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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu196.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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【クリミア戦争】 国民とマスコミが強く戦争を望んで、平和を望んだ政府
の鼻先をつかんで引きずり回し、国家を戦争に追いやっていった。
2009年7月24日 金曜日
イギリス本土からスエズ運河を抜けてインド植民地にいたる
シーレーンを、ロシアが圧迫、切断しようとしていると、見えます。
◆マスコミと戦略が戦争を起こす 「戦争はなぜ起こるか」 クリミア戦争の場合 7月10日 リアリズムと防衛を学ぶ
http://d.hatena.ne.jp/zyesuta/20090710/1247227561
「戦争はなぜ起こるのか」はテイラーという有名な史家が書いた著作です。原題は「HOW WARS BEGIN」。中身はタイトルの通り、戦争がいかに開始されるかを書いています。フランス革命戦争から冷戦までの主だった戦争を取り上げています。
何せテイラーの著作ですので、読み物としても面白く、多くの示唆を与えてくれます。戦争の原因は百万通りもあるとしても、その中で「錯誤」と「不合理」が含まれないものは一つもないようです。
前回はこの本の「フランス革命戦争」の項を取り上げました。(前回)
今回は「クリミア戦争」です。私のような日本人にはあまり馴染みのない戦いですが、ナイチンゲールが活躍したことで有名です。
”遠因”だけで起こった戦争
クリミア戦争の直接原因は、僧侶たちのケンカです。「聖地管理権問題」といいます。
聖地エルサレムの管理権をめぐって、カトリックの僧侶と正教会の僧侶が争いました。カトリック側をフランスが、正教会側をロシアが応援したことから、幾人かの僧侶間の争いが大国間の対立に発展しました。
聖地管理権を取り仕切っているのはトルコだったので、フランスとロシアはトルコに軍隊を送って圧力をかけます。
フランスが海峡を通って一隻の戦艦をコンスタンティノープルに派遣したので、カトリックの僧たちが聖地の管理権を得ることになった。
ロシアはトルコ国境に軍隊を送り、カトリックの僧は管理権を少しばかり失うこととなった。
緊張が増し、各国が圧力をかけ、お互いに相手を疑い始めるようになった。
p48 「戦争はなぜ起こるか」 A・J・P・テイラー 新評論
この聖地管理権問題が発端となり、話がこじれて戦争になります。しかしこの戦いは「宗教戦争」ではありません。その証拠に、途中からもはや聖地などどうでもよくなっていたようです。
管理権は聖職者たちには重大事だったでしょうが、大国の政治にとっては些細なことです。にも関わらず戦争まで行ったのは不可解に見えます。この戦争には他にも不可解なこと、単純な合理性だけで説明できない点が多くあります。
もっとも弱い国からの宣戦布告
この問題を穏便に解決するため欧州諸国間で話し合いが行われました。そこでロシアが正教徒をある程度保護してよいという妥協にいたりました。ですが当のトルコがこれを「トルコの主権の侵害だ」と反発します。
そして驚くべきことが起こりました。弱小勢力であり、いまにも分解しかかっていたトルコの側が、ロシアに宣戦布告し戦争を開始したのです。それはトルコが「戦争を拡大すればするほど、イギリスやフランスがさらに関与してくるはずだ」と考えたからだそうです。
ロシアと対決しようにも、トルコ自身の艦隊はひどく老朽化していました。実際、たちまちロシアからの攻撃を受け、シノープ(本文中ではシノペと表記)で大敗。トルコ艦隊は全滅してしまいました。
この後、さらに驚くべきことが起こります。
政府は平和を望んでいたのに、市民と新聞が戦争に突き進んだ
ロシアの勝利はまったく合法的なものでした。先に宣戦布告したのはトルコで、ロシアは受けてたった側だからです。
