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http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec091216.html
英大学の電子メール流出に端を発した地球温暖化研究に関するスキャンダルの波紋が広がっている。温暖化対策の国際的な議論は科学の成果を前提にしている。「クライメート(気候)ゲート事件」という名がついた今回のできごとは、その信頼性を揺るがしている。 事件の経緯はメディアで一通り報道された通り。温暖化研究で有名で、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にも貢献してきた英イーストアングリア大学のコンピューターから、研究者のメールや文書が何者かに大量に盗まれ、ネット上に流出した。 同大学の温暖化研究の責任者であるフィル・ジョーンズ教授が米研究者にあてたメールの中に「気温低下を隠すトリック(策略)を終えた」とあり、気温データを操作して意図的に温暖化を強調したと受け取られた。 ほかにも、温暖化の人為原因説に懐疑的な研究者の成果を専門誌などで取り上げないよう仲間で相談しているともとれるやりとりや、そうした研究者を「ばか者ども」などと口汚くののしる内容があった。 これを見た懐疑派の研究者や欧米のメディアが反応。コペンハーゲンでの第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)でも話題になり、IPCCのパチャウリ議長が各国代表を前にして疑惑に反論した。 事件の影響がどこまで広がるかは予断を許さない。流出した資料には、各地の気温データを集計するコンピュータープログラムの情報も含まれており、これを分析することで不適切なデータ処理がなかったかを追及する動きもある。 今回の事件の重要な意味は、温暖化の科学の「舞台裏」を満天下にさらけ出したことだろう。舞台裏とは、温暖化に関する科学は決して一枚岩でなく、対立する意見が厳然とあること。懐疑派と呼ばれるそうした科学者は、ジョーンズ教授らが「排除」の相談をしなければならないほどの存在であること。また、IPCCの見解は偏っていると懐疑派の科学者が認識していることだ。 主流派の科学者がかねて強調してきたのが、温暖化に関する「科学者のコンセンサス」だった。「近年の気温上昇の原因の大半は人間活動による」「気温上昇を2度以内に抑えるには先進国は2020年までに25〜40%の温暖化ガスを削減しなければならない」といった見解がそれだ。IPCCには数千人の科学者が参加しており、温暖化の科学はすでに決着したと繰り返し語られてきた。 だが事情はそれほど単純ではない。今回の流出メールにも出てくる話だが、ここ10年近く地球の平均気温の上昇が止まっていることについて、米国の著名な研究者が「説明ができない」とした発言がある。 ジョーンズ教授のメールの相手として登場する米ペンシルベニア州立大学のマイケル・マン教授による有名な「ホッケースティック曲線」も論議を呼んでいる。なだらかに下降してきた北半球の平均気温が20世紀に入ると急に上昇するというグラフで、IPCC報告書にも取り上げられた。 この気温グラフのもとは、樹木の年輪や湖底堆積(たいせき)物などから得た代替指標データだが、最近一部データの取り違えが指摘された。マン教授が修正したグラフでは、西暦1100年ころの中世温暖期やそれ以前の高温期が読み取れる。大気中の二酸化炭素が少なかった時代に近年に匹敵するような温暖期があったことは、どう説明できるのだろうか。 こうした疑問はいろいろあるのに、IPCCの権威とプロパガンダでもって、コンセンサスが演出されてきたと懐疑派の科学者は考える。流出メールに現れたジョーンズ教授らのやりとりは、そのイメージと重なる。 コンセンサスの演出という意味では、メディアの責任も免れない。多くのメディアがIPCCの見解を無批判に紹介してきた。IPCCがどんな目的を持った組織で、いかなる手続きで結論を導いたかはあまり検証されることがなかった。 温暖化交渉は政治交渉の場であるが、よってたつ温暖化の科学も政治と無縁ではない。今回の事件は、そんな事情をのぞかせた。 --------------- この記事で、マイケル・マンらのチームがこれまでよりも600年さかのぼった過去1600年間の地球の平均気温のデータが示されている。記事の中で「大気中の二酸化炭素が少なかった時代に近年に匹敵するような温暖期があったことは、どう説明できるのだろうか。」とあるが、「過去1600年間のどの100年間と比べても過去100年間の気温の上昇が急激で高温となったことは、どう説明できるのだろうか」という問いかけも成立することになる。 |