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地球初の細胞を持つ生命体は、原始時代の海ではなく、火山による蒸気で熱せられ、ぬるぬるした泥がたまる熱泥泉で生まれた可能性が高いとの研究結果が発表された。
最新の細胞および地質関連の研究に基づくこの説は、高名な自然科学者チャールズ・ダーウィンがかつて提唱した、生命は栄養素に富む「小さな暖かい池」で生まれたとの考察にも近い。
進化論の初期のころのダーウィンの考察とは異なり、近年では生命の起源を海に求める理論が主流だった。これは生命が繁栄するオアシスが海底で続々と見つかっているためだ。
こうした深海の生態系では、単純だが悪環境に強い微生物が熱水を放つ噴火口から生じる有毒な無機物を食料として生きながらえている。これは多くの専門家が、地球上で最初の細胞が生まれた場所に近いと考えている環境だ。
しかし今回発表された新たな研究は、あらゆる細胞が細胞膜の中に蓄える液体の組成は、原始時代の海水とは似ても似つかないものだと指摘している。
一方で、この細胞内の液体は陸上の火山性の熱泥泉に見られる、濃縮された蒸気に非常に近いことも判明した。
陸上でもこうした環境では、地球上のすべての生物の細胞内部と同様に、ナトリウムに対するカリウムの割合が高い。一方、海洋環境では圧倒的にナトリウムの割合が高い。
「細胞が分子機械であるタンパク質を合成するためには、多くのカリウムを必要とする。ナトリウムはこれらの活動を阻むものだ」と、今回の研究の共著者でドイツのオスナブリュック大学所属の生物物理学者、アルメン・ムルキジャニアン(Armen Mulkidjanian)氏は指摘する。
「生命はタンパク質を合成せずには生きられないため、細胞内のカリウムの濃度を高く保つ必要がある」。
◆生命誕生時の環境を維持する細胞
現在の生物の細胞は複雑なタンパク質を用い、細胞膜を通して余分なナトリウムを排出することで正常な機能を保っている。
しかし誕生して間もない細胞では、そのような仕組みを使うことはできなかった。原始的な細胞膜と、内部に運良く取り込めたあり合わせの栄養物で生きていくしかなかったはずだ。つまり、初期の細胞は透過性が高く、完全に周囲の環境に左右される性質を持っていたと考えられる。ナトリウムに対するカリウムの比率も、周囲の環境に応じて、カリウムの方が多くならざるを得なかったのだろう。
しかし原始時代の海水は、現在の海水と同じく、ナトリウムとカリウムの比率は40対1で、圧倒的にナトリウムが多い。
この難問を踏まえ、ムルキジャニアン氏をはじめとする研究チームは複数の地質学者の協力を得て、43億年前から38億年前の間に生物が出現した可能性のある海以外の場所について検討した。
その結果、陸地の地熱地帯、特にイエローストーン国立公園で見られるような熱泥泉でも、生物の発生は可能であることが判明した。
「熱泥泉とは地中から蒸気が湧き上がり濃縮される場所で、この蒸気にはカリウムをはじめとする多くの無機物が含まれている」とムルキジャニアン氏は説明する。「見た目は地中から湧いてくる泥だまりのようで、初期の細胞にとっては絶好の生命のゆりかごになっただろう」。
これまで長い間、熱泥泉と原始時代の泥だまりとの類似性は否定されてきた。というのも、現在の熱泥泉には硫化水素が大気中の酸素と化合して生まれる猛毒の化学物質、硫酸が大量に含まれているからだ。
「酸性の強さを理由に、この説は敬遠されてきたが、原始の地球の大気では、酸素濃度は低かったはずだ」とムルキジャニアン氏は指摘する。「こうした酸素の少ない環境が長期間にわたって維持されており、これが地球で最初の生命を育む助けになったと考えられる」。
生命の起源は陸上にあったとする今回の研究は、2月13日付で「Proceedings of the National Academy of Sciences」のオンライン版に掲載された。
Dave Mosher for National Geographic News
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120214-00000001-natiogeo-int
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