にも関わらず、イギリス世論はこれに激怒しました。ロシアの勝利を「シノープの虐殺」と呼び、あたかも不法不当な蛮行であるかのように考えたのです。勝利を虐殺と言い換えることで、ロシアが不正だという印象操作が行われたともとれます。
このように世論を戦争に誘導したのは、国民自身であり、特にマスコミだったといいます。
イギリス全土で抗議集会がもたれ、戦争が叫ばれた。ここにヨーロッパ史上まったく目新しいことが起きた。この時初めて、世論というものが大きな役割を演じたのである。
…クリミア戦争はまさに、新聞に加勢された最初の戦争であった。…特にタイムズ紙は世論を誘導し、ロシアは単にトルコを侵害し打破しようとしているだけでなく、ヨーロッパの専制君主たらんとしている、と世論を信じ込ませていたのである。
p56 前掲書
他方、イギリス首相アバディーンは、平和を保つことを強く決意していました。ですが内外世論の後押しによって参戦せざるを得なくなります。このことをアバディーンは「大きな罪を犯してしまった」と深く悔いました。その後の彼は自らを罪人だと考え、自分の敷地に教会を建てることを拒否しています。
イギリスにおいては、国民とマスコミが強く戦争を望んで、平和を望んだ政府の鼻先をつかんで引きずり回し、国家を戦争に追いやっていったようです。
戦争を招いた戦略と思想の対立構造
戦争を招いたのは世論だけではありません。
大国間の疑心暗鬼もまた、事態を悪化させました。
お互いに相手を疑い始めるようになった。…イギリス政府及びフランス政府、そして一般の人びとも、専制国家であるロシアはトルコを破りコンスタンティノープルの支配権を確立しようとしているのだ、と考えていた。
しかし、ロシアとしては、イギリスとフランスが海峡を封鎖し、ロシアの貿易を不可能にするか、もしくはロシアの船舶が地中海に抜けるのを阻もうとしているのだと思っていた。
互いに疑心暗鬼となったが、その疑念の多くはいずれもほとんどが事実無根であった。
p51-52 前掲書
この疑心暗鬼の背景には、戦略と思想の対立があります。イギリスとロシアの二国の話に限定して簡略化すれば、こういうことのようです。
ロシアがコンスタンティノープル、つまりボスポラス海峡をコントロールすれば、地中海に勢力を伸ばすことが可能になります。これはイギリス本土からスエズ運河を抜けてインド植民地にいたるシーレーンを、ロシアが圧迫、切断しようとしていると、見えます。
もしロシアがイギリスと友好関係にあれば、イギリスはそんな風に心配しなくてもよかったかもしれません。あるいはロシアが聖地管理権問題に介入することも「それは口実で、本音ではトルコ掌握を狙っているのだろう」などと勘ぐらずに済んだかもしれません。
ですが当時のイギリスにはロシアを疑わざるを得ない理由がありました。これは前述のイギリス世論沸騰の理由でもあります。「当時、自由主義的な風潮のあったイギリスでは、ロシアの勢力を打ち破れば、ヨーロッパは自由になるだろうと多くの者が信じていたのである(前掲書p56)」という事情です。このような先入観をもってロシアの行動を眺めれば、なんとも疑わしく見えたでしょう。
以上をロシアから見れば、解釈は逆転します。神聖同盟の盟主であり、南下政策をとっていたロシアにすれば、イギリスの方がそれをしきりと邪魔しようとしているように見えたでしょう。
このような戦略と思想の対立という背景があったために、お互いの行動が実に疑わしく見え、疑心暗鬼が生じたのだ、と解釈できます。
構造とマスコミが国民を戦争に駆り立てる
ところで、クリミア戦争が集結した後、そもそもの原因だった聖地管理権はどうなったのでしょう。テイラーは書いています。
聖地の管理権はどうなったのだろうか。カトリックが手に入れたものやら、ギリシャ正教が手に入れたものやら、それとも双方で分け合ったものやら、私にはわからない。
p61 前掲書
僧侶たちの対立は戦争の見かけ上の原因ですが、実際はそんな瑣末なことで双方が憎みあったわけでも、戦争を決意したわけでもないようです。
戦略や思想といった大きな構造が大国を疑心暗鬼にさせ、マスコミに煽られた国民が国家を戦争に追いやっていきました。このような罠に囚われて、ささいな原因が大きな戦争につながった、とみえます。
ここから何が教訓として考えられるでしょうか?
