそれまで琉球の支配下にあった奄美諸島に侵攻し、以後支配下に置く。 「しかし、奄美侵攻は、奄美人以外多くの日本人は知らない。傷の痛みを訴えようにも、持っていきどころがない。ここに、悩みの深さがあり、先が見えない点がある」。著者は奄美にルーツを持つものとしてこう嘆いている。
というのも、本書にあるようにその支配の方法は、本土(薩摩藩)と比べて著しく差別的であった。名前や容姿についてまで島の人間とわかるように決められた。稲作を禁じサトウキビだけを作らせ、通貨の代わりに砂糖を使わせるなどすべてが砂糖のため、といっていいほどだった。
これほどまでにして獲得した砂糖の販売利益で薩摩藩は、軍艦の購入や近代的な工場の運営、あるいは留学生の派遣を賄い、また幕府から命じられた木曽川の治水工事もなんとか成し遂げたという。
幕末、明治維新の物語は、「龍馬伝」や「坂の上の雲」などのテレビドラマの人気を見てわかるように日本人の心をかき立てる。大変革が成し遂げられ、あわせてその舞台にかかわるさまざまな人間ドラマが展開されるからだ。
当然、そこでは英雄譚が目立つが、その陰には知られざる物語もまたある。企業やビジネスの成功でも同じだろう。「一将功成りて万骨枯る」というように、表舞台に立つ人間や組織に光があたる一方、奄美諸島の砂糖のように陰でそれを支えたものの辛苦もまたあるのだ。
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川井 龍介(かわい・りゅうすけ)
ジャーナリスト、Web magazine「風」編集長。音楽CD「古本屋のワルツ」(黒船レディと銀星楽団)の「波に月レコード」代表。
慶應大学卒。新聞記者などを経て独立。ノンフィクションを中心に著書多数。代表作に「『十九の春』を探して」(講談社)、「122対0の青春」(講談社文庫)。近著に「社会を生きるための教科書」(岩波ジュニア新書)。サンデー毎日で音楽コラム「Music Cafe」を連載中。
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