http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20100503k0000m030041000c.html 毎日jp 2010年5月2日 19時44分(最終更新 5月2日 22時40分) 【ワシントン古本陽荘】米南部ルイジアナ州沖の石油掘削施設爆発による原油流出は、海底で噴き出す原油を止める作業が難航し、メキシコ湾沿いの州の生態系や経済活動に深刻な影響を及ぼす可能性が濃厚となってきた。規模も89年のアラスカ沖の原油流出事故を上回る米史上最悪となる恐れが浮上している。政府の対応の遅れに対する批判の声も高まりオバマ大統領は2日、現地を視察し政権が一丸となって取り組む姿勢を訴える。 大統領は3月に原油・天然ガスの沖合掘削を柱とする新エネルギー安全保障政策を発表。今回の事故でも方針を変更する考えがないことを強調した。もともと、沖合掘削は共和党の要望を受け入れた政策で、気候変動対策法案への協力を促す「呼び水」の色彩が濃い。政策見直しを求める声が環境派の民主党議員らから出ており、政策面でも厳しい立場に追いやられそうだ。 大統領は1日、現場対応の責任者として米沿岸警備隊のアレン司令官を任命した。 だが、事故発生から10日以上たって本腰を入れたとの印象は免れず、米メディアからはオバマ政権の危機管理能力を問う声が高まっている。対応の遅れが問題になったブッシュ前政権下のハリケーン・カトリーナの「二の舞い」と報道する米メディアもある。 さらに、政府は1日当たりの原油流出量を80万リットルと見積もっているが、その5倍の400万リットルと推計する専門家もおり、被害の実態は不明だ。濃淡の差はあるが、原油の帯は長さ200キロ、幅100キロ以上に拡大し、一部は既に沿岸に漂着。沿岸警備隊の艦船が海上にオイルフェンスを張り、米軍の輸送機が処理剤を散布するなど対応に当たっている。 沿岸州はカキやエビなど漁業が盛んな地域で、場所によっては壊滅的な被害が出る恐れがある。ペリカンなど野生動物なども多く生息するルイジアナ州の湿地帯に漂着した場合、原油を簡単に除去する方法はなく、生態系自体が崩れる可能性も指摘されている。 油田の掘削権を持つ英BP社は既に事故の賠償を行う意向を表明しているが、ロイター通信は今回の被害規模は数十億ドル(数千億円)に上ると報じた。 油田の海底のパイプ口には流出を止める噴出防止装置が備え付けられていたが今回は作動せず、ロボットを使った遠隔操作で、装置の復旧作業を行っているが難航。パイプの付いた100トンの鉄のふたを海底に沈め噴出口を制御する方法もあるが、実現には数週間かかる見通しだ。 ◇噴出阻止に3カ月程度…米内務長官 サラザール内務長官は2日、米テレビで、原油噴出を止めるには3カ月程度かかる可能性があるとの見通しを示し、「極めて深刻なシナリオ」と語った。 ◆事故の概要 先月20日、ルイジアナ州の沖合約80キロで海底油田から原油を掘削する海上施設が爆発。11人が行方不明となり、施設は2日後に沈没した。施設は水深約1.5キロの海底までパイプでつながれていたが、パイプは破損し海底から原油が噴き出したままの状態。ルイジアナ、フロリダなどメキシコ湾の沿岸州は非常事態宣言を出している。
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