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http://www.nikkei-science.com/topics/bn1008_1.html#2
ネアンデルタール人のゲノム概要が解読された
解析結果は,現生人類と交配していたことを示している
ネアンデルタール人と初期の現生人類が交配していたため,アフリカ人を除く現代人のDNAの4%まではネアンデルタール人から来ている──。ドイツのライプチヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所のペーボ(Svante Pääbo)が率いる研究チームが,ネアンデルタール人のゲノムの概要(ゲノム全体の約60%に相当)を初めて明らかにして導き出した結論だ。クロアチアのヴィンディア洞窟で発掘された3万8000年以上前のネアンデルタール人の骨3本から採取したDNAを用いた。Science誌5月7日号に報告。
複数の変異領域が一致
ネアンデルタール人が現生人類にDNAを引き継いだという発見は,研究チームにとって驚きだった。ペーボは5月5日の報道発表で,「最初は統計上の何かの間違いだと思った」と述べた。今回の発見は彼の以前の仕事とはまるで対照的だ。ペーボらは1997年,ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの配列を初めて解読した。ミトコンドリアはエネルギーを作り出している細胞小器官で,それ自身が独自の小さなDNAを持っている(細胞核にある長いDNA配列とは別物)。解析の結果,ミトコンドリアDNAに関して現生人類がネアンデルタール人から引き継いだものは何もないことがわかった。
ただ,ミトコンドリアDNAは個体の遺伝子構成のごく一部にすぎないので,細胞核DNAに関しては話が違う可能性が残った。それでも,その後の遺伝子解析の結果も総じて現生人類の「アフリカ単一起源説」を支持するものとなった。ホモ・サピエンスがアフリカで誕生し,それが他の地域に広がって,既存の古人類と交配することなしに取って代わったという考え方だ。
ところが,実は交配していた。ペーボらは現代人の細胞核ゲノムの変異パターンを調べ,アフリカ人以外だけに見られる変異を含む12のゲノム領域を特定した。これらはネアンデルタール人から引き継いだ可能性が考えられる領域だ(ネアンデルタール人はユーラシアに住み,アフリカにはいなかったため)。これらのゲノム領域と,新たに配列を解読したネアンデルタール人ゲノムの同じ領域を比較したところ,10領域が一致した。つまり,非アフリカ人が持つこれら12の変異のうち10までがネアンデルタール人由来ということだ。ただし,これらの部分は機能的に重要なことは何もコードしていないようだ。
面白いことに,ヨーロッパ人に特に近いことを示す証拠は見つからなかった。ネアンデルタール人が約2万8000年前に姿を消すまで,他のどこよりもヨーロッパに長く住んでいたことを考えると,関連性が強くても不思議ではないのだが。しかし実際には,ネアンデルタール人のDNA配列は現在のフランス人とパプア・ニューギニア人,中国人のそれぞれに等しく近かった。研究チームはその説明として,交配は8万年前〜5万年前の間に中東で起こり,その後に現生人類が他の旧世界地域に広がってさまざまな集団に分かれたのだろうとみている。
アフリカ起源vs多地域進化
古人類と初期現生人類が交配していたと化石記録に基づいて主張してきた古人類学者にとっては,今回の発見は驚きでも何でもない。ユーラシアにいたネアンデルタール人や東アジアにいたホモ・エレクトスは初期のホモ・サピエンスと交配していたので私たちの祖先と見なせるという考えで,アフリカ起源説に対して「多地域進化説」と呼ばれる。
現代人のなかにネアンデルタール人のDNAが検出されたことは,これらの科学者にとっては吉報だ。「多地域進化を裏づける重要な証拠だ」と,同説の主唱者であるミシガン大学アナーバー校のウォルポフ(Milford H. Wolpoff)はいう。
一方,アフリカ起源説に立つロンドン自然史博物館のストリンガー(Christopher B. Stringer)は今回のゲノム解析結果が「アフリカ以外にいる多くの人々がネアンデルタール人の遺伝形質をいくらか持っている」ことを示すと認めながらも,現生人類の起源に関してはアフリカ説がほぼ確実だと主張する。ベルン大学(スイス)の集団遺伝学者エクスコフィエ(Laurent Excoffier)も同じ見方だ。現生人類がヨーロッパに入り込んでからはいわれるような交配が続かなかったことを指摘し,「種分化では常に,分かれつつある2つの種が交配可能な過渡期がある」と説明する。
現生人類特有の変異配列
ネアンデルタール人ゲノムの解析は,初期の人類がどのように関連していたかを照らし出すだけでなく,現生人類のゲノムのどの部分が他の生物とヒトとの違いをもたらしているのかを明らかにするのに役立つ。
ペーボらはこれまでに,現代人のゲノム中にネアンデルタール人には見られない変異配列を含む領域をいくつか特定した。これらの変異は現生人類の適応に役立った可能性があるといえる。認知機能の発達や精子の運動能力,皮膚の生理機能に関係する領域を含んでいるが,現生人類に生じたわずかな変異がこれらゲノム領域の機能にどんな影響を及ぼしたかは未解明だ。
ペーボはいう。「ヒトの特色の起源を探る試みは始まったばかりだ。いまようやく,それが可能になった」。
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