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SCIENTIFIC AMERICAN November 2010
日経サイエンス 2011年 2月号
以下の記事は米国 SCIENTIFIC AMERICAN 誌に掲載されたコラム記事を日経サイエンス誌の編集部が翻訳したものです。(ダイナモ)
私たちはみな常に、不確実性に直面しながら物事を決めている。どこの大学に行くのか、どの職業を選ぶのか、だれと結婚するのか、子どもをもうけるのかどうかといった選択すべてを、限られた不確実な情報を基づいて行なう。政府も同じだ。その選択がうまくいくかどうか確実に知ることは不可能であっても、交通網を助成し、規制を変え、社会福祉を実施し、宣戦布告と講和を行なう。
気候科学の細部の多くは不確かではあるが、大気中二酸化炭素(CO2)の劇的な増加に気候システムがどう反応するかについて、私たちは日常生活と政治で遭遇する多くの選択よりもずっと多くのことを知っている。過去2世紀の人間活動によって、地球は大きな危険にさらされている。もし私たちが早々にエネルギーシステムを変えて温室効果ガスの排出を減らさなければ、今世紀中に私たちの子や孫は、地球の生態系と地域の気候ががらりと変わって途上国に住む何十億人もの人々の暮らしと命が危険にさらされるのを目撃することになるだろう。気候科学と気候の評価に携わる者は一般市民とのコミュニケーションにもっと注意深く、そして率直であるべきだが、政策の進展を阻んでいるのは気候科学の不確実性ではない。
第一にしなければならないのは、「各国がCO2排出削減に真剣に取り組むには、前もってすべての国が合意する必要がある」という考え方を捨てることだ。さもなければ、ことは何十年も遅れてしまうだろう。国際合意形成に向けた努力は続けなければならないが、個々の国と地域を具体的行動に巻き込むことにもっと力を集中すべきだ。排出抑制に向けた異種の枠組みをより広範な協定にまとめ上げる国際戦略を開発し、道義的勧告か、あるいは規則に従わない地域の産品に高い関税を課すといった政策によって、出遅れ組を舞台に引きずり出す戦略を開発すべきだ。
また”先進国対途上国”という考え方をやめる必要もある。確かに、先進諸国は規制なしの温室効果ガス排出に基づく過去200年の発展から利益を得てきた。だが、あなたは最近のブラジルや中国、インドを訪ねた経験はないだろうか? これらの国の飛行機や携帯電話、自動車、コンピュータも、そうした過去の開発の結果だ。先進諸国は、排出削減を行なう余裕があるから、排出抑制をリードする義務がある。だが、責任は多くの人が考えているほど明確ではない。途上国に住む何百万人もの裕福な人々は、先進諸国の人々と同じ大量のCO2を排出している。彼らはただ乗りすべきではない。
最後に、人々が基礎を理解するのを助ける必要がある。私たちは15年以上前に Risk Analysis 誌に発表した研究で、多くの米国人が気候と天気の違いを理解しておらず、大多数が石炭・石油・天然ガスの燃焼を気候変動の主因と見なしていないことを示したが、2010年に調べ直した結果もまるで相変わらずだった。教育は容易ではないだろう。市民を混乱させておくことによって自らの短期的経済利益を守ろうと、ロビー団体が毎年何百万ドルもの金を費やしているからだ。「クライメート事件」は、この混乱を長引かせるために利用されている。
タバコとがんの関連についてロビー団体が投げかけた疑念を払拭するには、数十年かかった。CO2排出の劇的削減に向けてすぐに行動しなければ、さらに20〜30年、世界的破局につながりかねない道にとどまらざるを得なくなるかもしれない。もちろん、それが確実だとはいえない。しかし、そのリスクは現実だし、賭け率は私たちに有利とはいえない。
著者
M. Granger Morgan
カーネギー・メロン大学の工学・公共政策学部長で、気候政策決定センターの所長も務めている。
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