01. 2013年3月13日 18:06:49
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>「煙霧」(気象庁発表)はどこからやって来た?地表
関東で大騒ぎになった「視界不良」 黄砂と煙霧どこが違う? 気象予報士 伊藤みゆき 2013/3/12 6:30日本経済新聞 電子版 3月10日午後2時前、都心はそれまでの青空が一転、急に見通しが悪くなりました。陽射しが遮られ、それまでも多く飛んでいた花粉以上に目や鼻やのどに違和感を感じた人も多かったようです。その時間帯、twitterやFacebookのタイムラインは「黄砂? 空が黄色い!!」「空が濁ってきて、目が痛い」など、盛んにその情景を写した写真とともに埋め尽くされました。
気象庁の観測では午後1時半から午後3時10分にかけて「煙霧(えんむ)」を観測。肉眼で水平方向に目標物が見える最大距離である視程は、一時2キロメートルまで落ちました。視程は、大気の混濁の度合いを表す尺度の一つですが、例えば、冬の快晴時で東京から富士山が見えるようなときの視程は約100キロメートルほどです。
この「煙霧」。昨日から今日にかけて、その意味や黄砂との違いについて、気象庁の天気相談所にも問い合わせが相次ぎ、職員の皆さんは休む間もなく対応に当たったそうです。 「煙霧」は天気の一種です。日本の天気は国内用に15種類に分けられていますが、「煙霧」は「晴れ」や「雪」と同様天気を表す言葉なのです。15種類の中には、皆さんがよく聞く「快晴」「晴れ」「霧」といった言葉や、「砂じん嵐」などあまり耳にしない言葉もあります。「煙霧」はその一つで、「晴れ」や「雪」と同様「天気」なんですね。 煙霧の定義は「肉眼では見えないごく小さい乾いた粒子が大気中に浮遊して視程が10キロ未満の状態」とされています。「ごく小さい乾いた粒子」には、海塩粒子なども含まれるため、強風の海辺で、上空は青空なのに水平方向は白っぽく霞んでいるときも「煙霧」となります。波しぶきが蒸発して塩分が空気中に漂って視界を悪くしているのです。 煙霧を通すと太陽光は黄色みを帯びたり赤っぽい色に見えたりするため、「黄砂では?」と思われますが、黄砂と煙霧は別のものとして扱われます。明らかに「大陸の黄土地帯などが発生源」と断定されるものが「黄砂」ですが、発生源や浮遊しているものが特定できない場合は「煙霧」になります。「黄砂」は先ほど紹介した15種類の「天気」ではありません。「煙霧」と呼ぶ現象の一部が、その発生源によっては、「黄砂」と呼ばれ、区別されるのです。 多くの方が知っている黄砂現象は、東アジアの砂漠域(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯から、強風により大気中に舞い上がった黄砂粒子が浮遊しつつ降下する現象。今回は、この黄砂予報と同時期に発生した煙霧だったことから多くの方がそれを黄砂だと考えたのだと思いますが、9日から10日にかけて北陸や甲府までで観測された黄砂は、関東までは飛来しませんでした。今回、東京の空を霞めたのは北関東が発生源の土ぼこりとみられています。 ■2013年に入ってから東京で3度目だった「煙霧」 煙霧は特に珍しい現象ではありません。東京では今年に入って3度目の観測でした。1度目が2月7日の午後1時半から午後4時。午後3時時の視程は8キロでした。次が3月8日の朝5時40分から6時50分。快晴でしたが視程が7キロで空は霞んで見えました。今回は都心の視程も2キロまで落ちるなど大規模だったので大きな話題になりました。東京だけでなく、横浜も1.5キロ、熊谷も3キロまで視程が悪くなりました。 こうした現象と似たものは、実は、多くの方が体験しているかと思います。それは、学校のグランドなどで起きる「砂塵」。風の強い日の体育や部活動中に、遠くから自分の方へ砂嵐が進んできて、あっという間に肌や目が痛くなったことがあるでしょう。大きな砂などはすぐに落下しますが、小さな粒子がいつまでも空に漂って空が霞む状態が「煙霧」になります。 春は全国的に空気が乾いて気温も上がってきます。さらに、低気圧が周期的にやってくるため、たびたび強風に見舞われます。このため春は「煙霧」が起こりやすい季節といえます。 今回大規模になったのは、風が強かったから。関東では3月としては記録的な高温で、東京でも史上最速で夏日になりました。一転、翌朝には2〜3度まで気温が下がるなど、大きな空気の入れ替わりがありました。その時にほとんど雨もなく空気が乾いていたため、強風によって広範囲に細かいチリや砂などが舞い上がったのです。 今回は数時間程度で収まりましたが、煙霧が長期間続くと、日照時間が減少したり、地球の熱を留めてしまう温室効果につながったり、雲の発生にも影響を及ぼすと懸念されています。また黄砂は飛来する間に様々な物質を吸着するとも考えられています。いずれも、日本だけの問題ではないため、国際的に黄砂観測や予測業務の強化や研究開発の連携を図っていくことが議論されています。 伊藤みゆき 気象予報士。証券会社社員を経て、気象予報士に。日本テレビ衛星「NNN24」の初代気象キャスターに合格。現在はNHKラジオ第一「ラジオあさいちばん」気象キャスター。 光文社の雑誌『STORY』などで連載を持つなど、幅広く活動中。
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