http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/759.html
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イクチオステガの想像図。今回の研究でスキャンに用いられた化石の骨格が見えるよう、皮膚を透明にしてある。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120524002&expand#title
Dave Mosher
for National Geographic News
May 24, 2012
最初期の陸上四肢動物の1種、イクチオステガ(Ichthyostega)は、歩くことができなかったようだと、3Dモデルを使った最新の研究が示唆している。
イヌぐらいの大きさのこの動物は、短い4本の脚のうち2本だけを移動に使い、陸上では、ぱたぱたと跳ね回っていたと考えられる。
最近まで、イクチオステガはサンショウウオのように4本の脚を使い、泥の中をはい回っていたと考えられてきた。しかし今回、イクチオステガの骨格をはじめて3Dでデジタル再構成したところ、前肢が十分に回転せず、4足歩行はできないことがわかった。
また3Dモデルによると、後肢はほとんど地面に触れていないようだ。せいぜい、現在のムツゴロウのように泥の中で跳ね回るときに、下半身を支えている程度だっただろう。
◆「ミスター・マジック」の化石
骨格を持つ陸上四肢動物の最初の祖先は、海中で生まれたと科学者は考えている。それから何千万年もの進化の過程を経て、四肢動物はデボン紀の海岸に上がり始めた。
化石の変化をたどると、泳ぐ動物から歩く動物への移行の最初の兆候は、約3億9000万年前、つまり、イクチオステガの最初の化石よりも約3000万年前に見られる。
ロンドン大学王立獣医学カレッジ(Royal Veterinary College)の古生物学者ステファニー・ピアース氏(Stephanie Pierce)の研究チームは、イクチオステガの歩行法を探るため、グリーンランドで見つかった「ミスター・マジック」と呼ばれるほぼ完全な化石をスキャンして、3Dのコンピューターモデルを作成した。欠けている部分は、やはりイクチオステガのものとされているほかの12個の標本の化石骨のスキャンで補った。
比較のため、現生のワニ、カワウソ、アザラシ、カモノハシ、サンショウウオの骨格もスキャンし、同様にモデル化した。
「動物のモデルをコンピューターで制御して動かしてみたところ、イクチオステガはほかの現生動物と大きく異なって見えた」とピアース氏は話す。「イクチオステガが脚を使って何かまったく別のことをしていたに違いないことをはっきりと示す結果だった。問題は、何をしていたかだ」。
◆ムツゴロウのように
さらに分析してみると、イクチオステガの前肢の動きは非常に限定されており、背骨も曲がりにくいらしいことがわかった。後肢は、体を前に進める四足歩行の役には立っていなかったことも推測された。
イクチオステガは、歩くのではなく、前肢を前後に「漕いで」いた可能性が高いと、ピアース氏らは結論づけた。ムツゴロウが短い胸びれで泥の中を滑って移動するのに近い。
イクチオステガを「親友」と呼ぶスウェーデン、ウプサラ大学の古生物学者ペル・アーンベリ氏は、ピアース氏のチームの業績は、海中から陸上への移行期の動物を対象とした初めてのこの種の研究であり、非常に詳しいものだと評価する。アーンベリ氏は今回の研究に参加していない。
しかしアーンペリ氏は、イクチオステガの後半身がほとんど何もしていなかったという見解には異論を唱える。
「そこには多くの筋肉が付いていたと考えられる。骨盤も(とくに魚と比べると)非常に大きく、何か大切な働きをしていたに違いない。そうでなければここにあるはずがない。進化上のコストが大きすぎる」とアーンベリ氏は指摘する。
しかしピアース氏の研究チームは、後肢と骨盤は、どちらかというと泳いだり漕いだりするために使われたと主張する。イクチオステガの主な移動方法は、そのようなものだったと考えているのだ。一方アーンペリ氏は、「賭けてもいいが、イクチオステガの固い背骨からすると、泳ぐと奇妙な姿になったはずだ。お風呂に浮かべるゼンマイの魚のおもちゃのような感じだ」と話す。
ピアース氏のチームは今後、この古代生物の背骨についてさらに細かい計算をして、完全に生きているような動きを再現したいと考えている。
「当時の陸地は生態学的に完全にフリーな環境で、いくらでも利用できた。これら初期の四肢動物には何をすべきかがわかっていた。そこは彼らの自由になる世界だった。彼らがこの新しい環境でどのようにしてしっかりと歩くようになっていったのか、そこを解明したい」とピアース氏は話している。
イクチオステガについての研究は、「Nature」誌の電子版に5月23日付けで掲載された。
Illustration courtesy Julia Molnar
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