まず、メディアに煽られて感情的に外交政策を決めるのは危ない、ということです。マスメディアが物事を大げさに報道したり、物事の印象を操作して世論を沸騰させるのは今でも珍しいことではありません。新たなメディアとして台頭しているインターネットにも同様の現象が散見されます。不確かな情報に煽られると色々害がありますが、時と場合によっては沸騰した世論が自国政府を戦争に追い込むよう作用してしまいます。
また、平和を実現するには当座の対立を穏便に収めるだけでなく、構造上の対立を避ける必要がある、ということも読み取れるのではないでしょうか。政府が平和を望んでいたとしても、思想的、地政学的、戦略的な構造が罠となって、些細な問題から戦争を発生させることもあります。諸勢力の関係を戦争を誘発しにくいようデザインしていく必要があります。火事の害を防ぐためには、その時々で火の扱いに気をつけるだけでなく、そもそも燃え易いものは火の近くから遠ざけておく、といった環境作りが有効です。
今回は以上で終わります。なおクリミア戦争にはこのエントリーで書いた他にも、色々な国の様々な事情がからみます。例えばフランスの事情などはとても重要ですが、この記事ではその辺りは省きました。ご興味の向きは、以下の本のクリミア戦争の章がポイントを分かり易く書いてあるのでお勧めです。この本は他にも色々な事件や戦争について書いてある大著なのでとても勉強になります。
原題は「HOW WARS BEGIN」。中身はタイトルの通り、
戦争がいかに開始されるかを書いています。
(私のコメント)
昨日は中国が日本のシーレーンの寸断を狙っている事を書きましたが、イギリスとロシアの関係は日本と中国の関係に良く似ています。また日本とイギリスにとってロシアや中国が外洋に出てくることは非常な脅威に思えます。当時のイギリスにとってロシアが南下してトルコを押さえてスエズ運河を制圧されたら、インドとの交通水路を遮断される事になります。
クリミア戦争といっても日本人は名前は知っていても、どのような戦争であったかを知る人はほとんどいないでしょう。現代社会を理解する為には世界史を良く知らなければ理解できないはずですが、日本の歴史教育は英語教育などの科目に比べると非常に抑圧されています。高校によっては世界史を教えない高校もあるようです。
日本のエリート教育には歴史教育と道徳教育が欠落してしまっている。そして英語などの語学によって大学入試によって選抜されてしまう。だから東大を出てもアメリカがどのような国であるかを全く知らないエリート官僚が出てくるわけです。そしていきなりアメリカに留学してアメリカ仕込の歴史を学んでくるから日本の歴史が歪められてしまう。
「戦争はなぜ起きるのか」という本は読んではいないのですが、「リアリズムと防衛を学ぶ」というブログにこの本の書評が書かれていました。この本はイギリスの歴史家のA・J・Pテイラーの書いた本であり、アングロサクソンの戦争感が良く分かるのではないかと思う。テイラーの主張としては歴史において道徳的観点を排除すべきという見方は、日本の歴史教育を受けたものから見れば驚くだろう。
歴史をあまりにも正直に分析してしまうと、時の政治家達にとっては都合が悪くなる事も多く、テイラーの著書もイギリスやアメリカやヨーロッパにおいて修正史観だと批判されている面がある。ヒトラーに対する評価もテイラーの主張は西側の拙劣な外交のせいだと主張しているが、確かにチェンバレンの外交は失敗だっただろう。
戦争がなぜ起きるのかということが歴史の大きな主題なのですが、日本ではそれが軍隊を無くせば戦争が起きないと言う事になってしまった。アメリカの占領軍によって日本は侵略戦争を行なった犯罪国家として小学校から教えつけられて、憲法9条が神聖なものとして定着してしまった。
思考能力のある者から見れば、これはアメリカ占領軍による洗脳教育であり、歴史を知る者から見れば軍隊のない国家は植民地だ。しかし日本の歴史教育ではこのような事は決して教えない。だから憲法9条がある限り日本はアメリカの植民地であるのだ。日本人にはまだその自覚が無いようですが、歴史を知る者にはそれは事実なのだ。
クリミア戦争がなぜ起きたかという主題に対して、テイラーはマスコミの誘導によるものだと分析している。事の起こりは聖地をめぐるカトリックとギリシャ正教の争いなのですが、それにフランスとロシアが介入してきた。ロシアの侵略を恐れるトルコはロシアに戦争を仕掛けて完敗した。トルコの思惑は戦争が拡大すればイギリスやフランスが関与してくると言うことだ。
イギリスから見ればトルコがロシアの影響下に入れば中東一帯が脅威にさらされる事になり、スエズ運河の行方も危なくなる。日本から見ればインドシナ半島やマレー半島がトルコの場所に当たるだろう。中国がインドシナ半島を影響下に置けば日本やアメリカにとってはインド洋への航行が妨げられる事になる。インドシナ半島は長い間中国の領土だったところだ。
