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3月15日20時59分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090315-00000559-san-soci
小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、準大手ゼネコン「西松建設」(東京)が拠出した巨額の違法献金は、小沢氏の影響力を期待し東北地方の公共工事受注を狙ったものだった疑いが強まっている。政治家、ゼネコン、公共工事…。事件をめぐるキーワードは東京地検特捜部がかつて摘発したゼネコン汚職を彷彿とさせ、旧態依然とした「政・業」の癒着構造が、形を変えて温存されてきたことをうかがわせる。
「(献金は)ダムや空港など東北地方の公共工事の受注のためだった」
ダミーの政治団体を使った小沢氏側への迂回献金が、平成18年までの12年間で2億円近くにのぼった西松建設。捜査関係者によると、西松前社長の国沢幹雄容疑者(70)ら西松の関係者は特捜部の調べに、“実弾”の趣旨についてそう供述しているという。
公共工事の受注を狙った政治家側へのカネ−。
すぐに思い起こされるのが、5〜6年に建設相や宮城県知事、仙台市長らが、大手ゼネコン幹部らとともに摘発されたゼネコン汚職事件だ。ゼネコン側が、公共工事をめぐる、いわゆる“天の声”を期待して政治家にわいろを渡すという「政・業」の癒着構造があぶり出された。
事件の背景には、東北地方の強固な談合体質とその変質があったといわれている。
東北地方の政界関係者が明かす。
「東北では古くから大手ゼネコンの支店幹部が談合の仕切り役となって業界をまとめ、うまみのある大規模工事は大手が独占していた。西松などの後発組は、それが不満で発注権限を持つ地方首長らにわいろを渡すようになり、強固だった談合組織に亀裂が入った」
西松関係者によると、ゼネコン汚職後、西松が頼ったのが、自民党を離党したばかりの小沢氏だった。
西松と小沢氏との関係の背景には、自民党元副総裁の故金丸信氏の存在がある。金丸氏は竹下派七奉行の中でも、小沢氏を特に重用。金丸氏の次男が西松元社長の娘と結婚しており、「金丸氏から西松を託されたのが小沢氏だった」(西松関係者)という。
建設業界に君臨した故田中角栄元首相の秘蔵っ子とも呼ばれた小沢氏は、自民党を出た後も、東北地方の建設業界に影響力を持ち続けてきたとされる。
西松はこのころ、ダミーの政治団体を使った小沢氏側への迂回献金を始めた。 「○○(大手ゼネコン)さんからは、これくらいの献金を受けている。西松さんも、もっと増やすことはできないのか」
小沢氏側の窓口は、小沢氏の「側近中の側近」といわれた元秘書だったとされる。
西松は元秘書と、年間2500万円程度を献金する約束を取り交わした。献金先を指示されるなど、元秘書の“言いなり”だった。
「元秘書は東北の公共工事に強い影響力があった」
西松元幹部はそう話すが、小沢氏の“虎の威”を借りた結果であるのは想像に難くない。
ゼネコン汚職後、業界の“手法”はどのように変化したのだろうか。
東北の建設業界に詳しい国会議員秘書は「ゼネコン汚職後に水面下で談合は復活したが、業界では教訓として、わいろによる受注工作は行わなくなった」と前置きし、こう話す。
「代わりに頼ったのが小沢氏の影響力だ。依然として大手ゼネコン支店幹部が談合を仕切るが、その後に小沢氏の元秘書の了承を得て、受注額に応じて小沢氏側への献金額が決まる。つまり、裏のわいろが表の献金に変わったわけだ」
捜査関係者の話では、小沢氏側が18年まで、多数のゼネコンから年間総額2億円の資金を集めていた疑いが強いことが分かっている。
そのうちの多くが、東北地方を中心とした下請け業者側をダミーにした献金やパーティー券の購入だったとみられている。ある下請け業者は「献金の入金が遅れると、小沢氏の元秘書から『早く振り込め』と催促された」と証言した。
ただ、献金が特定の工事受注のためかというと、必ずしもそうではないという。
ゼネコン関係者はこう打ち明ける。
「業界では、小沢事務所に受注の邪魔をされたくないから競って献金するし、選挙の応援もする。献金は保険みたいなもの。一種のみかじめ料といってもいいかもしれない」
みかじめ料とは、“暴力装置”が飲食店などから徴収する用心棒代のことだ。
建設業界は度重なる談合の摘発や公共工事の減少などで弱体化し、そこに政治家側が付け入って幅広くカネを徴収する−。両者の微妙なバランスを示す象徴的な比喩(ひゆ)といえる。
捜査関係者は「ゼネコンと政界の癒着構造は今も昔も変わっていない」とした上で、こう指摘した。
「政治家は基本的に何もしないことが多い。隠然たる影響力をちらつかせて業界から献金を集める。それが法に触れず、有効にカネを集める手口だ」
小沢氏は公設第1秘書の大久保隆規容疑者(47)が逮捕された後の記者会見で「私はなんらやましい点もありませんし、政治資金規正法にのっとって正確に処理し、収支もオープンにしております」と語った。
小沢氏はこれまでも、自身の政治資金問題が浮上するたびに適法処理を強調し、その場をしのいできた。だが、そのオープンな献金の“性質”が問われたのが今回の事件である。
「東北での影響力を期待した西松から、違法な献金を受け続けた構図は収賄とよく似ている」(検察関係者)。特捜部は、ゼネコン側などから一斉に参考人聴取して実態解明を進める。