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ナショナルジオグラフィック ニュース 暗黒流動、“宇宙の外側”の証拠を発見 http://www.asyura2.com/09/nature4/msg/408.html
宇宙には「暗黒流動(ダークフロー)」という壮大な運動原理が働いているとする理論がある。宇宙の外側に存在する観測不能な未知の構造が引き起こしているという考えだが、その裏付けとなる新研究が発表された。 まず2008年に、科学者たちが「数百個の銀河団が時速360万キロで同方向に流れている」という発見を報告した。 この不可解な動き、暗黒流動は、宇宙の質量分布に関する現在のモデルでは説明がつかない。そこで研究チームは「銀河団は既知の宇宙の外側にある物質の重力によって、強く引き寄せられている」という理論を唱えたのだが、これには疑問の声も上がっていた。 今回、同じチームが、この暗黒流動の影響が以前の報告よりもさらに遠く、地球から25億光年以上離れた宇宙まで及んでいることを発見した。 研究責任者でアメリカ、メリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターの天体物理学者アレキサンダー・カシリンスキー氏は、「さらに2年分の有効データの精査を続け、前回の2倍の数の銀河団を追跡調査した。その結果、暗黒流動の存在と、それが同一方向の流れであることを確認した。確固たる一貫性のある流れのようだ」と話す。 今回の発見は、「ビッグバン直後に、物質の塊が既知の宇宙の外に押し出された」という理論の新たな裏付けとなる。これが正しいとすれば、私たちの住む宇宙は“多世界宇宙(multiverse)”というさらに大きな宇宙の一部ということになる。 カシリンスキー氏のチームが暗黒流動の存在に初めて気づいたのは、銀河団内部のガスと宇宙マイクロ波背景放射(CMB)との相互作用を研究しているときだった。CMBはビッグバンのわずか38万年後に放射されたマイクロ波とみられており、現在も宇宙を飛び交っている。 ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機(WMAP)のデータから、CMBが銀河団内部のガスを通過するときの微小な温度変化を観測できるという。 この通過時に銀河団内部のガスによってCMBの光は散乱する。地球の大気によって光が散乱し星がきらめいて見えるのと似ている。だが、銀河団はCMBと相対的に移動しているため、散乱した光はドップラー効果でさらに歪められる。この歪みがWMAPデータで温度変化として現れるため、これを調べれば銀河団の移動方向と速度を解明できるというわけだ。 「個々の銀河団ごとに温度変化を識別するのが非常に難しいため、前回の研究では銀河団700個が限界だった」とカシリンスキー氏は言う。 今回は約1400個の銀河団の集団的な動きを基にしている。より多くの銀河団でも暗黒流動を確認できたことで、理論への自信をさらに深めたという。 また、分析方法を検証するために、特定の銀河団が放つX線の明るさと、WMAPデータの温度変化との比較も行った。 内部のガスが高温なより明るい銀河団ほど、CMBへ与える影響も大きくなると予想されたが、分析の結果その仮説も裏付けられた。 カシリンスキー氏は、暗黒流動は観測可能な宇宙の全領域、つまり約470億光年の彼方にまで広がっていると推測している。これが正しければ、「既知の地平を越えたところに存在する物質に、銀河団が引き与せられている」ということになる。 「暗黒流動が25億光年先に達していて、そこで止まっているとすれば、理論的な説明は余計に難しい。さらに遠くまで広がっていると見るのが妥当だ」とカシリンスキー氏は語っている。 今回の発見は「The Astrophysical Journal Letters」誌に3月20日付で掲載された。 Photograph courtesy Misti Mountain Observatory
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