昨日はキッシンジャーと中国の関係を書きましたが、日本を米中で封じ込める事は利害が共通していた。中国はソ連崩壊後はソ連の脅威がなくなり日本を脅威とみなしてプロパガンダを仕掛けてきた。朝日新聞による南京大虐殺のプロパガンダも中国が仕掛けたものだろう。そのたびに日本から謝罪の特使が飛んで行ってはODAの金が上積みされた。
日本経済を封じ込めるには中国の安いコストが武器になり、多くの日本の輸出品が競争力を失った。それはアメリカの思惑によるものだろう。キッシンジャーも「日本を経済大国にしてしまった事を後悔する」と言う発言にも現れている。確かにバブル崩壊以来日本経済は低迷が続いて、中国は高度成長経済となり今年あたりはGDPで日本を追い抜くとされている。
アメリカの基本戦略は、日本からゼロ金利の資金を調達して中国に投資すれば大きなリターンが得られると言う単純な戦略だ。中国が経済発展して豊かになれば中国にも民主主義が定着して商売が出来ると言う思惑だろう。そこがアメリカ人の御目出度いところで中国人は日本人のような文明人ではない。中国が民主化されれば自己主張の強い中国人は法律や契約を守らず国家として収拾がつかなくなる。
日中戦争が始まった原因もテイラー流に言えば日本外交が御粗末だったためであり、マスコミに煽られて戦争を始めてしまった面がある。もし当時の日本人が冷静であれば中国を軍事占領しても意味がない事は分かっていたはずだ。朝鮮半島の併合にしても日本から見れば失敗であり莫大な投資をした割にはリターンがなかった。
このようにアメリカは中国に莫大な投資をして中国は世界第二位の経済大国になり成功したように見える。しかし中国は日本人のように素直にドルや米国債を買い続けてくれるだろうか? 中国は経済の拡大によって軍事予算も拡大し続けている。中長距離ミサイルを開発して外洋型海軍を建設して南シナ海を内海化している。それに対して民主化は進まず独裁体制は強化されている。アメリカは騙されたのだ。
戦争がなぜ起きるかは歴史の重要な課題なのですが、マスコミが感情的に国民を扇動する事は非常に危険だと言う事です。アメリカのやり方も同じであり、アメリカ領土が拡大してきたのはスペインやメキシコやハワイやフィリピンなどに戦争を仕掛けさせては勝利して領土を拡大してきた。太平洋戦争も日本に対してそのパターンを応用しただけなのですが日本のマスコミやエリート達はそれが見抜けなかった。
歴史的に見て、これからの日米中の三国関係はどのようになるかは過去の歴史を分析する必要があるのです。イギリスはアメリカというモンスターを背後から操って世界の覇権を維持してきたように、日本も中国というモンスター国家を背後から操って日本の利益につなげて行くべきだ。その為には巧みな外交戦略が必要なのですが、日本にはそれだけの外交戦略家がいない。
中国や韓国が先進工業国であり続けるには日本からの技術や資本の流入が必要だ。アメリカが先進工業国になったのもイギリスからの投資が大きな要因であり、資本によってこそ日本やイギリスのような中堅国家がアメリカや中国のようなモンスター国家を操る事ができる。しかし中国は法律や契約を守る法治国ではなく人治国であり、香港のように都市部でしか民主主義は根付かない。
最終的には中国もアメリカも分裂国家となり、日本やイギリスとの関係を深めた国が発展していくようになるだろう。例えばアメリカにおいてはハワイ・カリフォルニア共和国が出来て日本からの投資によって発展するだろう。中国も台湾・上海共和国が出来れば日本からの投資で発展するかもしれない。イギリスにも香港・広東共和国が出来るかも知れない。
ソ連も一足早く分裂国家となりましたが、中央アジアのカザフスタンなどの国家にも日本は投資を進めて石油などの資源や農産物などの開発を進めれば日本の国益に繋がるだろう。旧満州地域も日本から至近距離にあり資源や農産物の供給地として見込める。資本で支配すればそれは可能だ。
これからの歴史は戦争によって領土を拡大していくのではなく、資本によって見えない形で支配する事が常識になる。韓国なども大企業のほとんどが外資となり見えない植民地になっている。中国や韓国は日本から見れば鵜飼いの鵜であり、一所懸命働いて資本家の為にカネを生み続けている。韓国人はその事を知らずに一生懸命働いている。
アメリカとイギリスの関係も植民地と帝国の関係であり、多くのアメリカ企業がヨーロッパ系の資本によるものだ。つまりアメリカ人はヨーロッパから見れば鵜飼いの鵜であり、アメリカに見込みがなけれれば資本は引き揚げられて行く。アメリカはIT大国とか金融立国などと宣伝してヨーロッパからの投資を集めて来ましたが、いずれも失敗している。アメリカは借金だらけになり資本によってさらに支配されて行くのだろう。