http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/558.html
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http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1011/201011_066.html
以下の記事は米国 SCIENTIFIC AMERICAN誌 に掲載された記事の前文を日経サイエンス誌の編集部が翻訳したものです。(ダイナモ)
二酸化炭素(CO2)の増加で地球の温暖化が深刻な問題となっていることは,本誌やニュースなどでも度々取り上げられているが,そのCO2の影響が海の中にまで及んでいることはあまり知られていない。大量のCO2が海水と反応し,海洋が酸性化しているのだ。
世界の海は人間の活動によって放出されたCO2の約1/3を吸収してきた。海によってCO2の気候への影響はいくぶん緩和されているが,そのために海洋の酸性化という犠牲を払っている。
産業革命以降,海洋表層のpHは0.12下がって約8.1にまでなった。pHは7が中性でそれより低いと酸性,高いとアルカリ性を表し,この数値が小さくなることが酸性化を意味している。0.12の変化はたいしたことのないように聞こえるかもしれないが,pH の値は対数で表されるので,この変化は酸性度が30%上がったことに相当する。私たちが今のペースで温室効果ガスを排出し続ければ,2100年までに海洋上層のpHは7.7か7.8にまで下がると見積もられている。産業革命以前に比べ,酸性度が150%も上がることになるのだ。
このような急激な変化を現存の生物種は経験したことがない。動物プランクトンのカイアシ類や巻き貝,ウニ,オニヒトデなどは,体のpHバランスを維持することに膨大なエネルギーを必要とするようになり,成長や生殖過程に異常をきたすことが実験から示されている。また,最近,米西岸北部のオレゴン沿岸でカキの幼生の死亡率が上がっており,海洋酸性化が原因ではないかと専門家は疑っている。
このように様々な生物種が短期間で絶滅すれば,海の食物連鎖が崩壊する恐れがある。著者らは,CO2の排出目標を海洋酸性化も念頭に置いて,次の100年でpHの低下が0.1以内におさまるよう設定するのが妥当だと主張している。
著者
Marah J. Hardt/Carl Safina
ハートはハワイ島に在住し,科学者,作家,コンサルタントとして活動しており,その拠点としてオーシャン・インクを創設した。サンゴ礁生態学者として教育を受け,ニューヨーク州コールドスプリングハーバーにあるブルー・オーシャン研究所の一員でもあった。世界的な魚の乱獲問題や淡水の保全に至るまで,様々な課題に取り組んでいる。サフィナはブルー・オーシャン研究所の初代所長で,ニューヨーク州立大学ストーニブルック校の非常勤教授でもある。2000 年にはマッカーサー・フェロー(毎年,米国の独創的な人物に送られる賞)を受賞している。著書に『海の歌 人と魚の物語』(共同通信社)や,『Eyes of Albatross: Vision of Hope and Survival』などがある。さらに『The View from to Lazy Point: A Natural Year in an Unnatural World』を近日出版予定。
原題名
Threatening Ocean Life from the Inside Out(SCIENTIFIC AMERICAN August 2010)
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