http://www.asyura2.com/09/news8/msg/1249.html
Tweet |
2023年4月25日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/246026
国会で審議中の入管難民法改正案について、国連人権理事会の特別報告者らが「国際人権基準を満たしていない」として、抜本的な見直しを求める共同書簡を日本政府に送った。人権の専門家による厳しい評価なのだが、政府は耳を傾けるどころか「一方的な公表に抗議する」と反発した。特別報告者に対するけんか腰で、やや子どもじみた政府の反応。実は、今に始まったことではない。(岸本拓也、中沢佳子)
◆書簡の内容は? 「徹底した内容の見直しを」
「今回の共同書簡は、改正法案の国際人権法違反について、前回の国会提出時と変わっていないと指摘したものだ」。21日、書簡の公表に合わせ、国内の人権団体関係者らが開いた記者会見で、登壇者は強調した。
書簡は、国連人権理事会の移民の人権に関する特別報告者、宗教と信条の自由に関する特別報告者、恣意しい的拘禁作業部会が出した。
特別報告者は、日本も参加する人権理事会に任命された専門家だ。独立性を持ち、人権に関して、国やテーマ別に調査や勧告を行っている。日本の入管難民法改正案を巡る特別報告者の共同書簡は、2021年の改正法案に続いて2回目となる。
前回の改正法案は、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが入管施設で死亡した問題の影響で廃案となった。政府は、今国会で改めて改正法案を提出したが、書簡は「若干の修正はあるものの、旧改正法案と基本的に同じで、国際的な人権基準を下回っている」と切り捨て、「国際人権法の下での義務に沿うために、徹底した内容の見直しを」と求めた。
具体的には、在留資格のない人らの原則収容主義が維持されているため、日本が批准し、「収容は例外で、自由を原則」とする「自由権規約」などに反する可能性があると指摘した。
施設収容せず、国外退去まで家族や支援者ら「監理人」の下で暮らす新制度「監理措置」を設けたものの、運用は出入国在留管理庁の裁量次第で不十分と評価した。
また、収容期限の上限がなく、子どもの収容も禁止されず、収容を巡って裁判所などの司法審査が欠如したままである点も問題視。3回以上、難民申請した人らの強制送還を可能とする規定についても、「迫害を受ける危険のある国へ送還してはならない」とする難民保護の基本「ノン・ルフールマン原則」を損なうとの見解を示した。
◆斎藤健法相「わが国への法的拘束力もない」
冒頭の記者会見では改正案の廃案を求める声が相次いだ。ヒューマンライツ・ナウ事務局長の小川隆太郎弁護士は「これだけ多くの問題が指摘されている以上、マイナーチェンジでは済まない。廃案にして、国際条約と適合した難民法制にすることが求められる」と主張。恣意的拘禁ネットワークの浦城知子弁護士は「今回の改正案でも、あらゆる場面で入管の裁量権が維持されている。収容に絡む悲劇を防ぐには、入管の権限に枠をはめないといけない。廃案にして一から見直す必要がある」と訴えた。
一方の日本政府は反発する。21日の衆院法務委員会で、本村伸子議員(共産)から書簡について見解を問われた斎藤健法相は「特別報告者個人の資格で述べられたもので、国連や人権理事会としての見解ではない。またわが国への法的拘束力もない」と反論した上で、事前に日本政府が改正案について説明する機会がなかったとして、「一方的に見解が公表されたことについては抗議する。(書簡の)誤認に基づく指摘を明確にし、法案の適格性を理解していただくよう、説明していく」と述べた。
「今回の書簡の日付は18日で、公表は21日。政府に書簡を送付し、48時間置いて公開する国連のルールに基づいている」。会見に出席した全国難民弁護団連絡会議の鈴木雅子弁護士は、斎藤法相の抗弁に首をかしげる。「『一方的な公表』という主張は適切ではない。国内向けのパフォーマンスで発言したように思える」と批判する。
「法的拘束力がない」という主張についても、前出の小川弁護士は「書簡は法的拘束力を持った国際人権条約に基づいて、国連が示した解釈だ」と強調する。
2021年の国会提出時に続いての特別報告者からの書簡について、入管庁の担当者は取材に「21年の時も誤認があることを含めて指摘し、抗議した。(今回も)内容を精査し、適切に対応する」とあくまで対決姿勢のようだ。
◆共謀罪、特定秘密保護法…過去の指摘も政府は受け入れず
国連特別報告者の勧告や書簡に政府が反発するのは入管難民法に限った話ではない。
17年、特別報告者が共謀罪に対し、懸念を表明した。特定秘密保護法や放送法の解釈変更を巡っても「知る権利の範囲を狭めている」などとして、改善を求める勧告をした。しかし、この時も政府は「一方的に意見を公表した」「不正確な内容だ」と攻撃的な構えを見せた。
英エセックス大人権センターフェローの藤田早苗氏(国際人権法)は「特別報告者は一私人として活動しているのではない。『国連人権機関の王冠に載せる宝石』と言われる重要な役割だ」と勧告や書簡の重みを説く。
そもそも日本は長年、人権理事会の理事国を務め、特別報告者の制度をつくってきた一員であり、自由権規約や難民条約など、複数の人権条約を締約している。
藤田氏は「日本は締約国として、条約を履行する義務がある。特別報告者は履行に必要なことを提案してくれる。その指摘を真摯しんしに受け止め、取り組む必要がある。しかし、日本は勧告などが出るたびに反論することが多い」と苦言を呈する。
中央大の中坂恵美子教授(国際法)は「政府は納得がいかない点があれば理由を説明し、国連側の意見を聞いた上で、改めて主張する『建設的対話』につなげなくてはならない」と諭す。
「人権条約機関や国連の人権機関は日本と対立する存在ではない。同じ方向を目指しているものとして、勧告や書簡を活用していくべきで、一蹴すべきではない」と、前向きなやりとりを求める。
日本は人権外交の推進をうたい、特別報告者制度の設置にも合意しているのに、指摘を受けるとへそを曲げ、声を荒らげる。
そんな政府の態度を、明治学院大の阿部浩己教授(国際人権法)は「特別報告者の勧告は、どの国も痛いところを突かれる。しかし、人権保障に前向きの国なら、問答無用と切り捨て、特別報告者をおとしめることはしない。制度に対する信頼が薄まり、国際人権保障体制を弱めるからだ。日本政府の振る舞いは未熟で幼稚だ」と批判する。
阿部氏は勧告や書簡を無視する対応は、人権を侵害し続ける国と同じだと説明。「指摘を全く受け付けないのは、特別報告者の任務の否定になる。日本は人権保障の仕組みを推進するべき立場なのに、矛盾している」と語り、日本にとって結果的にマイナスだと訴える。
「政府の対応は『日本は人権保障の取り組みをリードする存在ではない』と国際社会に示しているのと同じ。人権問題の改善を阻みかねず、人権意識が低い国の態度そのものだ」
◆デスクメモ
2017年に国連特別報告者から相次いで指摘を受け、政府が反発した時、戦前の「リットン調査団」への対応になぞらえられた。満州国の存在が認められず、日本が国際連盟を脱退する引き金となった出来事だ。独善的な姿勢が行き着く先は何だったか。歴史をかみしめるべきだ。(北)
【関連記事】入管難民法改正案「再考を」 研究者400人超が声明を発表した理由とは 「日本社会を見直す試金石に」
▲上へ ★阿修羅♪ > ニュース情報8掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > ニュース情報8掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。