http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/611.html
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シュレーディンガー猫状態光パルスの量子テレポーテーションに成功
1.発表者:古澤 明(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 教授)
2.発表概要:量子力学の黎明期に提案された二大パラドックスである、シュレーディンガーの猫とアインシュタイン・ポドロスキー・ローゼン(EPR)のパラドックスをテーブルトップで同時に実現し、それらを組み合わせてシュレーディンガー猫状態光パルスの量子テレポーテーションに成功した。
3.発表内容:量子力学は黎明期に、その根幹を揺るがすいくつかのパラドックスが提案された。中でもシュレーディンガーの猫とアインシュタイン・ポドロスキー・ローゼン(EPR)のパラドックスは最も有名である。シュレーディンガーの猫とは、人間が直接見ることのできる巨視的なもの=猫が重ね合わせの状態になるのか、というパラドックスであり、EPRのパラドックスとは、量子もつれ状態(注1)にある2つの量子対は、空間的に離れていても片方の測定の影響がもう片方に及ぶのか、というものである。
これらは20世紀初頭の量子力学黎明期には頭の中で行う思考実験であったが、21世紀のテクノロジーにより、テーブルトップで同時に検証できるようになった。その具体的なかたちが、今回成功したシュレーディンガー猫状態光パルスの量子テレポーテーション(注2)である。
シュレーディンガーの猫とは、生きた猫と死んだ猫の重ね合わせの状態であり、観測すると生きた猫か死んだ猫のどちらかになる。本実験では、これを位相が反転した光の波動の重ね合わせとして実現した。また、量子テレポーテーションでは、量子もつれ状態にある2つの光ビームを生成し、片方への測定がもう片方へ及ぶことを用いて、シュレーディンガーの猫状態にある光パルスを伝送した。つまり、重ね合わせの状態を保って伝送に成功した。
ここで重要なことは、シュレーディンガーの猫状態はそれを直接測定すると生きた猫か死んだ猫になってしまい、重ね合わせの性質が失われてしまうが、量子テレポーテーションでは、送信者側の測定が間接測定になるため、重ね合わせの性質を失わずに送ることができる。つまり、量子テレポーテーションは、測定により壊れてしまう重ね合わせ状態を送れる唯一の方法であり、今回、これを目に見える形で実現に成功したことになる。
この成果は、量子力学基礎の検証という意味ばかりでなく、量子情報通信・量子コンピューター実現に向けた大きな一歩である。特に、超大容量光通信への極めて重要な一歩である。
4.発表雑誌:「Science」(4月15日号)
論文タイトル:Teleportation of Non−Classical Wave−Packets of Light
著者:Noriyuki Lee, Hugo Benichi, Yuishi Takeno, Shuntaro Takeda, James Webb, Elanor
Huntington, and Akira Furusawa
6.用語解説:
(注1)量子力学では1つの量子で1つの物理量のみ正確に決めることができ、2つの量子では2つの物理量を正確に決めることができる。2つの量子が量子もつれ状態にあるとは、2つの量子にまたがった物理量(例えば2つの量子の位置の差)が2つ決まっている状況である。したがって、量子力学に反することはないが、片方の測定の影響がもう片方に及ぶことになる。
(注2)量子テレポーテーションとは、量子もつれ状態にある2つの量子を情報の送り手と受け手で1つずつ持ち、送り手側で送りたい状態にある量子と、量子もつれ状態にある量子の片方を合わせて測定し(例えば2つの量子の位置の差)、その測定の影響が受け手にあるもう片方に及ぶことを用いて、送りたい状態を受け手側に出現させる量子操作である。
量子テレポーテーションは、量子操作としては恒等変換(1を掛ける)に相当し、これを改造する(プログラムする)ことにより、種々の計算を行える量子コンピューターになる。
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=278518&lindID=4
シュレーディンガーの猫
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%8C%AB
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