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今回の質問【Q:1233】
先週、NYで、「ウォール街を占拠しよう」というデモや集会があり、シカゴや
LAなど全米各地にも広がっているようです。この現象をどう考えればいいのでしょ
うか。
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村上龍
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■ 三ツ谷誠 :評論家・IRコンサルタント
「2011年の全共闘」
今回のアメリカの動き、追随する欧州を中心とする世界各国の動きを見ていて、ふ
と「2011年の全共闘」という言葉が浮かびました。活動を支える層が、資本主義が構
造的に作り出す格差の中で、彼らの言葉を借りれば「99%の層」であり、基本的にそ
れが資本主義的なシステムそのものを拒否し、もっと別のシステムを求めている活動
である点、象徴的に狙い撃っているものがWall Streetであるという点など、ベトナ
ム反戦がアメリカでは運動の中心を成す思想だった部分の違いはありますが、パリ5
月革命や日本の全共闘運動と類似する点はとても多いように感じます。
しかし、決定的に異なるのは、1968年、1969年という段階では存在した代替思想、
対抗思想としてのマルキシズムが既に霧散しており、今回の運動を通じて示される
「新しい世界」「もっとましな別の世界」のイメージがどうにも頼りない部分だと思
います。
勿論、だからと言って当時提示された思想やその世界に移行するための方法論が正
しいものだったかどうかは、随分あやふやで怪しいものだったと考えるべきでしょう
し、実際、毛沢東語録を抱えて当時文化大革命の嵐の中にあった当の中国が、いまや
イタリアやスペインなどの国債を最後に支える勢力として存在するという皮肉な世界
の中で、当時語られた思想や言葉をもう一度語るのには多少の気恥ずかしさも伴うと
いうものでしょう。
そんな事もあって、結局今回の運動の最後に語られる期待の対象は「国家」であっ
て、国家がその権限で富める者から税金を徴収し、それを「99%の層」に還元すると
いう回路だけが浮かび上がっているような気がします。また、税金という回路ではな
くても、法の力で雇用を拡大するという回路だけが語られているような気もします。
全員が個に立ち返って厳しい生存競争を強いられるこの世界にあって、生きる事を
無条件に肯定してくれる「共同体」のその最後の幻影は近代国民国家であって、共同
体の名のもとの平等を前提とするのであれば、確かに最後は国家なのであって、それ
はその通りなのでしょうが、(無意識にせよ)国家を最後の砦と考える事が本当に正
しい事なのかどうかについては、20世紀のマルキシズムがとりあえずは終わってしま
っている地平から物事を考え始めなければならない我々にとって重要な課題ではない
か、と感じます。
雇用一つ取っても、「開かれた世界」においては一つの国民国家が何とかできる課
題ではなくなっている訳ですし、価値や富の源泉を司るものが、そうは言っても彼ら
が糾弾してやまない「株式会社」である世界では、富裕層や法人に過度の負担を押し
付ける事が必ずしも良い帰結を生まない可能性もまた考えられる訳です。
ジョブスの死が最近の大きな話題でしたが、あきらかに1%の側にいたジョブスの
天才がどれだけこの世界を未来に近づけ、その新しい世界における雇用を創出したの
か、についても十分に考える必要はあるでしょう。
また、99%の側にいる事の逆に幸せをディオゲネスのように考えてみせる思想家も
もしかしたら出てくるのではないか、という予感を私自身は抱いていて、富をよこせ、
というスローガンではなく、とりあえずそこをどいてくれ、昼寝の邪魔だから、とい
うスローガンを掲げるデモも、ありうるような気がします。
評論家・IRコンサルタント:三ツ谷誠
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