http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/570.html
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http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1103/201103_042.html
以下の記事は米国 SCIENTIFIC AMERICAN誌 に掲載された記事の前文を日経サイエンス誌の編集部が翻訳したものです。(ダイナモ)
どこでも見かけるイエバエは航空工学の驚異だ。彼らがハエたたきをうまく避けて飛び回るのは,毎秒約 200回にものぼる非常に高速な羽ばたきが一因である。この驚くべきスピードを実現するため,ハエは自身の体を巧みに利用している。胸部にはよく発達した筋肉があり,ハエの飛行中,常に高速振動している。しかし神経から筋肉へ信号が高速に入力されているのではない。神経の信号はずっと低い頻度で入力される。筋肉が収縮と弛緩を繰り返すと,胸部の硬い皮膚(外骨格)も変形し,振動が継続するようになる。音叉をはじくと後に振動が続くが,それに似た現象だ。こうしてハエは少ないエネルギーを効率的に大量の動きに変換している。
多くの技術者たちが,半導体回路の小型化と微細加工技術の進歩に刺激され,ハエの動きを模倣した小さな飛行ロボットを作ろうと精力的な研究開発を続けてきた。オランダのデルフト工科大学の研究者たちが2008年に発表した「デルフライ・マイクロ(Delfly Micro)」は重さわずか3gだが,翼長は100mmあり,小さなビデオカメラを搭載できる。ハーバード大学のマイクロロボティクス研究所が作り出した飛行体はさらに小さく,重さはわずか0.06g(それでも実際のハエの重量の4倍以上)。ハーバード大学の飛行体はいったん動き始めたら飛行を制御できないという弱点がある。しかしこれら昆虫ロボットの最大の弱点は電力消費量だ。ロボット昆虫を長時間稼働するのに十分なエネルギー容量の小型電池がなく,数分しか飛ばせない。
私たちは数年前,こうした技術的問題を回避する妙案にたどり着いた。ロボット昆虫をゼロから作るのではなく,生きた昆虫を飛行ロボットとして利用する。これなら重い電池や微細加工は不要になり,昆虫の飛行に介入する制御システムの開発に集中すればよい。言い換えると,昆虫は自分自身の力で飛行するのだが,昆虫の神経筋肉系に埋め込まれた回路が離れた場所にいる操作者からの無線信号を受けて,左右旋回,上昇・下降といった指令を出す。一部は昆虫で一部は機械──昆虫サイボーグである。
昆虫サイボーグには,軍事,防衛,救助の点で具体的な応用が想定されている。小さな飛行体をターゲットの建物内に潜入させ,潜伏しているテロリストや犯罪者の人数や個人を特定できるかもしれない。また,被災地において,瓦礫の隙間に入り込み,生存者を捜索できるだろう。
著者
Michel M. Maharbiz/佐藤裕崇(さとう・ひろたか)
マハルビズはカリフォルニア大学バークレー校の電子工学・コンピューター科学科の准教授。彼の研究室は,自然が生み育てた小さな飛翔機械(つまり昆虫)の能力を活用し,コンピューター指令システムと融合することで,昆虫に飛行を指令できるようにしている。
佐藤は電気化学を用いたナノ加工プロセスに関する研究で早稲田大学から博士(工学)を取得。2007年にミシガン大学アーナバー校で昆虫サイボーグに関するポスドク研究を始め,2008年からカリフォルニア大学バークレー校に移った。なお,この記事の日本語訳を監修した。
原題名
Cyborg Beetles(SCIENTIFIC AMERICAN December 2010)
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